地域経済活性化のためのスタートアップ支援戦略。ビジネスマッチングからシナジー創出まで

2024-11-24

  • インタビュー

地域経済活性化のためのスタートアップ支援戦略。ビジネスマッチングからシナジー創出まで

地域金融機関が語る、スタートアップ支援の最前線(後編)

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Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。

今回は特別編!愛知、岐阜、静岡、奈良で地域経済の活性化をミッションとする地域金融機関系のベンチャーキャピタル(以下、VC)担当者にお越しいただき、座談会という形で各地域のスタートアップの現状と展望について語っていただきました。

前編はこちら

※登壇者プロフィールや記事の内容は2024年9月時点のものです。

参加者プロフィール

■川埜 浩之氏(NOBUNAGAキャピタルビレッジ株式会社/インベストメント部リーダー)

2004年4月十六銀行入行。営業部店勤務(7店舗)、融資業務、法人営業、住宅・アパートローンアドバイザー、新規法人先開拓専担、本部業務(ビジネスマッチング・デリバティブ・私募債・オペレーティングリース他)、NOBUBNAGA21(スタートアップ支援))の業務を経験。現在は東京を活動拠点とし、全国のスタートアップを対象とするCVCの活動として、十六フィナンシャルグループと事業共創し新たな未来を創造できるスタートアップに投資を行う。最後の晩餐に食べたいのは故郷札幌の味噌ラーメン。

■山内 栄二氏(静岡キャピタル株式会社/営業部シニアディレクター)

2015年駒澤大学卒業後、三井住友銀行へ入行。富裕層向けリテール営業から債権管理業務まで銀行業務を幅広く経験。その後静岡銀行へ転職。三菱UFJキャピタルへの出向を経て2021年10月より静岡キャピタルにてベンチャー企業への投資及び社内の組織改革に取り組む。最後の晩餐に食べたいのは卵を落としたチキンラーメン。

■副島 直和氏(南都キャピタルパートナーズ株式会社/キャピタリスト)

2004年南都銀行入行。県内外の営業店にて個人・法人営業に従事。

2010年より取引先の海外進出や輸出入の支援業務に従事。タイ・バンコクへ2度駐在し海外進出後の現地経営支援に従事。2018年より投資業務に従事。南都キャピタルパートナーズ設立後に出向し、投資先のサービスを取引先、自治体、銀行に繋ぐことで投資先の企業価値向上に努めるとともに地域への新しい価値の創出に貢献。奈良検定1級。最後の晩餐に食べたいのはお酒と鮪、奥様の手料理。

地域経済活性化のためのスタートアップ支援戦略。ビジネスマッチングからシナジー創出まで

ーー改めて、地域経済の活性化をミッションとする皆様が、今後スタートアップをどのように支援していきたいのかお伺いさせてください。

山内:理想としては、しずおかフィナンシャルグループ各社が連携し、静岡県内で年に2〜3社はグロース市場に上場できるレベルのスタートアップを輩出するエコシステムを確立することです。静岡キャピタルとしても、投資体制を強化し、シード段階の支援やベンチャーデットの強化を通じて、ミドル以降の成長にも寄り添うVCを目指しています。

またツールや各種支援体制の活用も進めていきたいです。

例えば、smartroundを活用すれば、起業家は立地に関係なく、全国の投資家にアプローチできるようになります。地域金融機関が旗振り役となってこうしたプラットフォームを広めていくことで、情報格差を解消し、投資家との距離を縮められると信じています。

同時に、静岡ならではの一次産業の強みや豊かな自然といった地域特性を生かし、「静岡だからこそ成功した」と言えるような独自の強みも創りあげていきたいですね。

(写真:静岡キャピタル株式会社 山内 栄二氏)

川埜:スタートアップと協力してローカルの課題や地域企業の課題を解決する新しいサービスを提供するための事業提携という形で地域経済を支援していくことになると思います。逆に、東京を起点に地元や各地域でもマーケットを広げたいというスタートアップに対しては、地域金融機関のネットワークを活かした事業開発支援なども行っています。

ベンチャーデットなども今後検討する必要があると思っていますが、地方銀行であるがゆえ、需要はあるものの、地域だけのマーケットサイズから考えてサービスインするには各種ハードルもあります。だからこそ、対応できる金融機関に任せてローカルの強みを追求するのか、それともスタートアップの選択肢を広げるために、地域金融機関としての支援として取り組むのか、そういった視点で考えていく必要があります。

