2025-09-08

      新たな投資プレイヤーとセカンダリーマーケット 〜グロースエクイティやクロスオーバー投資家などの動向〜

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      はじめに

      スマートラウンド証券(※)代表の加納です。

      本連載は、スタートアップエコシステムの関係者(起業家やCFO、投資家など)に、未上場株式のセカンダリーマーケットについて基本的な知識を広く伝えることを目的としています。

      第6弾では事業会社や金融機関から見たセカンダリーマーケットについて解説しました。

      今回は、VCやエンジェル投資家、事業会社などこれまでのスタートアップ投資の担い手以外のプレイヤーが、ミドルレイター期のスタートアップ投資に参入している点にフォーカスします。

      日本では長らく、グロースステージにおけるリスクマネーの供給不足が課題として指摘されてきました。しかし、2025年に入り、グロースエクイティや投資信託、ターゲットファンドなどの新たな投資プレイヤーが続々と参入しているのも事実です。本稿では、こうした投資プレイヤーとセカンダリーマーケットの関係を探ります。

      なお、本稿で取り上げるプレイヤーは必ずしもセカンダリー取引だけを行っているわけではなく、プライマリー取引やミックスディール(第4弾で解説)、バイアウトなどの投資手法を併用するケースのほうが多いです。

      しかし、これまで解説したセカンダリー取引のニーズの高まりが新たな投資プレイヤーの参入を促進しているのは明らかであるため、本連載のなかでご紹介することとします。

      ※設立当初の商号は株式会社スマートラウンド戦略事業準備会社とし、第一種金融商品取引業(非上場有価証券特例仲介等業務)の登録完了後に商号変更を行う予定。


      ■連載一覧

      1. セカンダリーマーケット概論(前編中編後編

      2. 起業家から見たセカンダリーマーケット

      3. VCファンドから見たセカンダリーマーケット

      4. 事業会社や金融機関から見たセカンダリーマーケット

      5. PEファンドやグロースエクイティなどから見たセカンダリーマーケット

      6. 専門家から見たセカンダリーマーケット

      7. グローバルのセカンダリーマーケット動向(前編後編


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      グロースエクイティ

      Minerva Growth Partnersの記事「グロース・エクイティとはなにか」では、グロースエクイティとは大きく2種類の投資スタイルを内包したプレイヤーだと紹介されています。

      一つはレイターステージの未上場スタートアップに対するマイノリティー投資(レイターステージVC)、もう一つは成長性の高い未上場・上場企業へのマジョリティー投資(バイアウト)です。

      ※引用元:Minerva Growth Partners「グロース・エクイティとはなにか」

      このなかで特に注目すべきは、PEファンドや上場株ファンド、VCファンドなどによるレイターステージVCへの参入です。

      PEファンドによる参入の例として、2025年4月にスタートアップ投資への参入を発表したインテグラルや、2024年にストックマークへの投資を発表したポラリス・キャピタルなどが挙げられます。

      なお、詳細は割愛しますが、PE業界の関係者によると他にも複数のPEファンドがミドルレイター期のスタートアップに対する投資を検討しているとのことです。上場企業のバイアウトに注目が集まりがちなPEファンドですが、バイアウト案件の獲得競争が激化していること、投資後のハンズオン支援の負荷が高いことから、一部のPEファンドはレイター期スタートアップへのマイノリティー投資のほうが投資対効果の観点で望ましいと考えていることが参入の背景にありそうです。

      また、上場株ファンドによる参入の例としては、香港を拠点とし、タイミーやLayerX、ニーリーなどへの出資実績を有するKeyrock Capital Managementが挙げられます。VCファンドによる参入の例として、グロースキャピタル設立を発表したインキュベイトファンドなどが挙げられます。このほか、大手メガバンクも次々とグロースエクイティファンドの設立を発表しているほか、最近だとカケハシやGOなどに出資した米ゴールドマン・サックスの動きは注目に値します。

      こうしたグロースエクイティは純投資目的であり、プライマリー取引かセカンダリー取引かを問わずにファイナンシャルリターンの観点で投資判断を行うのが特徴です。ただし、一部のグロースエクイティはセカンダリー取引単体だと出資が難しく、新株発行(ミックスディール含む)が伴わないと投資が困難なこともある点には留意が必要です。

