2026-01-20

      2025年のエグジット環境総括と2026年の展望

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      はじめに

      スマートラウンド証券(※)代表の加納です。

      2025年、スマートラウンド証券は非上場株式セカンダリーマーケットに関する連載を続けてきました(連載トップ)。

      お陰さまで幅広い方々にご覧いただき、イベントなどの場を通じてディスカッションの機会をいただけたことを大変感謝しております。

      本記事では、2025年のIPOやM&Aを含めたエグジット環境を総括し、2026年の展望について解説します。

      ※設立当初の商号は株式会社スマートラウンド戦略事業準備会社とし、第一種金融商品取引業(非上場有価証券特例仲介等業務)の登録完了後に商号変更を行う予定。


      ■連載一覧

      1. セカンダリーマーケット概論(前編中編後編

      2. 起業家から見たセカンダリーマーケット

      3. VCファンドから見たセカンダリーマーケット

      4. 事業会社や金融機関から見たセカンダリーマーケット

      5. PEファンドやグロースエクイティなどから見たセカンダリーマーケット

      6. 専門家から見たセカンダリーマーケット

      7. グローバルのセカンダリーマーケット動向(前編後編

      8. 2025年のエグジット環境総括と2026年の展望


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      2025年の国内エグジット環境

      IPO

      2025年の東証の新規上場社数は合計105社、このうちグロース市場のIPO社数は41社となり、2024年の64社に対して36%減少しました。

      特に上場時の時価総額が100億円を下回る企業が20社となり前年比55%減少するなど、東証グロース市場改革の影響が如実に現れた1年だったと言えるでしょう。

      また、2024年のタイミーやアストロスケール、2023年のカバーのIPOのように、上場時の時価総額が1,000億を超えるスタートアップのIPOが発生しなかったことも注目に値します。

      急変する市場環境を踏まえ、上場を急がずに未上場のまま事業拡大を進めたスタートアップが増加していることが伺えます。

      <2025年 スタートアップのIPO(一部のみ)>

      スタートアップ

      上場月

      時価総額(初値ベース)

      アクセルスペース

      2025/8

      約481億円

      パワーエックス

      2025/12

      約410億円

      ダイナミックマッププラットフォーム

      2025/3

      約360億円

      デジタルグリッド

      2025/4

      約328億円

      インフキュリオン

      2025/10

      約318億円

      TENTIAL

      2025/2

      約183億円

      ミラティブ

      2025/12

      約127億円

      M&A

      M&Aオンラインの記事によると、2025年のM&Aの件数は前年比10.1%増の1,344件、取引総額は前年比93%増の約20兆3,870億円に達し、いずれも過去最高を更新したと報じられました。

      このうちスタートアップの被買収・子会社化・主要株式取得の件数は、1/20にSPEEDAが発表した速報レポート「選別と延長戦が進む──2025年スタートアップ資金調達動向」によると167件に達しています。

      また、UPSIDERのケースに代表されるように、M&Aの大型化も進行した1年だったと言えるでしょう。

      <2025年 スタートアップM&A(一部のみ)>

      スタートアップ

      公表月

      概要

      UPSIDER

      2025/7

      みずほ銀行による連結子会社化。発行済株式の約70%を約460億円で取得。スイングバイIPOを目指す方針。

      Thinkings

      2025/7

      ビジョナルによる完全子会社化。取得金額は約140億円。

      レナリスファーマ

      2025/10

      中外製薬による完全子会社化。取得金額は150億。今後のマイルストン進捗に応じたアーンアウトあり。

      マネーツリー

      2025/5

      三菱UFJ銀行等による連結子会社化。取得金額は未公表。MUFGのデジタルバンク構想の一環としてのM&A。

      キッズライン

      2025/12

      みんなのマーケットへのグループイン。スキームや取得金額等は未公表。

      顧問バンク(ACROVE)

