2025-12-02

      グローバルのセカンダリーマーケット動向(後編)〜主要プレイヤーと大手金融機関の参入、今後の展望〜

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      はじめに

      スマートラウンド証券(※1)代表の加納です。

      本連載は、スタートアップエコシステムの関係者(起業家やCFO、投資家など)に、未上場株式のセカンダリーマーケットについて基本的な知識を広く伝えることを目的としています。

      これまで本連載では、未上場株式セカンダリーマーケットの基本的な解説から、スタートアップやVC、事業会社など各プレイヤー別の論点、新たな投資プレイヤーの参入や法務・税務論点について解説してきました(連載トップはこちら)。

      前回はグローバルのエグジット環境や米国のユニコーン企業による主なセカンダリー取引事例を解説してきました。今回は、米国のセカンダリーマーケットを支えるプラットフォーマーやセカンダリーファンド、そして米国大手証券の参入動向について解説します。

      ※1:設立当初の商号は株式会社スマートラウンド戦略事業準備会社とし、第一種金融商品取引業(非上場有価証券特例仲介等業務)の登録完了後に商号変更を行う予定。


      ■連載一覧

      1. セカンダリーマーケット概論(前編中編後編

      2. 起業家から見たセカンダリーマーケット

      3. VCファンドから見たセカンダリーマーケット

      4. 事業会社や金融機関から見たセカンダリーマーケット

      5. PEファンドやグロースエクイティなどから見たセカンダリーマーケット

      6. 専門家から見たセカンダリーマーケット

      7. グローバルのセカンダリーマーケット動向(前編後編


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      プラットフォーマー(仲介者)

      プレイヤー

      設立

      取引実績

      主なサービス

      最近の動向

      Nasdaq Private Market

      2004年
      ※2015年にNasdaqが買収

      累計550億ドル

      ・SecondMarket
      ・Tape D

      ・2021年にNasdaqからスピンアウトして独立

      Forge Global

      2009年

      累計170億ドル

      ・Forge Markets
      ・Forge Price
      ・Forge Trust

      ・2025年11月にCharles Schwabが6.6億ドルで買収合意

      EquityZen

      2013年

      累計取引金額不明
      (約5万件の取引件数)

      ・EquityZen

      ・2025年10月にMorgan Stanleyが買収合意

      Nasdaq Private Market(NPM)

      NPMの前身であるSecondMarketは2004年に創設され、2009年に未上場株式のマーケットを開設。2010年には早くも4億ドルの取引総額を達成しています。2015年にNASDAQがSecondMarketを買収し、NPMへと改称。その後、2021年のCiti、Goldman Sachs、Morgan Stanley等の大手金融機関から戦略的投資を受け、Nasdaqからスピンアウトして独立企業となりました。2024年のシリーズBではUBSやにBNPパリバ、ウェルズファーゴ等が出資しています。

      主力サービスのSecondMarketは、総取引総額550億ドル以上を誇る未上場株式の取引プラットフォームです。以前の連載で解説したテンダーオファーのほか、オークション形式の取引サービスを提供しています。取引プロセスを効率化する各種機能と、取引をサポートする専門家サービスを統合した包括的なソリューションとなっています。

      特筆すべきは、2024年10月にリリースされたTape Dという未上場株式のデータ・インテリジェンスサービスです。これは、2022年に買収したVC Expertsの未上場株式データベースと、SecondMarketに蓄積したセカンダリー取引データを統合し、未上場株式の推定価格(Tape D DailyPrice)を提供します。このほか、キャップテーブルデータに基づくウォーターフォール分析やポートフォリオのパフォーマンス分析など、多様な分析ソリューションを提供しています。

      Forge Global

      2009年にSharePostとして設立され、2020年にForge Globalと改称し2021年にSPACでNasdaqに上場しました。これまでに約170億ドルの取引実績がある大手セカンダリープラットフォームの一角です。

      セカンダリー取引プラットフォームForge Marketplaceのほか、機関投資家などのプロ投資家向けに高度な分析機能を提供するForge Pro、NPMのTape Dと似たデータソリューションであるForge Dataなど幅広いサービスラインナップを揃えています。

      このほか、Forge Dataで算出する未上場企業の推定価格をインデックス化した「Forge Accuidity Private Market Index」も存在します。IPO銘柄のETFやQQQなどの著名インデックスとのパフォーマンス比較も可能です。このほか、子会社ではForge Trustという未上場株式の個人投資家に向けた資産管理ソリューションを提供しています(2019年に米国の信託会社IRA Services Trust Co.を買収して参入)。

