STEP2

株主総会開催前の実務

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株主総会開催前の実務

著者

砂川 大

株式会社スマートラウンド

CEO

株主総会開催前の手続き

決議・報告事項の取りまとめ

スタートアップの経営者の中には、どんな時に株主総会を開催する必要があるのか、よくわからないという人も少なくありません。法的に求められるのは大まかにいって、それぞれ以下のようなケースです。

開催する必要のあるとき

定時株主総会

・毎事業年度1回必ず開催する必要がある

・定款に基準日を設けている場合はその基準日から3ヶ月以内に開催する

・事業報告の内容の報告と計算書類の承認は定時株主総会で行う必要がある

・あわせてそれ以外の決議をしてもいい

臨時株主総会

・計算書類の承認以外の決議を必要とするときは、いつでも開催できる

・一般的には以下の主に5つの内容について決定するときに開催される(それ以外もある)
 1.定款を変更する時(本店所在地や事業内容の変更、発行できる株式の種類の追加など)
 2.役員の選解任やその報酬を決める時
 3.株式や新株予約権を発行する時
 4.発行済み株式の内容を変更する時
 5.会社を解散・再編する時

種類株主総会

・ある種の種類株式を保有している株主の権利が損なわれる可能性があるとき

・その他、一般的に以下のような会社の重要な事項について意思決定が必要となるとき
 1.定款を変更する時
 2.株式や新株予約権を発行する時

なお、取締役会非設置会社では、経営にかかわる事柄について何でも株主総会で決議してもいいとされていますが、取締役会設置会社では反対に、会社法や定款で定められた事項以外は決議してはならないとされているので注意が必要です。

株主総会の開催日

定時株主総会は毎事業年度の終了後の一定の時期に開催する必要があり(会296条1項)、その時期は、株主名簿の基準日にかかる規則と関係から(会124条2項)、事業年度末日から3ヶ月以内に開催することが一般的です。

一方で臨時株主総会は、必要があるときにいつでも臨時に招集することができます(会296条2項)。すなわち、定時株主総会として招集されたもの以外の株主総会は、すべて臨時総会となります。

なお、株主の議決権行使を不当に妨害するような日程は許されませんが、株主が問題なく権利を行使できるようであれば休日や祝日の開催も可能です。

事前承認・事前協議・事前報告

スタートアップでは往々にしてVCとの株主間契約書や投資契約書において、事前承認、事前協議、事前報告といった条項が設けられています。こうした条項における事前とは、会社の正式な意思決定機関に諮る前に、という意味ですので、取締役会設置会社であれば取締役会の前に、取締役会非設置会社であれば株主総会の前に、それらの条件を満たす必要があるので注意しましょう。

開催と内容の決議

株主総会は、取締役会非設置会社では取締役が、取締役会設置会社では取締役会が、以下を決定して招集します(会298条)。

項目

取締役会非設置会社

取締役会設置会社

招集の決定者

取締役

取締役会(代表取締役が執行)

決議方法

取締役の過半数による同意。

議決に加わることの出来る取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う。また、決議に特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることが出来ない(会369条)。

決議内容※

・株主総会の日時及び場所
・株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
・前各号に掲げるもののほか、会社法施行規則第63条で定める事項

・株主総会の日時及び場所
・株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
・前各号に掲げるもののほか、会社法施行規則第63条で定める事項

招集決定の書面

取締役決定書

取締役会議事録

※書面投票及び電子投票は採用しないことを前提にそれらに関する定めは省略しています。

なお、取締役会非設置会社では、会社法上、書面作成の義務が緩和されていますが、実務では、記録を残すために取締役会設置会社の規定に準じた形で、取締役決定書や招集通知を作成しておくことが一般的です。

株主提案権

株主提案権とは、株主が株主総会の招集権を持つ取締役に対して、株主総会での新たな議案・議題(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)を提案し、株主総会の目的事項を請求できる権利です。 株主提案権には、以下の2種類があります。

  • 議題提案権:一定の事項を株主総会の目的とすること(会303条

  • 議案提案権:株主総会の目的である事項につき議案を提出すること(会304条

取締役会非設置会社

取締役会設置会社

議題提案権会303条

資格要件

議決権を行使できる株主

以下のいずれかを有する株主※1
 1.総株主の議決権の1/100以上の議決権
 2.300個以上の議決権

行使期限

いつでも

株式総会の開催日の8週間前まで※1

議案提案権会304条

資格要件

議決権を行使できる株主※2

議決権を行使できる株主※2

行使期限

いつでも

いつでも

提案した議案の通知を要請する権利会305条

資格要件

議決権を行使できる株主※2

以下のいずれかを有する株主※1※2
 1.総株主の議決権の1/100以上の議決権
 2.300個以上の議決権

行使期限

株式総会の開催日の8週間前まで※1

株式総会の開催日の8週間前まで※1

※1:定款の定めにより条件を緩和することができます。

※2:過去3年以内に議決権の1/10以上の賛成を得られなかった議案と同様の議案は提出することは出来ません。

株主総会の省略(みなし開催)

