「プロダクトは企業の成長を牽引するのか」freee東後さん×ジョーシス横手さん×メルペイ成澤さん 注目企業3名のCPOによるCxOカンファレンスセッションレポート

2024-05-07

  • イベントレポート

プロダクトは企業の成長を牽引するのか / freee東後さん×ジョーシス横手さん×メルペイ成澤さん

注目企業3名のCPOによるCxOカンファレンスセッションレポート

Share

プロダクトが企業の成長を牽引する。当たり前じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、日本企業はプロダクトを後回しにしているのではないか。この問いに対し、実際のところはどうなのか、freee株式会社 取締役CPO東後澄人さん、ジョーシス株式会社CPO 横手絢一さん、株式会社メルペイ執行役員CPO成澤真由美さんと、3名のCPOがディスカッションを行いました。

本記事では、2023年9月22日(金)に開催された「Startup CxO Conference」、「プロダクトが企業の成長を牽引する 注目企業のCPOパネルディスカッション」の内容をお届けします。当日のモデレーターはPendo.io Japan株式会社 カントリーマネージャーの高山清光さんが務めました。

※役職は2023年9月22日時点のものです。

▶︎今年9月に開催予定の「Startup CxO Conference 2024」の案内を受け取りたい方はこちら

freee・ジョーシス・メルペイ。3社のCPOの役割と組織体制

――本セッションのモデレーターを務める高山です。とはいえ、私はCPOではないので、登壇者の3人が盛り上がることを期待して進めていきたいと思います。私はずっとIT畑にいまして、2005年ごろから外資の日本立ち上げ1人目ばかりをやってきました。いろいろなところの社外取締役やアドバイザーなど、兼任が多いBtoB SaaS立ち上げ大好き人間です。

東後:freeeの東後です。今回はCPOという役割でお声をかけていただいているのですが、実はまだCPOの期間は1年だけでして、在籍10年のうち、最初の5年はCOOを、上場前にCFOとなり、4年半ほど経った昨年からCPOというプロダクト責任者をやっています。

弊社は「スモールビジネスを世界の主役に。」というミッションで事業を行っており、誰もが自由に経営できる統合型経営プラットフォームをビジョンに掲げています。当初は会計ソフトからスタートしましたが、今では人事労務、販売管理、経費精算、M&Aで入ってきた電子契約など、かなり幅広い領域の事業、プロダクトを提供しています。

ARRは昨年度で200億円を超えたところで、法人、個人事業主のお客様がいる事業です。ユーザー数は45万事業所と、こちらも年々増えてきています。組織については、今年の6月時点で正社員ベースで1300人ぐらいで、今は拡大フェーズです。

次に組織構成です。CPOが担う役割は会社によっても異なりますが、私はプロダクトマネージャー、デザイナー、プロダクトマーケティングマネージャーやプロダクトセールス、事業開発や事業企画、プロダクト企画といったプロダクトづくりを担う人たちが集まるプロダクト組織に属しています。

これとは別に、CTO組織としてのエンジニア組織、CBOによるセールス・マーケ組織に分かれていて、CTO側にエンジニアがすべていて、CBO側にマーケティング、セールス、サクセス、アライアンスといった人たちがいます。

CBO側のマーケティングはお客様に対してどういうマーケティングをするのかを見るもので、CPO側はプロダクトをどう訴求すればいいのかを考えるプロダクトマーケティングという役割分担になっています。1300名のうち、200名ぐらいが私の組織にいて、CTO組織が400~500人、CBO組織も400~500人、あとはバックオフィスといった組織構成です。

私の組織では「最速で“マジ”価値を届けきる」ことをミッションにしています。マジ価値とは、ユーザーにとって本質的に価値があると自信を持って言えることをやろうという弊社がバリューとして掲げている言葉です。その”マジ価値”を最速で届けることにこだわっているのがCPO組織です。