ーーいわゆるビジネスマッチングは非営利でやっているのでしょうか。

川埜:ビジネスマッチングは顧客紹介業務なので、マッチング契約を結びフィーをいただくケースや、業務提携のなかで対価となるレベニューシェアとしてフィーをいただくケース、地域創生的な文脈から支援を主目的としてマッチングすることもあります。支援の場合は採算やマネタイズのみを目的とせずに地域活性化からその先に繋がることに目を向けた取り組みを行っています。

副島:同様に、地域法人の課題を解決するためのツールとして、スタートアップを紹介し、積極的に支援しています。

例えば、南都銀行の取引先である法隆寺が、コロナ禍で収益が落ち込んだ際、投資先のスタートアップが提供しているクラウドファンディングのサービスを使って運営資金を集めました。

この時、南都キャピタルが投資しているスタートアップと繋いで、約一年かけて法隆寺と調整を行いました。結果、法隆寺は資金を集められ、スタートアップも大きなPR効果を得られ、双方にメリットがありました。

このように奈良の特色を生かしてスタートアップの支援に活かすように活動しています。

良い投資先を繋ぎ止めていくためには「ここまでしてくれるのか」と思ってもらえるように手厚く、汗をかいて支援していくことが重要だと考えています。

地域金融機関の新たな挑戦:スタートアップとのシナジーで解決する企業課題、地域課題

ーー銀行内のシナジーをどのように生み出していくかもポイントになりそうですね。

副島:そうですね。母体行やグループ間での認知度を上げることにも注力していきたいです。例えば生成AIについての講演依頼があったら、最先端のスタートアップと繋がっている私たちであればすぐに候補を紹介することができます。

投資専門の戦略子会社なので、引き続き投資シナジーを生み出せるよう努めていきたいです。そのために日本全国から投資先を募っており、投資実行にとどまらず、どのようなインパクト・アウトカム(行動変容)を出せるかという視点も大切にしています。

山内:静岡キャピタルもまさにシナジーの創出が課題です。投資後の成功事例はまだ多くなく、「この地域にはこんな課題がある」という仮説を立てて投資を行っている状況です。今後は地域の課題と更に深く向き合い、グループ各社や地域企業とのハブ役を担いたいと考えています。地域のイノベーション促進に向け、スタートアップとの向き合い方を確立させていく必要があります。

川埜:だいたい想像はつくのですが、銀行内のシナジーに関しては具体的にどのような壁がありますか?

山内:  そもそも静岡キャピタルとして県内企業の課題やニーズを十分に把握しきれておらず、たとえ経営課題にアプローチできるスタートアップと繋がっていても、課題と解決策を結びつけるのが難しい状況です。

副島:システムで一元管理することでフル活用している銀行もあると聞いています。

山内:銀行営業担当者のマインドや、銀行取引先の方が創業数年のスタートアップに抱く印象もまだ信用度が高いわけではないので、そこも変えていく必要があります。

地域からイノベーションを起こすには。これからの地域金融機関のあり方

ーー最後に一言ずついただけますか。

川埜:VCを立ち上げて3年半が経ち、地域企業や地域の課題にスタートアップを絡めながらアプローチするという取り組みへの需要の大きさを実感しています。十六フィナンシャルグループ全体で連携しながら、愛知・岐阜を中心に、地域企業の発展の支援や地域活性化につながるスタートアップのサービスを作って提供していくという方向へと進んでいきたいと考えています。

山内:地域金融機関としては、静岡県内企業の成長や地域の雇用創出は必須のミッションです。グループ全体でスタートアップフレンドリーな姿勢を持ち続け、地域のエコシステムのハブ役を担い、地域経済を盛り上げていきたいです。

副島:奈良県内でのシェアが半分以上を占め、県内の取引先とほぼ繋がっている立場だからこそ、奈良県でスタートアップが何か試したり、実証実験をする時の第一想起を目指したいです。

奈良県で試してうまくいったら県外に進出してもらいたいですし、ネットワークとしての地域金融機関を活用して欲しいです。

私自身、異動で10月から営業に戻るので、スタートアップの現状について、銀行内でも十分にPRし、取引先の可能性を広げ、銀行のポテンシャルを高めていきたいと思っています。

ーーみなさま、貴重なお話をありがとうございました!


smartroundは「スタートアップと投資家のためのプラットフォーム」として、データのやりとりをはじめとするあらゆる投資家接点を一元管理して効率化するSaaSです。

今回の座談会にご参加いただいた静岡キャピタル様、南都キャピタル様をはじめ、多くのVC・CVCの皆様に活用いただいております。

===参考記事===

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