STEP19

会社法上の手続きを行う

資金調達マニュアル

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会社法上の手続きを行う

著者

砂川 大

株式会社スマートラウンド

CEO

監修

田中 あゆ美

司法書士行政書士あゆみ総合法務事務所

代表

増資の方法

会社法上、増資とは企業が資本金を増加させることをいいます。ただし、会社が資本金を増加させる場合、一般的には株式を新しく発行し投資家から資金を集めることから、ここでは新株発行による増資を便宜的に「増資」といいます。なお、新株発行による増資を会社法では「募集株式の発行」といいます。

増資を行うためには以下の3つの方法があり、上から順に、新株を割り当てられる相手の範囲が広くなります。未上場のスタートアップが公募増資するのは事実上不可能なので、選択肢は株主割当増資か第三者割当増資になります。

株主割当増資

株主割当増資とは、株式会社がその既存株主に対して、持株比率と同じ割合で新株を割り当てて増資する方法です。有償であるため必ず引き受けなければならないといったことはなく、引き受けるかどうかは株主自身が判断することができます。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、株式会社が特定の第三者に対して、新株を割り当てて増資する方法です。また既存の株主に新株を割り当てる場合でも、その割当比率が現在の持株比率と異なる場合は、第三者割当増資となります。

公募増資

公募増資とは、既存株主や特定の第三者に限らず、一般の全ての投資家に対して新たに発行する株式を取得してもらい増資する方法です。ちなみに会社が上場することを意味する「IPO」とは、Initial Public Offeringつまり「初めての公募増資」という意味です。

株主割当増資では、新たな投資家を迎え入れることはできず、また既存株主間の割当比率が固定され使い勝手が悪いため、スタートアップによる増資は第三者割当増資によるものが自然と多くなります。

第三者割当増資の手続きの種類

スタートアップが、第三者割当増資を行うための会社法上の手続きには以下の2つの方法があります。会社法で定められている原則は申込割当方式ですが、手続きが煩雑であり、かつ株主総会の開催から払込期日まで最低でも2日は必要となることから、実務上、スタートアップの増資には総数引受方式を使います。

申込割当方式

申込割当方式は、募集株式の数や払込金額等の「募集事項」を予め株主総会で決定し、株式引受けの募集を行い、申込みをした者の中から株式の割当先と割当株式数を決定する方法です。

総数引受方式

総数引受契約方式は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受を行う「総数引受契約」を、会社と引受人が締結することで、申込みや割当の手続きを省略する方法です。引受人は複数でも問題ないですが、総数引受契約書に、引受者全員の名前、住所、引受株式数、およびこれらが同一の機会に一体的に引き受けることが明記されている必要があります。これさえ明記されていれば、各投資家と個別に総数引受契約書を締結することもできます(同じ契約書の当事者になる必要はありません)

J-KISSは新株予約権の一種で、J-KISSでの資金調達は厳密には増資(資本金の増加)ではありません。新株予約権の割当も、株式と同様、申込割当方式と総数引受方式に準じた手続きがあります。

総数引受方式の具体的手続き

投資家と諸条件で合意できたら投資契約書の準備と並行して、以下に沿って会社法上の手続きを開始しましょう。スタートアップによる増資の一般的な条件、すなわち

  • 非公開会社(発行する全ての株式について定款で譲渡制限を定めている会社)

  • 取締役会非設置会社(定款で取締役会を設置していない会社)

  • 書面投票・電子投票を採用しない場合

  • 第三者割当増資

  • 総数引受契約

を想定した場合、具体的な手続きは以下のとおりとなります。この場合、株主総会招集通知発送日=株主総会開催日=総数引受契約書締結日=払込日とすることで、最短で1日で実施することができます。

手続き

実施方法

1: 株主総会招集の決定

取締役が招集を決定します。実務的には取締役決定書を作成しましょう。

2: 株主総会の招集

招集通知は書面という制限がなく、口頭でも可能ですが、実務的には記録を残すためツールを使うかメールを送るかにしましょう。原則として株主総会開催日の1週間前までに招集通知を発しなければなりませんが、定款で1週間より短い期間を定めることができます。

また、株主の全員の同意があるときは招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができます。

なお、招集通知の内容は以下の通りです。
・開催の日時及び場所
・開催の目的である事項
・議案の概要
・代理人による議決権の行使に関する事項を定めた時は、その事項(定款に記載がある場合を除く)

3: 募集要項と総数引受契約の承認

株主総会の特別決議として「募集要項の決定」と「総数引受契約書の承認」を決議します。

第一議題として、募集事項(以下)を決議します。
・募集株式の数
・募集株式の払込金額
・募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその期間・増加する資本金及び資本準備金に関する事項

第二議題として、「実際に締結する総数引受契約書の内容がわかる資料(契約書の素案など)」を添付しその総数引受契約の締結を承認する旨を決議します。

また、投資契約書に創業株主と会社が連帯債務を負う規定が含まれる場合には、上記の2議題に加え、利益相反取引として投資契約書の承認の議案が必要となります(増資の登記に必要なわけではありません)。

なお、株主総会の目的である事項について株主全員が同意をしたときは株主総会の決議があったものとみなすことができます。

4: 総数引受契約の締結

契約当事者間が総数引受契約書に、日付の記入(空白の場合)および署名または記名押印し、これを締結します。

具体的な契約書の内容については「投資契約書の概要」をご参照ください。

5: 出資の履行

登記申請の添付書類として、通帳の写しが必要になるので、
・払込期日を定めたときはその日
・払込期間を定めたときはその期間の末日までの入金が確実に記録されるように、一般的には15時までに出資を履行しなければなりません。

6: 効力の発生

払込期日を定めた場合は、払込期日までに払込みをした引受人は、払込期日に株主となります。

払込期間を定めた場合は、払込期間内に払込みをした引受人は、払込みをした日に株主となります。

株主名簿の更新をし、希望する引受人に株主名簿の写しを交付しましょう。 この時、株主名簿に個人株主が含まれる場合には株主名簿および個人情報の他の株主への開示につき、予め承諾を取っておく必要があります。

7: 増資の登記

新株を発行した場合は、払込期日または払込期間末日から2週間以内に、法務局に登記の申請をする必要があります。

登記完了後に希望する引受人に登記事項証明書の原本または写しを交付しましょう。
登記申請の添付書類として
・株主総会議事録
・株主リスト(株主名簿ではないので注意)
・資本金計上証明書
・払込証明書
・総数引受契約書
などが必要となります。

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