最後に日々の役割、時間の使い方についてです。経営メンバーの一員としての仕事が30%ほど、プロダクトや事業に関わる仕事が45%です。その他、キックオフやチームミーティング、1on1、採用など、組織運営系の仕事に25%くらいの時間を割いているかなという感じで、私の自己紹介は以上となります。

横手:ジョーシスの横手です。私は新卒で総合商社に入り、結果的にオポチュニティに恵まれまして、社内起業をして会社を立ち上げ、当時2人だったのが今では70人くらいまで拡大したというキャリアを歩んでいます。そこから事業をスピンアウトして会社を作り、他の会社から出資を受けていたときにラクスルに入社しました。まだジョーシスという名前もプロダクトもないところから関わり、ジョーシスの立ち上げ、ラクスルからの分社化、外部資本の投下まで一貫して見てきた人間です。

ジョーシスは情報システム部門の常設をもじったダジャレ的な名前です。情報システム部門の方って、パソコンを新入社員のために買ってセットアップして渡し、退職者から回収して初期化したり、入社した社員のアドレスを発行してSaaSアカウントを作ったりしているんですね。そのアナログな業務を効率化し「このアカウントはいらないのでは?」と示唆してコスト削減につなげたり、「退職済みなのに管理者権限が付与されたままです」と見落としを伝えることでセキュリティ、ガバナンス向上を支援したりしています。

弊社がfreeeさんやメルペイさんと少し違うなと思うのは、CPOのPについてです。これはプロダクトのPで、究極プロダクトとはいわゆるSaaSソフトウェアを指すと思うんですが、弊社はBPOみたいなアウトソーシングサービスもプロダクトであるという考え方を採っているんですね。いわゆるテックタッチなところもフィジカルタッチなところもプロダクトサービスであるというのが弊社の考えです。

弊社のプロダクトマネジメントは三角形で表すことができまして、上には開発者・エンジニア、左下にお客様がいて、右側にビジネスがいます。そのビジネスと顧客をつなぐところにマーケティングやBizDevがあり、開発者とビジネスの間には、「こういう要望があるから作ってくれ」「こういう仕様にしてくれ」といったやり取りが発生しています。

開発者・顧客・ビジネスの真ん中に立って、いい意味でブリッジしていくのがプロダクトの大きな役割です。個の観点で言うと、私のようにビジネス経験者からプロダクトに行く人もいれば、開発から行く人もいますし、顧客視点に立つUIUXデザイン側からプロダクトに行くという3タイプに分かれるなと思っています。

東後さんはCCO、CFO、CPOなので超レアなパターンですが、おそらくビジネス側かなと思っていまして、どこの側からきたのかという整理をするとわかりやすいのかなと思っています。

組織構成に関してですが、「CX、CSはプロダクト側が干渉するのか、Biz、セールス側が干渉するのか」は永遠のテーマだと思っていまして、弊社ではプロダクト側が見ています。

事業が始まって1年ぐらいなので、契約更新をしてもらってというよりは、しっかり使ってもらうほうに重きを置いているフェーズだからなんですね。freeeさんのように歴史が長くなってくると、ちゃんとリニューアルしないとチャーンして死ぬ、それをKPIでセールス側に持たせるほうが合っているのかなと思うんですが。

また、弊社の特徴として、結構グローバルな組織になっている点が挙げられます。プロダクト側のUXデザインはアメリカとインドと、日本にはいないとか、PMも私以外は全員外国人みたいな、プロダクト開発においても日本だけじゃないところが悩みの種でもあり、レバレッジをかけられているところでもあるという感じです。

東後さんもお話していた役割や時間の使い方ですが、私は全社の経営関連業務が20%、プロダクト関連業務が50%くらい、あとはコーポレート関連業務が30%くらいです。先ほどBPOもプロダクトとして位置付けているとお話しましたが、その立ち上げも私が干渉しています。