      2025年11月、米国の大手証券会社Charles Schwabが約6.6億ドルでForge Globalを買収することで合意しました。この買収を通じ、Schwabの4,600万の顧客口座と11.6兆ドルの顧客資産に対し、プライベートマーケットへのアクセス機会を提供すると報じられています(プレスリリース)。

      EquityZen

      EquityZenは2013年に設立され、大手セカンダリープラットフォームの一角として成長を遂げています。NPMやForgeのような取引プラットフォームを提供し、これまでに450社以上・約5万件の取引実績があります。

      EquityZenの特徴は、NPMやForgeと比べ、より個人投資家を意識した設計となっていることです。最低取引金額も1万ドルと他社よりも低く、個人投資家がファンドを介して投資できるスキームを備えています(以前の連載で解説したターゲットファンド)。プラットフォームの登録ユーザー数は80万人以上と開示されており、このうちの多くが個人投資家と推察されます。

      2025年10月、Morgan StanleyによるEquityZenの買収が発表されました。この買収により、これまでMorgan Stanleyが提供してきたプラットフォームMorgan Stanley at WorkとEquityZenが統合され、Morgan Stanleyの2,000万人の顧客に対し、より多くの流動性オプションを提供することが期待されています(プレスリリース)。

      プラットフォームは他にも存在し、かつ米国にはセカンダリー取引を仲介する数多くのブローカー・ディーラーが台頭していますが、本稿では割愛します。

      セカンダリーファンド

      米国では、セカンダリー取引に特化したファンドが1990年代から立ち上がり、現在では多種多様なプレイヤーが活動しています。本稿では便宜上、取り扱う取引の種別で大別して解説しますが(取引種別の解説はこちら)、近年は複数の取引形態を組み合わせる総合的なアプローチが増えており、両者の境界は曖昧になりつつあります。

      ダイレクトセカンダリー中心

      ダイレクトセカンダリーを中心とするファンドは2000年頃に相次いで設立されました。代表的なプレイヤーとしてIndustry Venturesが挙げられます。同社は2000年に設立され、現在80億ドル以上の運用資産(AUM)を有し、Uber、Facebook(Meta)、Alibaba、Pinterestなど著名テクノロジー企業への投資実績があります。近年ではGP主導セカンダリーやLP主導セカンダリーにも事業を拡大し、2023年9月には17億ドルで最新ファンドSecondary Xをクローズしました。また後述の通り、2025年10月にはGoldman Sachsによる買収も発表されました。

      その他、Millennium Technology Value Partners(MTVLP)は2000年頃からダイレクトセカンダリーに取り組み、TwitterやAlibabaなどへの投資実績を有します。同時期に設立されたSaintsCapitalは当初ダイレクトセカンダリーを手がけていましたが、現在はGP主導セカンダリーに特化し、30億ドル以上の投資実績があります。

      LP主導・GP主導セカンダリー中心

      これに対し、LP主導・GP主導セカンダリーを主に取り扱うファンドの歴史はより古く、現在の主要プレイヤーの多くは1990年代に設立されています。

      Lexington Partnersは1990年に設立され、700件を超えるセカンダリー取引を通じて4,000件超のファンド持分に投資し、投資総額は760億ドルにのぼります。2022年に世界有数の独立系資産運用グループであるフランクリン・テンプルトンの完全子会社となり、2024年1月には記録的な227億ドル規模のファンド(LCP X)を組成、2025年5月にはエバーグリーン型プライベート・エクイティ・セカンダリーファンドで約8.75億ドルの資金調達を公表するなど、挑戦的な取り組みを続けています。Coller Capitalも1990年代に設立された主要プレイヤーであり、2025年には総額68億ドルのColler Credit Opportunities IIを立ち上げました。

      このほか、世界有数の資産運用会社Blackstoneの投資部門であるBlackstone Strategic PartnersもLP主導・GP主導セカンダリーの有力プレイヤーとして知られています。これまで6,300以上のLP持分を取得し、運用資産残高は890億ドルに達しています。

      さらに、2025年1月に300億ドルという巨額のセカンダリーファンド設立を発表したフランス系のArdianなど、数多くのプレイヤーが参入しています。

      なお、LP主導・GP主導セカンダリーについては、VCファンドのみならず、バイアウト、プライベートクレジット、インフラなど多様なファンドの持分が取引対象となる点に留意が必要です。

      大手金融機関の参入

      隆盛を極めるセカンダリーマーケットに対し、大手金融機関が主要プレイヤーの買収を通じて参入を強める動きが急増しています。特に2025年は、相次ぐ巨額買収が大きな話題となりました。

