STEP8
資金調達マニュアル
資本政策表を作成する
著者
砂川 大
株式会社スマートラウンド
CEO
監修
鈴木 吾朗
LYNX Inc.
代表取締役
資本政策とは、適正な株主構成を保ちつつ、資金調達や株主利益の実現を目指す一連の施策の計画を指します。一部の書籍には、資本政策の目的があたかも「株式上場を実現するため」のように書かれていますが、それだけが目的ではありません。資本政策には以下のようにいろいろな目的があり、一番重要なのはそれらの間で「バランスを取ること」です。
会社に必要な資金の調達
創業経営陣による議決権の維持
各株主の適切なキャピタルゲインの実現
役員・従業員へのインセンティブの付与
M&A実現性のコントロール
株式上場基準の充足
上場後の株価対策
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資本政策では、以下のような施策を実施します。
資金調達 | スタートアップでは一般的に、コンバーティブル・エクイティ(J-KISS型新株予約権など)の発行、または第三者割当増資により資金調達を行います。第三者割当増資には普通株式を使う場合と、優先株式を使う場合があります。 |
|---|---|
新株予約権の運用 | 新株予約権とは、一定期間内において、あらかじめ定めた価額でその発行会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます。新株予約権は、特定の者に付与して持株比率を上げる方法として用いることもありますが、一般的には役員や従業員に対するインセンティブとなるストックオプションとして付与します。 |
株式の調整 | 株式の異動とは株主が第三者に保有する株式を譲渡することをいいます。スタートアップでは一般的に株式の譲渡制限がかかっているので、会社の承認なく譲渡することはできません。株式の分割や併合は上場前に株価を調整するために、持株比率と純資産額ともに変動させないまま、発行済株式総数を増減するための施策です。 |
エグジット(出口) | 株式上場は資金調達と株式譲渡の組合せ、M&Aは株式譲渡と言い換えることもできますが、どちらも既存株主が保有する株式の流動化(株式を現金化できる)イベントとして特別に計画します。このタイミングで保有株式を全て現金化した場合、どれくらいのキャピタルゲインが得られるかをシミュレーションします。 |
このように各イベントを計画する上では、いつ(When)誰に(Who)何を(What)いくらで(How much)、の4点をその影響を鑑みて熟慮する必要があります。
資本政策は後戻りできないとよく言われます。これは特に、募集株式を引き受けてもらって増資すると、相手の合意なく株式を取り返す事はできないためです。株式の価値が上がっている時は、当然相手は引受時と同じ株価で売ってはくれないでしょうし、株式の価値が下がっているようなケースでは、逆に同額で買い戻す動機があまりないでしょう。
そもそもスタートアップの自己株式の取得は、会社法上、株主総会特別決議や他の株主の売却請求権等の手続規制と、買取金額は分配可能額の範囲内に限られるという財源規制があるため、事実上不可能なのです。特別なやり方で軌道修正することもできなくはありませんが、多くの資金や労力がかかるため、最初からミスを犯さないように綿密に資本政策を作成しておくことが非常に重要となります。
資本政策は資金調達と株主構成のバランスをとるための計画であることは、すでに述べました。では株主構成を考えることはなぜそれほど重要なのでしょうか。ひとつには経済的な理由があります。例えば創業経営者(やその協力者グループ)の持分比率が著しく希釈化してしまったら、エグジット・イベントが起こった場合でも、それまでの努力に見合うキャピタルゲインが得られなくなってしまう、といったことが起こるからです。
もうひとつは、持分比率が希釈化すると経営者の会社のコントロール権が失われ、柔軟な会社経営に支障をきたす恐れがあるためです。経営判断にスピードの求められるスタートアップで、経営者の会社コントロール権が失われることは望ましいことではありません。株主総会の決議要件から、創業経営者が保持すべき持分比率で重要となってくるのは以下の通りです。
特別決議事項66.67%以上(正確には2/3以上) | ・定款の変更 |
|---|---|
普通決議事項50.01%以上(正確には1/2超) | ・取締役・監査役などの選任 |
33.34%以上(正確には1/3以上) | ・特別決議の拒否 |
上記のとおり、資本政策は一旦実施すると後戻りができない上に、次のイベントに多大な影響を与えます。したがって各利害関係者の利益が確定するエグジット(出口)・イベントまでの全行程を、予めいくつかのケースに分けてシミュレーションしておく必要があります。
まずエグジット・イベントまでに何回、いくら資金調達をするかを想像してみましょう。例えば、3回資金調達をしたあと、創業者が33.4%の株式を保持したまま時価総額200億円で株式上場を目指すとすれば以下のようなケースが考えられます。
シード | シリーズA | シリーズB | 株式上場 | |
|---|---|---|---|---|
プレ時価総額 | 3 | 12 | 45 | 130 |
ポスト時価総額 | 3.5 | 15 | 60 | 200 |
調達額 | 0.5 | 3 | 15 | 70 |
創業者持分比率 | 85.7% | 68.6% | 51.4% | 33.4% |
(単位:億円)
一連のシミュレーションができたら、投資家が実際に想定したタイミングとバリュエーションで投資をしてくれそうか、現実性チェックをしておくと交渉の際に役立ちます。VCメソッドを使ったリターン分析を行ってみましょう。
さらに経営者自身のために、こうしたシミュレーションを、事業計画上のベストケース、中間ケース、ワーストケースにあわせて3パターン作っておくといいでしょう。
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