成澤:メルペイの執行役員をしている成澤です。メルカリの執行役員も兼務していて、どちらのプロダクトも見ています。音楽大学を卒業後、ちょっとフラフラしていまして、その後ディー・エヌ・エーに入社、新規事業の立ち上げを10本ぐらい経験させていただいたのち、スタートアップにチャレンジしています。そのすぐあとに立ち上がったメルペイが魅力的で、すぐに入ったという経歴です。CPOになってからはまだ間もないひよっこで、歴は1年半~1年9ヵ月くらいです。

メルペイを語る前に、まずメルカリを語らないとわからないかなということで、メルカリの歴史をグラフにしてきました。メルカリはfreeeさんと同じ10周年を迎えたサービスで、5年目にメルペイが立ち上がっています。

新規事業を立ち上げるたびに流通総額が上がっていまして、メルペイ立ち上げから5年後のメルカリ10年目にメルコインという無形物に関しても取引が行われる世界を作っていくことを目指し、新しい世界に突入しているところです。特に重視しているのは月間利用者数で、昨年11月から今にかけて、プラス200万人ぐらいのお客様に利用されています。

メルカリのミッションは「あらゆるものの価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」で、メルペイの中核事業は、誰もがやりたいことを実現できるための与信サービスです。日本の与信の基本スタイルは、その人の状態を見て判断することだと思うのですが、弊社では10年間のメルカリでの行動、取引姿勢、約束への履行能力を見て独自の与信を提供しています。それにより、今までは与えられなかった与信を与えられ、ほしいもの、やりたいことを実現できるんです。

それらを使いやすく提供したのが昨年誕生したmercardで、最近のアップデートで物理カードが届く前のバーチャルカードの状態でもネット決済ができるようになるなど、アプリ連動型のサービスを提供しています。誕生から約9ヵ月で発行枚数150万枚を突破しました。

私はmercardの事業オーナーとプロダクトオーナーを務めています。カンパニービジョンとプロダクトビジョンを並列に置いていまして、カンパニービジョンは中期経営計画やコーポレートプランニングが決めていくようなPL策定を指しています。

私が担っているのは図の赤枠の部分です。ビジネス戦略シナリオに基づき、メルペイ立ち上げから培ってきた実績、お客様からの期待や評価をバリュープロポジションという項目にまとめ、それをどう扱って何を作っていくのか、その結果カンパニービジョンで掲げている達成すべき世界観に照らし合わせて定性的な世界観に言語化し直し、実現しうるのかというゴール設定を行います。

その後、カンパニーロードマップの策定を行い、選択集中、優先順位を決定。人員配備をやっていくという感じです。1年で刷新をするため、年明けから6月末まで2週間に1回ぐらい経営会議に回しながらこの作業を行い、その横で短期のケアもするという1年を過ごしています。

役割について、2人のスライドを真似したかったんですが、あまりにも複雑すぎて、このように記してみました。親会社であるグループ会社メルカリがあり、その中に金融プロダクトである私たちがいて、と一緒に描くことがどうしてもできず、ここに描いたのも一部です。

私が特に連携している人を図にしたもので、私が金融プロダクトのCPOディビジョンで、プロダクトを通してグロースしていくのが責任範囲です。特に金融ガバナンス構築を徹底的に守っていくのがこの経営ラインに求められることなので、金融庁が定めている基準に基づいてメルペイの品質基準をまとめ、それに基づいて責任を果たすスタンスをとっています。

CTO、COO、CPOの3つのディビジョンのなかで企画開発管理法則を作り、実態をモニタリング、トラッキングしていく運用を常に回しています。毎週、200件以上の本番環境変更のリストを見て、CPOやCTOがYES、NOの判断を下していくという骨の折れる作業をしている感じですね。

横手:CPOに対して、圧倒的に向いている矢印が多いですよね。これ、それぞれと定例を組んでいたら1週間ミーティングが埋まりませんか?

