STEP5

投資契約の基本を理解する

資金調達マニュアル

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投資契約の基本を理解する

著者

砂川 大

株式会社スマートラウンド

CEO

監修

倉林 陽

DNX Ventures

Managing Director

なぜ投資契約が必要なのか

本来、スタートアップが新たに株式を発行して資金調達を行う場合、総数引受契約書を投資家と締結して登記すれば、他に契約書がなくても会社法的には有効となります。

それにも関わらずあえて投資契約書や株主間契約書などを締結するのは、投資家にとってリスクの大きいスタートアップ投資を実行する上で、会社法で守られる株主の最低限の権利だけでは不十分だからです。投資家は以下のような権利や効果を得るために投資契約書を締結します(詳細は後述します)。

  • 株式流動化機会の確保

  • キャピタルゲインの最大化

  • ダウンサイドリスクの軽減

  • 創業株主との利害調整

  • 他の株主との利害調整

  • 投資審査コストの削減

では逆に、スタートアップはなぜこれら契約の締結を承諾すべきなのでしょうか。それは投資家が納得してくれなければ資金調達が思うようにできず、事業を急成長させることができなくなるからです。つまり、利害調整のようにスタートアップ側にもメリットがある側面はあるものの、投資契約書や株主間契約書などは主に投資家の要請に基づいて締結されるのです。そのため契約内容はスタートアップと投資家の交渉力次第で変化します。

投資契約書の構成

投資契約書は、ひとつの契約書である場合も、複数の契約書で構成される場合もあります。

最大で4つの契約書に分けて締結することがあり、この場合、それぞれの内容と契約当事者は以下のようになります。

総数引受契約書

投資契約書

株主間契約書

財産分配契約書

目的

登記のため

投資実行条件を決めるため(点)

投資実行後の発行会社(スタートアップ)と各株主の権利義務を決めるため(線)

M&A時の売却益の分配方法を決めるため(点)

契約当事者

発行会社、そのラウンドの全投資家

発行会社、創業株主、投資家

発行会社、創業株主、主要株主(VCなど)

発行会社、創業株主、全株主

主な内容

1. 募集株式の内容と引受

1. 発行内容
2. 払込条件

1. 会社経営に関する事項
2. 情報開示に関する事項
3. 投資家のExitに関する事項

1. 同時売却請求権に関する事項
2. みなし清算に関する事項

複数の契約書に分けるのは、目的が違うためと当事者が違うためです。したがって、例えば、投資家が一人しかいない場合は契約書を分ける必要はあまりありません。また創業初期のラウンドなどで、事務コストが大きいという理由で、投資契約書に総数引受契約書、株主間契約書、財産分配契約書の内容を全て包含してしまうケースもあります。

総数引受契約書の分離

総数引受契約と投資契約書をまとめてしまうと、それを使って登記をせざるをえなくなり、正式な手続きを踏んだ第三者が閲覧できてしまうことになります。契約内容の詳細を秘密にしておきたい場合には、登記に必要な総数引受契約書には必要最小限の内容を記載するに留め、別途、投資契約書を締結すべきでしょう。

また、昨今では電子契約による投資契約がなされるケースも出てきており、そうした場合は印影が登記に必要となる総数引受契約書だけを物理的に投資家に回付し、それ以外の契約書を電子契約でリモートで締結することにより、書類のやりとりを大幅に削減できます(もちろん株主や投資家が全て電子契約での投資に応じてくれればの話ですが)。

こうすることで実務上、例えば投資家が急な海外出張などで物理的に押印できない事情がある場合、先に投資契約書をリモートで締結し払込みをしてもらい、帰国後に総数引受契約書に押印してもらって登記することができるようになります(登記は払込期日から2週間以内に行えばよいため)。

株主間契約書の分離

狭義の投資契約書は、基本的に発行会社と創業株主が、各投資家と個別に(もしくはそのラウンドの全投資家と同一契約で)その「資金調達ラウンドの条件」を決めるための契約書です。他方、株主間契約書は、発行会社と全株主が「投資後の経営方法」や「M&A時の対応」について取り決めるための契約書です。

「資金調達の基本」 で記載したとおり、スタートアップは複数回資金調達をする可能性が高いことを考えると、最初から、そのラウンドに特化した投資契約書と、次回以降のラウンドの株主も当事者となることが求められる株主間契約書は、別契約としておいた方が後々の運用がしやすくなります。

財産分配契約書の分離

財産分配契約書は、株主間契約書の内容である「投資後の経営方法」と「M&A時の対応」のうち後者だけを切り出した契約書を指します。これを別契約にする理由は、投資後の経営方法は主要株主間で取り決めれば足りるのに対し、M&A時の対応の実効性を担保するためには全株主の合意が必要となるためです。

例えば経営に関知しない個人投資家や、経営方法を知って欲しくない従業員が株主に含まれる場合、これらを株主間契約書の当事者からは除外し、財産分配契約書の当事者にはなってもらうという対応が可能になります。

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