      2025/11

      ACROVEのグループ会社である顧問バンクの全株式を約7.3億円でBoost Capitalに譲渡。

      ミチビク

      2025/11

      マネーフォワードによる完全子会社化。取得金額は未公表。

      iCARE

      2025/9

      オムロンによる完全子会社化。取得金額は未公表。

      Natee

      2025/8

      アカツキによる完全子会社化。取得金額は未公表。

      アラームボックス

      2025/7

      弥生による連結子会社化。取得金額は未公表。

      アーバンエックステクノロジーズ

      2025/7

      ゼンリンによる連結子会社化。取得金額は未公表。

      医用工学研究所

      2025/4

      KDDIによる連結子会社化。取得金額は未公表。

      エンペイ

      2025/1

      GMOペイメントゲートウェイの連結対象会社化。取得金額は未公表。

      セカンダリー

      IPOやM&Aと異なり統計値は存在しないものの、公表されている事例だけでも数多くのディールが発生し、転換点となった一年でした。

      まず新株発行と既存株の売却を同時に実行する「ミックスディール」の公表事例は前年比で大きく増加し、資本政策の手段として定着したといえます。

      また、2025年11月のSmartHRの事例のように、新株発行を含まない純粋なセカンダリー単独ディールでも好事例が生まれたことも注目すべきポイントです。

      <2025年 ミックスディール(公表事例のみ)>

      スタートアップ

      公表月

      概要

      10X

      2025/4

      第三者割当増資(一部株式譲渡を含む)等を実施。取引総額は約21億円。

      Nstock

      2025/5

      第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施し、SmartHRの連結子会社及び持分法適用会社から離脱。取引総額は約18億円。

      ライフイズテック

      2025/6

      シリーズEラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約25億円。

      カケハシ

      2025/6

      シリーズEラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡、ベンチャーデットおよび融資を実施。取引総額は約140億円。

      LegalOn Technologies

      2025/7

      シリーズEラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡、負債性優先株式発行を実施。取引総額は約71.4億円。

      TERASS

      2025/7

      シリーズCラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約31億円。

      クラフトバンク

      2025/10

      シリーズBラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約38億円。

      アスエネ

      2025/10

      シリーズC2ラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約29.8億円。

      モノグサ

      2025/10

      シリーズCラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約18.5億円。

      Timetree

      2025/11

      シリーズFラウンドにて第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約32億円。

      Fact Base

      2025/11

      米Insight Partnersに対する第三者割当増資および既存株式の譲渡を実施。取引総額は約44億円。

      <2025年 セカンダリー単独ディール(公表事例のみ)>

      スタートアップ

      公表月

      概要

      Matsuri Technologies

      2025/10

      アセットマネジメントOneの運用ファンドおよび三井住友トラスト・アセットマネジメントの運用ファンドに既存株式を譲渡。譲渡金額は不明。

      SmartHR

      2025/11

      CoralCapitalが保有する既存株式をGeneral Atlanticに譲渡。譲渡金額は約146億円。

      2026年の展望

      まず、東証グロース市場の改革の方向性に沿う形で、IPOは大型化し、IPOまでの期間がより長期化すると予想されます。

      こうした大型化・長期化するIPOの実現に向けては、グロース期の資金調達環境のより一層の改善、および後述のセカンダリー取引の活性化が不可欠です。

      M&Aもエグジット需要の増加に伴い、件数は増加することが見込まれます。他方、優先株式を使った調達額やその条件によっては、利害調整が難航するM&Aも増えることが予想されます。また、年末に報じられた金融所得課税(ミニマムタックス)見直しの影響も懸念されるところです。

      セカンダリーは2026年、量・質ともに大きな発展が見込まれます。売却ニーズの中心となるのは、約7~10年前に設立されたVCファンドの満期に伴う売却(参考記事)、およびオープンイノベーション戦略の見直しを進めている事業会社の売却です(参考記事)。

      しかし、より2026年のセカンダリーシーンで重要なのは、資本政策の最適化の重要な手段としてセカンダリーを活用する「攻めのセカンダリー」です。

      ベストなIPOとその後の成長を見据えて戦略的に株主を入れ替えるディール、およびレイター期の大規模な戦略投資を実現するためのディールといった類型が生まれてくるでしょう。また、一部のスタートアップでは創業者の保有株式や従業員のSOの現金化の事例も生まれてくると予想されます(参考記事)。

      このほか、オープンイノベーション促進税制のセカンダリー適用による事業会社が買い手の「段階的M&A」セカンダリーディールの大幅な増加参考記事)、これまでIPO後の売却がリターンの中心だったVCの上場前の一部売却(利確)を実現するセカンダリーディールの増加も注目されるところです。

      2026年もスマートラウンドおよびスマートラウンド証券は、スタートアップのエグジット環境を好転させるべく、挑戦を続けてまいります。

      【イベント情報】
      本記事で解説した2025年のエグジット環境の振り返りと、2026年以降に求められる新たな資本政策の可能性につき、1/27(火) TechGALAのセッション「KNOWLEDGE VENUE:資本政策のニューウェーブ―IPO100億円時代の突破口―」で加納が登壇します。

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