成澤:そうなんですよ。CPOになったときに言われたのが「グループ社内でも1番ステークホルダーが多いから覚悟しておいてね」で、まさかねと思っていたら、結果こういう状態になっているという感じですね。

私が持っているのはプロダクトマネージャー、プロダクトデザイン、UXリサーチ、マシンラーニングです。先代CTOから今の時代マシンラーニングを使えないCPOはダメだと言われているので、彼らと共にスクリーニング作業や社内的な負荷を下げたり、お客様とCSの間で企画戦略を練ったりしています。

最後に、役割や時間の使い方です。横手さんから「埋まっちゃいませんか」と聞かれましたが、いかがでしょうか。埋まっているように見えますか?

朝6時半から仕事をしている感じで、まずは頭にあるものをすべてSlackで依頼したり返信したりするのがルーティンで、みんなが始業するときに私の考えていることを知ってもらい、1日の終わりまでに結論を出してもらいたいなと思っています。

曜日にもルーティンがあり、月曜はできるだけインプット。火水木は検討してこねる期間で、金曜は1週間で改まった考えをアウトプットするようにしています。お二人もレビューと書かれていましたが、私も1番大切にしているのはレビューに近いことでして、CPOディスカッションという時間を水曜日に2時間取っています。レビューという言葉が好きではなく、みんなと一緒に考えたいのでディスカッションと呼んでいる感じですね。

あとは少し変わった形態の会社なので、メルカリ社の経営報告もあれば、メルペイ・メルコイン合わせたフィンテックの経営報告もあります。

プロダクトが企業の成長を牽引するのは当然。ただし判断するのは難しい

――1つ目のテーマは、今回のメインである「プロダクトが企業の成長を牽引することについて、実際はどうなのか」です。まずはPLGという「プロダクトでプロダクトを売る」というものがあり、PLGをやっている会社は企業価値が上がっているというデータがアメリカであったりしますというところを踏まえて、実際皆さんの感覚でどうなのか、ディスカッションしていきたいと思います。

東後:プロダクトが企業を牽引するのは当然だと思っていますが、それを示すのは意外と難しいなと思っています。それを示すKPIをどう設計してトラックするかみたいなところが腕の見せ所でありポイントなんじゃないかなと。

プロダクトによっても違うと思いますし、先ほど横手さんがおっしゃったように、ある程度成熟したものであればチャーンレートが大事な指標になってくるので、いかにそれを下げるかが大事になるといった話もあるでしょうし、プロダクトを出したばかりだと成約率になってくるかもしれない。中堅ぐらいだと単価をどれぐらい上げていけるのか、その計画に対してプロダクトの貢献度はどれぐらいなのかを見たほうがいいかもしれない。

1つのKPIが汎用的に使えるというよりは、このプロダクトが今、事業に貢献する上では何に効いていればそういえるのかみたいなことを定義して、それをKPIに落とし込んで時々でそれを追いかけていく。そこがうまくいけるかどうかがプロダクトが急成長を牽引しているかどうか、自信を持てるかどうかの分かれ道な気がします。

横手:CPOとしてのKPIを何に設定されているのかが非常に気になります。

東後:今でいうと、先ほどの体制図であったようにCPOは組織のリーダーを担っているので、プロダクトカットで事業がどう伸びているのか、それをブレイクダウンしたところにはチャーンやARRなどいろいろなものがあるので、究極的には事業の成長に対して責任を取る感じですかね。

成澤:メルカリは創業者がPMでプロダクトありきの会社なので、この質問が1番難しいなと考えていました。セールス組織はそこまで大きくなく、ネットワーク効果みたいなものを出さないと数字が伸びないというのが私たちのサービスの特徴なので、重要指標=プロダクトKPIみたいな。

PLを見ていても、やっぱり定性的なストーリーに落とし込みやすいというのはプロダクトをつくることで成長するシナリオだからなのかなという、ありがたい環境だとは思っています。

強いて言うなら、経営会議で新規事業ネタを持ってきましたといってドキュメントを呼んでもらったとき、「マーケティングの計画はどうなってるの」「プロダクトの上にマーケティングが乗っかって、どのぐらいのインパクトを起こせるの」というあらゆる観点で整理できていなければ却下されるんですよね。

そういう議論を意識的に行ってくれているとは感じるので、誰かの声が大きくても経営会議では機能しないというカルチャーではあると思います。

東後:先ほどのスライドにあったいろいろな交差点にCPO組織がありましたが、社内的にブランディングはされているんですか?