      投資信託

      2024年2月、投資信託協会の規則改正により、原則として純資産の総額の15%以下の範囲で、公募投資信託が未上場株式を組み入れることが可能となりました。これは政府によるスタートアップの資金調達環境整備の一環として実現したものであり、一般投資家が投資信託を通じてスタートアップに投資できるスキームとして注目されています。

      現時点ではレオス・キャピタルワークス、アセットマネジメントONE、野村アセットマネジメントなどが、未上場株式を組み入れる投資信託の設定を発表しています。私募投資信託によるトライアル運用なども含めると、多くのアセットマネジメント会社が水面下で参入を検討している状況です。

      ※引用元:レオス・キャピタルワークス株式会社「未上場&上場の境界を越える新しい投資信託 「ひふみクロスオーバーpro」新規設定のお知らせ」2024年8月9日

      こうした投資信託は純投資目的であり、多くはプライマリー取引かセカンダリー取引かを問わず投資検討を行います。また、ファンド満期のないオープンエンド型であり、かつ上場後も継続して保有するクロスオーバー投資戦略を取ることが多いです。

      上場後も安定株主となり株価を下支えする効果が見込まれることから、上場後の持続的な成長を目指す起業家やCFOにとっては重要な選択肢となります。

      ターゲットファンド

      ターゲットファンドとは、SPV(特別目的事業体)などのスキームを用いて、特定のスタートアップ1社のみを投資対象とするファンドを組成し、投資家がファンドを介して間接的に投資する仕組みです。主に、①個人投資家を集約してアーリーフェーズのスタートアップに投資する形態、②機関投資家や事業会社から資金を集めてミドル・レイターフェーズのスタートアップに投資する形態、の2つに大別されます。

      米国ではAngelListなどのプラットフォームを通じて迅速にターゲットファンドを組成し、エンジェル投資家がファンドを介してアーリーフェーズのスタートアップに投資する仕組みが広く普及しています。

      日本ではまだ黎明期にありますが、2018年頃よりHijojo Partnersが海外のユニコーン企業に対するターゲットファンドを組成して国内投資家に販売してきたほか、最近ではイークラウドやZUUなどの新たなプレイヤーが参入しています。

      こうしたターゲットファンドは、投資家にアクセスが難しいスタートアップに投資する機会を提供しています。純投資目的であり、プライマリー取引・セカンダリー取引を問わず投資対象となることが多いです。日本の家計資産と急成長企業を結ぶ新たな投資手段として、投資信託と並んで注目される取り組みといえるでしょう。

      新たな投資プレイヤー参入の背景

      本稿では説明を割愛しますが、このほかにも金融機関のBS投資やファミリーオフィスなども、ミドルレイター期のスタートアップに対する投資主体として台頭しています。これらのプレイヤーはそれぞれ異なる投資方針や制約を持ちながらも、スタートアップエコシステムに新たな資金流入をもたらしています。

      これらの投資主体に共通しているのは、VCやエンジェル投資家など既存のスタートアップ投資のプレイヤーとは異なる目線で投資に取り組んでいるということです。

      例えば、これまで上場株を取り扱ってきた投資プレイヤーの中には、インデックス運用を上回るパフォーマンスを実現することが困難な状況において、有望なスタートアップにIPO前から投資することで、いわゆる「テンバガー(株価が10倍となる銘柄)」を狙っているケースもあります。

      また、VCファンドにとって満期に伴うエグジットマネジメントは大きな課題ですが、グロースエクイティなどの新たなプレイヤーからすると魅力的な投資機会として捉えられているのも事実です。あるプレイヤーからすると「ピンチ」に見えることが、他の投資主体からみると「チャンス」になる構図といえます。

      ミドルレイター期の創業者やCFOは、こうした動向も踏まえつつ、上場後の持続的な成長を支える新たな投資家とのリレーションの構築を継続的に行う必要があります。場合によっては、セカンダリー取引を通じて株主を入れ替えることも資本政策上重要な手段となるでしょう。

      次回は、「専門家から見たセカンダリーマーケット」と題し、法務、会計、税務などの専門家が押えておくべき論点について解説します。

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