取締役または株主の提案に対して、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録により提案内容に同意した場合は、株主総会を開かずに提案を可決する旨の株主総会決議があったとすることができます(会319条1項)。

また、取締役が株主全員に対して株主総会に報告しなければならない事項を通知した上で、当該事項について株主総会で報告しないことについて株主全員が、書面または電磁的記録により同意した場合は、当該事項が株主総会に報告があったとみなすことができます(会320条)。

提案書のテンプレート

同意書のテンプレート

ただし、上記により決議・報告を省略した場合でも、以下項目を含む株主総会議事録を作成する必要があります。

  • 株主総会の報告・決議があったものとみなされた事項の内容

  • 決議事項の提案をした者の氏名又は名称

  • 株主総会の報告・決議があったものとみなされた日

  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

みなし株主総会議事録のテンプレート

株主全員からの同意書と株主総会議事録(それぞれ書面または電磁的記録)は、株主総会の決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置かなくてはならず、注意が必要です(会318条2項、会319条2項、会施72条)。

招集通知

取締役は、議決権を有する株主に対して以下のとおり、株主総会開催にかかる招集通知を発しなければなりません(会299条)。

取締役会非設置会社

取締役会設置会社

招集通知の方法

招集通知は書面や電磁的方法によらないことも可能。口頭や電話での通知も認められている。ただし記録は残した方がよい。

招集通知は書面で行う必要がある。ただし議決権を行使できる株主の同意がある場合は、電磁的方法で行うことができる。

招集通知の送付対象

対象となる株主総会において議決権のある株式を、その株主総会の基準日の時点で保有している株主(基準日を設けていない場合は、当該株主総会開催日の当日にその株式を保有している者)。なお、以下の株主への招集通知は不要

1.議決権がない株式を有する株主
2.一部の事項を除き議決権のない株式を有する株主
3.その他株式の状態等により議決権を有しない株式を有する株主
4.所在不明株主

対象となる株主総会において議決権のある株式を、その株主総会の基準日の時点で保有している株主(基準日を設けていない場合は、当該株主総会開催日の当日にその株式を保有している者)。なお、以下の株主への招集通知は不要

1.議決権がない株式を有する株主
2.一部の事項を除き議決権のない株式を有する株主
3.その他株式の状態等により議決権を有しない株式を有する株主
4.所在不明株主

招集通知の発出のタイミング

株主総会の開催日の8日前(中1週間前)まで。ただし定款の定めにより短縮することができる。

株主総会の開催日の8日前(中1週間前)まで。

招集通知への会議目的事項の記載等

招集通知への会議目的事項の記載や記録は不要。

招集通知への会議目的事項の記載や記録が必要。

招集通知への書面添付

招集通知には計算書類や事業報告(監査報告を含む)の添付は不要。

招集通知には計算書類や事業報告(監査報告を含む)の添付が必要。

※招集通知は発信主義を採用していますので、会社法で決められた日までに適切に発信(発送)されていれば、万が一それが到達していなくても適法とされています。

招集通知が発せられなかった場合や、記載に誤りがあった場合には、総会招集手続きに瑕疵があったものとして総会決議取消事由に該当するとされています(会831条)。

招集手続の省略

株主総会で議決権を行使できる株主全員の同意があった場合、招集手続きを経ることなく株主総会を開催できます(会300条)。招集通知の省略には、計算書類・事業報告書等の提供省略も含みます(会437条)。

同意書のテンプレート

また、招集手続きがとられていなくても、株主全員(委任状による代理人を含む)が株主総会に出席した場合、株主総会は有効とされます。株主が自分1人のような場合は、この規定を活用します。

招集通知の発出期限

スタートアップが株主総会を開催する場合、一般的には開催日の8日前(中1週間前)までに招集通知を発出する必要があります。ただし、これは本来15日前(中2週間前)までとされる招集通知発出期限の例外として非公開会社に認められるものであり、株主総会で書面投票・電子投票を採用するとこの例外が適用されず、原則どおり15日前が適用されるので注意が必要です。