成澤:意図的ではなく、気付いたらそうなっちゃっているという感じです。金融の法令順守や整理も気付くとプロダクトマネージャーがやらなくちゃいけなくなっていて、どんどんCPOディビジョンの負荷が高まっていくので、ちょっと待って、と切り離しに行くみたいなことは定期的にやらないといけないですね。

横手:問いを見て思うのは、ぶっちゃけPLG(プロダクトレッドグロース)は日本のお家芸だったんじゃないかなということなんですよね。トヨタも究極、車というプロダクトですし、ソニーもパナソニックも東芝も、何でも日本ってPLGをやり続けてきている会社、国なんじゃないかなと。

プロダクトが車のような重厚長大なもので、それを作るのが生産工場っていうのが、今はソフトウェアというプロダクトをエンジニアやPMという人間が作るみたいになっていて、だからこそ工場の減価償却と人間の人件費、減価償却はどうするのかという概念が今発生しているんですが、究極、アナロジー的には日本の国家はずっとPLGをやり続けている。

じゃあ、なぜ今海外と差が開いているのかというと、日本はプロダクトアウトの思想が強くて、海外はデザインシンキングとかいうように、マーケットインでやってきている、そのパラダイムシフトが日本では起きていなくて、そこをやろうとしているのが我々PM業務なのかなと。

プロダクトが企業の成長を牽引するというのを国としてやってきているけれども、そのアプローチがシフトし切れていないから、海外に対し少し劣勢になっているという整理をしています。

――使いやすいプロダクトが成長を牽引するみたいな話を数億円、数十億円の会社のアドバイザリーとして言うと、UIUXはもっと儲かってからと言われたりするんですよ。海外では初めから磨いてから始めるんですか?特にお二人のように歴史のまだない会社でのUIUXはどうでしょうか。

成澤:初めからですね。

横手:そうですね、toCは特にそうだと思います。

東後:いつから意識していたかと言われるとわからないですが、当たり前のように磨いていたと思いますね。

成澤:プロダクト=UIUXみたいな話になりがちじゃないですか。おそらくですが、プロダクトが企業を牽引しているという所以は、そのプロダクト組織しかできないことをやっているがゆえである。

そう考えると、パーセクションチェンジや既存の概念を覆すといったAppleがやってきたようなことを作り出すのは、プロダクト組織、そういう人材でしか生み出せないんですよね。要は人の価値観を変えることによってサービスがユニーク性を持ち、人が集まってきて収益になるというのが本質的ではないかと思っていて、ではそれをどう表現するのかという手段の1つにUIUXがあるという考えが必要ではないかと思います。

横手:ぶっちゃけPLGを声高に言いたいですけど、Salesforceとか究極のSLGじゃないですか。セールスこそ最大のBizDevであることは絶対間違いではなくて、ただそれを支えるとかセールスのプレイブックを規定するのがプロダクトだという意味でいうと、プロダクトが根幹なのかなという意味で、セールスは非常に大事。

東後:そう思いますね。プロダクトレッドグロースの上にさらにSLGが乗っかってミルフィーユになっているから成長が加速されるのであって、どちらを選ぶかではなくて多分どちらもだと思うんですね。

特にジョーシスさんや弊社のBtoBだと営業力は重要なので、そういう位置づけなんだろうなとは思います。まさにfreeeも創業時は営業組織ではなくマーケティング予算もなかったので、最初コアなユーザーさんにSNSで「いいプロダクトですね」と言ってもらえていなかったら多分今はないと思っています。それだけでは価値が届き切らない人たちにどう届けるのかというところで、営業活動やパートナーシップがあるのかなと思います。

CEOのこだわりは、ピン留めできるからありがたい

――次のトピックは「CEOが考えていることをプロダクトを通してどう実現するのか」です。何か聞いてみたいことはありますか?