      金融機関

      買収対象

      買収金額

      公表日

      Morgan Stanley

      EquityZen(セカンダリープラットフォーマー)

      非公開

      2025年10月

      Goldman Sachs

      Industry Ventures(セカンダリーファンド)

      約9.65億ドル

      2025年10月

      Charles Schwab

      Forge Global
      (セカンダリープラットフォーマー)

      約6.6億ドル

      2025年11月

      BlackRock

      Preqin
      (オルタナティブデータベンダー)

      約32億ドル

      2024年7月

      BNPパリバ
      (AXA IM)

      W Capital Partners
      (セカンダリーファンド)

      非公開

      2024年4月

      こうした大手金融機関の積極的な動きの背景には、これまでビジネスの中心であった上場市場の構造変化があると考えられます。前回解説したIPO市場の低迷に加え、セカンダリーの発展により急成長企業が「未上場であり続ける(Stay Private)」選択肢を選びつつある現状があります。これは、投資家にとっての市場平均に対する超過収益(アルファ)の源泉が、上場市場から未上場市場へとシフトしつつあることを示しています。

      大手金融機関の巨額買収によるプライベートマーケットへの参入強化は、こうした市場環境の変化に対応した戦略的な動きと見ることができるでしょう。

      市場インフラの発展

      米国のセカンダリーマーケットは、単純な売買マッチングのみならず、包括的な市場インフラへと進化しています。

      データソリューションの充実:先述のNPM(Tape D)やForge(Forge Price)など、セカンダリープラットフォームは蓄積された取引データを活用したソリューションを幅広く提供しています。またオルタナティブ投資市場の包括的なデータプラットフォームであるPreqinも、セカンダリーマーケットに特化したデータソリューション「Secondary Market Monitor Online」を提供するなど、データソリューションの競争も激化しています。

      インデックス・ベンチマーク:セカンダリープラットフォームのForgeは、取引データを活用したインデックスForge Private Market Indexを公開しています。また先述のPreqinもファンド持分のセカンダリー取引インデックスであるPreqin Price Indication(PPI)を提供しています。こうしたベンチマークを活用することでセカンダリー投資家のポートフォリオ管理などを高度化することができます。

      ウェルスマネジメント・カストディ:未上場株式を売却した後の資産管理を支援するウェルスマネジメントやカストディについても、大手金融機関やセカンダリープラットフォームのソリューション提供が活発です。

      さらに、市場インフラの成長を支える重要な取り組みとして、Open Cap Table Coalitionという米国の団体による活動があります。この団体は、セカンダリー取引の対象となる資本政策(Cap Table)データの標準化と相互互換性の向上に取り組んでおり、市場全体の発展に貢献しています。下図は、セカンダリーを含めたプライベートキャピタルマーケットの市場インフラ全体像を把握する上で有用な資料です。

      Open cap table coalitionのウェブサイトより引用

      まとめ

      本稿では、米国のセカンダリーマーケットを支える主要なプラットフォーマーとプレイヤーについて解説しました。

      米国のセカンダリーマーケットは、数多くのプラットフォーマーが誕生し、大手金融機関も巨額の買収を通じて参入を強める巨大な成長市場です。さらに単純な取引マッチングだけではなく、公開市場に匹敵するような市場インフラの構築が進んでいます。

      とはいえ、日本は米国と大きく環境が異なります。スタートアップの成長性、投資家の量的・質的な成熟度、セカンダリー取引に関する理解、整備途中のインフラなど、克服すべき課題は少なくありません。一足飛びで米国のような成熟した市場を実現することは困難です。

      しかし、世界的なプライベートエクイティの隆盛と、セカンダリーへの根源的なニーズの強さを考えれば、この環境の差は徐々に縮まっていくでしょう。米国の事例を参考にしながらも、会社法や日本のスタートアップ投資慣行を踏まえた、実態に即した展開が求められます。

      スマートラウンドは、こうした認識のもと、セカンダリーも含めた日本のプライベートキャピタル・マーケットの創設にチャレンジしています(代表砂川のnoteもご覧ください)。

      2024年9月に発表した野村證券・三菱UFJモルガンスタンレー証券・みずほファイナンシャルグループとの資本提携は、セカンダリープラットフォーム最大手であるNasdaq Private Market(NPM)の戦略を参考とし、日本の金融機関とともにマーケットを創造する重要な一歩となる取り組みです(プレスリリース)。

      スマートラウンドおよびスマートラウンド証券は、日本のセカンダリーマーケット創出に向け、リーディングプレイヤーとして挑戦を続けてまいります。

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