なお取締役会非設置会社では、定款で定めることにより招集通知の発出期限を中1週間よりさらに短縮し、例えば2日などに変更することができます。

招集通知の内容

招集通知には、株主総会を招集することについて取締役会(取締役会非設置においては取締役の決議)において決定した以下の事項を記載する必要があります(会299条4項、会施規63条)。

項目

株主総会招集の法定事項

株主総会の日時

・株主総会の日時
・前期の定時株主総会日の応答日と著しく離れた日である場合は、その日時の決定理由

株主総会の場所

・株主総会の場所
・前回開催場所と著しく離れた場所で開催する場合は、その場所の決定理由

株主総会の議題・議案

・株主総会の目的事項がある場合は、その事項
・次の議案についての議案の概要(議案が確定していない場合にはその旨)
 1.役員等の選任
 2.役員等の報酬等
 3.全部取得条項付種類株式の取得
 4.株式の併合
 5.募集株式の発行
 6.募集新株予約権の発行
 7.事業譲渡等
 8.定款の変更
 9.合併
 10.吸収分割
 11.吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部の承継
 12.新設分割
 13.株式交換
 14.株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
 15.株式移転
 16.株式交付

その他

・議決権の代理行使について、代理権(代理人の資格を含む)の証明方法、代理人数その他 代理人の行使事項を定める(定款に定めのある場合を除く)場合、その取扱い事項
・議決権の不統一行使の事前通知方法を定める(定款に通知方法の定めのある場合を除く) 場合、その方法

※書面投票・電子投票に関する事項は省略しました。

招集通知のテンプレート

また、取締役会設置会社の定時株主総会の招集通知には、事業報告と計算書類(あれば連結計算書類も)を添付することが必要です。これは、株主にあらかじめ株主総会の目的事項について検討し、議決権行使の準備をする機会を与えるためです。(会437条会施規133条)。

一方、取締役会非設置会社の定時株主総会は、招集通知自体が法的には求められていないため、事業報告等の添付書類の提供も必要はありません。とはいえ、実際には、招集通知や添付書類は、取締役会設置会社の規定に準じる形で提供することが一般的です。

招集通知の発送後は、原則として株主総会の目的事項・議案を変更することはできません。したがって、株主総会の目的事項・議題を後から変更したい場合には、招集通知を再度発信(発送)して、招集手続きをやり直す必要があります。

株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度

会社は、定款に定め、招集通知に添付する株主総会参考書類や事業報告等の一部を一定期間ウェブで開示することで、株主に対してこれらの事項にかかる情報を提供したものとみなし、書面等による提供を省略することが認められています(会施規94条1項)。

しかしながら、株主の数が限られているスタートアップでは、後述のとおり株主の承諾を得て電磁的方法で招集通知を送付した方がメリットが大きいといえるでしょう。

電磁的方法による招集通知

会社は、予めその用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、株主から書面又は電磁的方法による承諾を得られれば、招集通知に記載すべき事項を書面に代えて電磁的方法により発信することができます(会299条3項、会施令2

株主の承諾は総会ごとに得る必要はなく、いったん承諾を得れば継続的に電磁的方法を採用することができます。一方、株主はいつでもそれを撤回することができます。

電磁的方法による招集通知は、株主が会社に通知した宛先に発すればよく、書面による招集通知と同様、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(会126条5項)。

電磁的方法で招集通知の発信を行う場合は、招集に際して提供すべき事業報告及び計算書類等についても電磁的方法によらなければなりません(会施規133条2項2号)。

なお、株主から電磁的方法による提供を受けない旨の申し出があったときは、書面により招集通知を提供しなければなりません。

委任状

株主総会に出席できない株主は、代理人による議決権の行使ができます(会310条1項)。その場合、株主は委任状を会社に提出しなければならず、この代理権の授与は、株主総会ごとに行わなければならないとされています。

委任状のテンプレート

会社は、定款で定めることにより、議決権行使の代理人資格を株主に限定したり、出席できる代理人の数を制限することができます(会310条5項)。また会社は、例えば定足数の必要な決議について、会社が株主に対し第三者に議決権の代理行使をさせるように勧誘することもできます。

電磁的方法による委任状

株主または代理人は、予めその用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、会社から書面又は電磁的方法による承諾を得られれば、委任状に記載すべき事項を書面に代えて電磁的方法により会社に提出することができます(会310条3項、会施令1)。

株主が電磁的方法による招集の通知を承諾した者である場合には、株式会社は(正当な理由がある場合を除き)電磁的方法による委任状の提出を承諾する必要があります(会310条4項)。


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