成澤:1on1などでふだん何を話しているのかを聞きたいです。

東後:内容はさまざまですが、創業時からやり続けているのは私とCEOの佐々木とで行う毎週1時間の1on1です。10年以上やり続けていまして、2人とも忙しいので毎週1時間確保するのは大変なんですが続けていますね。アジェンダのないこともたくさんあって、そういうときこそ「今、うちどうなんですかね」って話をするなかでハッと気付くことがあったりするので、それが大事だねと。それは1つの成功体験かもしれません。

ここまでで全然問いに答えられていないので、1つお話すると、CEOがCPOを兼ねていることってスタートアップにおいて結構多いと思うんですね。それでもCPOを置いているということは、ある程度CEO自身が持っているイメージやこだわりを理解した上で、それをやってくれるだろうという期待感があってこそだと思うんです。CEOが「これはこうなんだ」と信じ込んでいることやこだわりがあるのは、すごく助かるんですね。そこを固定できるので。

本当はいろいろな可能性を検討したりリサーチしたりして、こっちが正しいよねと選びたくなるんですが、「ここはどうしてもやりたい」とピン留めできるのは助かる部分なので、プロダクトを通してどう実現するかというより、こだわりポイントを大事に採り入れながら固定して、それ以外を作っていくと結果として何か実現できるのかなと思います。

横手:まさに一定のこだわりというか、それが投資家からの圧力によるこだわりのときもあれば、周りのリサーチの結果みたいなところもあるので、どこからきているのかはその時々なんですが、ピン留めできるのは結構楽です。ピン留めのなかで、WhatとかHowまでCEOが入ってくることはそんなにないと思っていまして。

どう実現するかより、ピン留めした最高レベルの優先順位のもとで、最前最速を尽くす。「最速でマジ価値を届け切る」って深い言葉だなと思っていて、PMが悩むことって、これ作ろうとなったとき、価値が届くレベルで作りたいけど、もっとガチで作ったらこれぐらいになるみたいなフェーズ分けをするところかなと思うんですね。届く前で引いちゃうとフェーズ2までやらないと意味ないみたいになってしまうので、フェーズ分けのセンスはPMの究極の実力なのかなと。

東後:社内的に「こういうことだよ」と伝えるのに苦労しているんですよ。さすがですね。最速というのは、3年後じゃなく2年半後に出すということだけを指しているのではなく、その瞬間で最善のものを届け切れているかにこだわりを持とうというのが込めている想いなんですね。完成品が早いというよりは、価値の積分値を最大化するにはどうすればいいのかが最速に込めている部分なので。

成澤:私はちょっとまた2人とは違うことを言ってしまうかもしれないんですが、ロードマップに敷かれたものはもう論点にはならないんですよね。作りたいことっていうのは、3年5年先のことだったりする、やってほしいことはイケているプロダクトを最速で出すこと、そのためのイケている組織を作ってくれと。メルペイとして作りたいものは決済のスペシャリストのCEO山本の頭にあって、メルペイの実績に基づいてできること、事業領域がリストアップされたものがこちらに飛んでくるんですね。2人の間でどういう指標を上げるべきなのか、誰に向けてどこから作り込んで行けばいいのかの共通認識はあるので、ひたすら雑談をし、土日の時間があるときに私が1枚の絵にしています。

横手:土日ですか?

成澤:土日です(笑)使っている人が想像できる1枚絵にして、「これが僕が想像していたものだ」というところを確かめて月曜日に提出するみたいな。それは曖昧なものなので、数字や言葉にすると違和感があるし、矛盾点も出てくるんですよね。曖昧性の中で語り合うのを重視していて、絵が私が1番生み出せる技術なので、絵に起こしているという感じです。

横手:かなり高度なことをしていますね。私からも1つ聞きたいです。いい人を採用するため、どこを見ていますか?どこから関わっていますか?

