STEP20

契約を締結する

資金調達マニュアル

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契約を締結する

著者

砂川 大

株式会社スマートラウンド

CEO

監修

永井 亮

弁護士

契約条件で基本合意しDDが完了したらいよいよ契約書の締結です。ここでは、契約書の内容よりも契約書の締結の実務について解説したいと思います。

投資契約書のテンプレート

個別に契約を作るとコストが高い

実務上、投資契約書は投資家のテンプレートを使うことになります(J-KISSの場合は、通常、公表されているテンプレートをそのまま使います)。複数の投資家から同時に資金調達をする場合、それぞれの投資家が、自社のテンプレートで投資契約書を締結しようとすると、膨大なページの法務チェック(弁護士によるリーガルレビュー)が必要となり、スタートアップの時間も資金も浪費してしまうことになります。

仮に、投資契約書1通の法務チェックに20万円かかるとすると全部をチェックするのに100万円のコストがかかることになります。これから億単位の資金調達をするので、大した事ないと思うかもしれません。でも思い出してください。資金は急成長のために使うものです。経営者として無駄な事務コストは極力削減しなければなりません。

さらに各社と個別に条件を交渉しだすと今度は収拾がつかなくなります。最悪の場合、最恵国待遇条項があったりすると、1社と合意した内容を他の投資家にも適用しなくてならなくなったり、契約が複雑に入り込んでしまう可能性もあります。

リードインベスターに取りまとめを依頼しよう

こうした状況を避けるため、リードインベスターを窓口にして、投資契約書を統一してもらえるよう、予め全投資家にお願いしましょう。すなわちリードインベスターに投資家間の契約条件のすり合わせを行ってもらい、スタートアップはリードインベスターとだけ交渉するというやり方です。投資家同士で話すと、過剰要求にならないように抑制がきくという副作用もあります。

株主間契約書がある場合には、いずれにしても投資家間での条件のすり合わせが必要になるので、リードインベスターも協力してくれるはずです。ちなみに、投資家には、よく一緒に投資をしている他の投資家がいます。そういう投資家同士だとこれまでの経験から、お互いの契約書の内容を理解しているため承諾してくれる可能性が高くなります。

テンプレートを使用する際の注意点

なお、投資家が用意するテンプレートを使うことのリスクのひとつは「反映漏れ」です。テンプレートはあくまでも雛形なので、交渉して合意した内容がしっかり反映されていないことがあります。タームシートで合意したからといって油断せず、一条一条内容を確認することが肝要です。合意内容を伝えていなければ、たとえ弁護士であっても合意内容との整合性をチェックをすることはできません。

契約締結の実務について

ここでは、投資契約書締結の実務について解説します。なお、以下は執筆時点のルールです。法令等は日々改正されているため、実務を行う際には必ず最新の情報を確認してください。

従来、登記のために投資家全員から物理的な押印を得る必要があった投資契約書等は、2020年6月と2021年2月に施行された改正商業登記規則により、電子契約サービスによる締結も可能となりました。ただし、全ての電子契約サービスが利用可能というわけではありません。登記申請に使用可能な電子契約サービスは、法務省の「商業・法人登記のオンライン申請について」というサイトで公開されているため、利用予定のサービスが該当しているか確認しましょう。

この法改正により、資金調達にかかる契約締結プロセスは圧倒的に効率化されました。とはいえ、電子契約サービスにも種類があります。電子サインの順番を予め指定する必要があるサービスと、契約当事者が任意のタイミングで電子サインできるサービスがあるので、注意が必要です。特に当事者が多い契約の場合、後者のサービスを利用することが推奨されます。

一方、事業会社など、いまだに電子契約サービスの利用を認めていない会社も存在します。そのため、そうした投資家から出資を受ける場合は、引き続き物理的な押印による契約締結が必要となります。複数の当事者がいる契約の場合、1社でも電子契約に対応できないと、物理的な契約書の対応が必要となるため、予め各投資家が電子契約サービスによる締結が可能か確認しておきましょう。

以下では、物理的書面への押印プロセスにおける注意点を解説します。

契約書の持ち回り

押印プロセスは、投資家が多くない場合はあまり問題になることありません。しかし、投資家が多く、しかも全員が当事者となる株主間契約書を締結する場合(および全員が投資契約書の当事者になる場合も)、人数分の契約書本紙を用意して「持ち回り」し、各投資家に押印してもらうこともありえます。例えば、創業株主が1人の会社で投資家が10人いたら、12部(投資家+会社+創業株主分)全部をもっていき、10社にそれぞれ12冊の契約書に押印してもらうことになります。

郵送では最低でも1日かかってしまう(しかも送付し忘れたら全プロセスが止まってしまう)ため現実的ではなく、スタートアップの担当者が投資家のアポイントを取り手で持って回ることになります。

ここに事業会社が入るとさらに大変です。事業会社では、投資の決裁者が役員以上であることがほとんどです。スピード感のある会社であればいいですが、預かった書類への押印に1週間かかるなんてことは普通に起こります。また、投資家が海外にいる場合は、持ち回ることすら現実的ではありません。

回避策と注意点

実務上、こうした問題を回避するため、押印するページを投資家ごとに分け、それぞれのページだけを投資家に必要部数送付し(あるいは印刷してもらい)、押印の上、返送してもらってから製本するという方法が取られることがあります。やむを得ないといえばそれまでですが、投資家としては、その押印したページがどのように使われるのかわからない状態になるために、直接会社に押印したページを渡してもらうことは非常に危険な方法であることを、十分に認識する必要があります。実務上は、契約締結日までの間、押印したページを弁護士に一旦エスクローするようなケースもあります。

また非常に瑣末な話ですが、押印の順番を気にする投資家がいる場合もあります。投資契約を取りまとめたリードインベスターの押印を一番先に取り付けるようにしましょう。

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