東後:つい最近まで全部出ていましたね。見ているのはポテンシャルです。1つの課題やお客様の業務など、なんでもいいんですけど、深く入っていく探究心があるかどうかをかなり見ています。前職がPMであろうがなかろうが、何に取り組んでいてそれをどこまで探究して面白がっていたかみたいなところ、あとは横ぐしのリーダーになるので、コミュニケーション量やリーダーシップの基本的な資質も見ていますね。

横手:必ずする質問はありますか?Tipsとして持ち帰ろうかなと…。

東後:質問ではないですが、事業について知らないふりをしていました。相手がやっていたことについて知らないふりをして、知らない私に対してどううまく説明できるかを見ていますね。あとはビジネスモデルやプロダクトを否定して見たときの反応も見ていました。

CPO独自の要素はない。ただしCPOというからには、プロダクトに対するこだわりは重要

――最後のテーマはCPOに適している人です。いかがですか?

成澤:その人が適任かどうかより、やることとセットで考えるというのが弊グループの定説ですね。なので、私もやることとセットで適合していただけだと思います。メルペイでは3代目のCPOで、立ち上げ時期はフィンテック全体に熱量があり、未来を語れる人が就任し、収益性をきちんと作っていかなければならないフェーズになったときには、人事も回せる経験があり、かつメルカリを熟知している方がCPOになりました。

そして、mercardを出すとなり、カードデザインを考えたり収益性を高めていくためにパラレルでバラバラになっている事業を扱える人間というので適合したのが3代目の私だったという流れなんですよね。

あと、VPをプロダクトかCPOかどちらにしようという論点はあるかなと思うんですが、CPOはビジョンを語れるかどうか、ふだんから語っちゃっている人なのかなと思います。

東後:個人的にはどのCXOも大差ないと思っているところはあります。良いCOOなら良いCPOになれる気がしますし、良いCTOなら良いCFOになれるんじゃないかなと。でも、成澤さんがおっしゃったように、CPOというからにはプロダクトに対する一定のこだわり、何が好きかみたいなところは大事で、いい意味で融通が利かないというか、プロダクトの価値や顧客への価値みたいな本質的なところから引き戻す力が大事なのかなと思います。あとは経営の場にどれだけプロダクト思想を持ち込めるかも結構大事なのかなと思いますね。

横手:2人の話に加えると、流せる能力が大事かなと。ステークホルダーが多くて、いろんな人がいろんなことを言ってくるんですけど、本質を見失わず、角が立たないように「わかった、ありがとう」と言いはするけど流す、みたいな。

情報過多になるなかで、取捨選択を脳内でちゃんとできる力、本質を見極める力、地頭力みたいなところですかね。社長にこう言われたけど、本質じゃないからと流せる人って意外にいないのかなと思うんですが、流せないとしんどくなっちゃうので、CPOは流す力を持っていた方がいいのかなと個人的には思います。

プロダクトは企業の成長を牽引する

今回のテーマだった「プロダクトが企業の成長を牽引する」のかどうかについて、答えは「牽引する」と出ました。しかし、実際に牽引しているかどうかを判断するのは難しく、登壇者たちのCPOとしての試行錯誤が伺えたのではないでしょうか。プロダクトへの徹底したこだわりが、企業の成長を牽引するCPOに近づく道である。各々の強い思いが伝わるセッションでした。

▼あわせて読みたい

才能が集まる会社とは。注目企業の急成長を支えるCOOの舞台裏

テクノロジーが時価総額にどう影響を与えるか

盛り上がりを見せる生成AIは、企業価値の向上につながるのか

【5/10公開】Startup CxO Conference 2023 全セッション紹介

▼今年9月に開催予定の「Startup CxO Conference 2024」の案内を受け取りたい方はこちら

Startup Nextを運営するスマートラウンドでは、スタートアップが無料で使えるデータ共有プラットフォーム「smartround」を提供しています。株主総会や資本政策など、少しでも業務を効率化したい方は無料登録の上、ご利用ください。

またその他にも、スタートアップ向けのお役立ち資料・テンプレートをご用意しています。ダウンロードはこちらから

Share