
2024-05-09
イベントレポート
盛り上がりを見せる生成AIは、企業価値の向上につながるのか / Ubie風間さん×サイバーエージェント及川さん×アドビ里村さん
CxOカンファレンスセッションレポート
ChatGPTへの注目など、盛り上がりを見せる生成AI。その活用により、企業価値を高めることはできるのでしょうか。
2023年9月22日(金)に開催された「Startup CxO Conference」では、自社で生成AIを活用しているUbie株式会社 Ubie Lab Head of AI Research 風間正弘さん、株式会社サイバーエージェント FANTECH本部 チーフクリエイティブマネージャー/アートディレクターの及川和之さん、画像生成AI「Firefly」を提供しているアドビ株式会社の里村明洋さんが登壇し、セッションを行いました。モデレーターは、株式会社アドビ マーケティング本部長の清水仁志さんが務めました。
※所属・役職は2023年9月22日時点のものです。
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理解度は低いが、期待感は大きい。日本の生成AI事情
――まずはお三方から簡単な自己紹介をお願いします。
風間:Ubieの風間です。大学院で機械学習の研究をしておりまして、卒業後にリクルートとIndeedでデータサイエンティストとして働いてきました。Ubieには3年ほど前に入社し、データサイエンスチームの立ち上げに携わっています。今年に入り、生成AIのビッグウェーブがきているということで、生成AIの組織の立ち上げ、社内への浸透を行っています。
及川:サイバーエージェントの及川です。デザインやクリエイティブばかりやってきた人間で、2012年にサイバーエージェントに中途入社してからは自社サービスの開発というところで、いわゆるUIUXからグラフィックデザインまで何でもやっている感じです。AIに関しては、昨夏から一気に画像生成AIが爆発的な進化をし始め、いよいよ無視できなくなってきたぞというところで、クリエイティブ組織内でどういう方針を持って対応していこうかというところです。
里村:アドビの里村です。今回はどちらかというと風間さんや及川さんの話のほうが面白い内容が多いと思うので、その事例話を聞かせていただきながら、私たちが提供している生成AIの話も少しできればと思っています。
――今回は生成AIのセッションということで、「東京で『生成AIのビジネス利用』に関する60分のパネルディスカッションイベントを行います。そのなかでテーマとして扱うべき3つの論点を教えてください」とGoogle Bardに聞いてみました。その回答を踏まえながら、トピックを3点考えました。1つ目は「生成AIをめぐる国内概況の整理」ということで、おさらいてきに話していけたらと思います。
「あらためて、生成AIとは」という問いもGoogle Bardに聞いてみたところ、大きく3つの回答が出てきました。1つ目は、生成AIとは、データから新しいデータを生成するAIのこと。2つ目はバリエーションみたいなところで、画像や音声、テキスト、動画、音楽と用途目的に合わせて使い分けられますよということですね。
3つ目は時期的な話で、Google Bard的には2020年代に入ってから日本で盛り上がりを見せていますと回答していまして、その理由としてはディープラーニングの技術革新による性能向上、大量のデータの収集活用、クラウドコンピューティングの普及による大規模な計算力の向上が挙げられるとのことです。
このあたりが生成AIの基礎情報になってくるかなと思います。ここで風間さんにちょっとお伺いしたいのが、生成AIが2020年代から盛り上がりを見せているというところで、より契機になったタイミング、「このあたりからぐっときた」と感じられているタイミングはおありになりますか?
風間:画像系でいうとStable DiffusionやDALL-E、ChatGPTという2つのポイントがあるかなと思っています。広がった要因の1つはクオリティが一気に上がったこと、もう1つは一般の方が簡単に使えるUIが提供されたことだと思いますね。

――ChatGPTが出てきたときの驚き、一気に火が付く感じは、新しいものが来たという印象だったかと思います。ここで数字的な側面も見ていけたらと思うのですが、生成AIに限らず、国内AIシステム市場全体は2022年に約3900億円に到達すると考えられていまして、2022年にかけては前年比より35%、向こう5年をみても伸びていく市場だとみられています。
ここでIPSOSさんがグローバルでAIに関して調査されたデータで面白いものがあったので、ちょっとご紹介させてください。

――これはそれぞれの国でどうAIが見られているかという数値みたいなもので、左側はAI、人工知能への理解度について、「よく理解していると思う」と答えた人の割合です。世界平均が67%のところ、日本は43%で、調査対象となる31国中31位と最下位でした。
右側は期待感で、今後3~5年で人工知能による製品やサービスが自分の日常生活を大きく変えるだろうという問いに「そう思う」と答えた人が、世界平均66%に対し日本は65%と、14位でした。国民性も出る結果だとは思います。
このうち、期待感に関する数字は伸びてきていまして、この1年半で12ポイントぐらい増えているんですね。

――伸び幅は調査対象国の中で1番です。及川さん、このあたりに関していかがでしょう。
及川:「よく理解している」の問いについては、完全にわかっている人しか「そう思う」と答えなかったんだろうなという感じはしますね。それでも上がってきているということは、AIに関する情報には触れていて変化しているのかなと。あと、もしかしたら一次情報が英語で流通しているため、キャッチアップが遅れているところもあるのかもしれませんね。

――あるかもしれませんね。先ほどのデータはAI全般ですが、生成AIに関しても、皆さんご存知の通り生活者の関心も高まってきています。これはGoogle Trendの生成AIの検索量の月次推移ですが、昨年7月以降から伸びてきていて、今年の今年の7月には非常に大きく伸びているトレンドがあるかなと思います。

――もう1つ面白いデータをご紹介させてください。こちらは弊社アドビがグローバルで実証した調査で、「ジェネレーティブAIについての説明で、最も適切だと思う記述はどれですか?」という問いに対する回答結果です。「ミラクル」「役に立つ」「迷惑」「不要」「悪の権化」という選択肢はどうなんだというのは弊社ながら思うのですが、アメリカはポジティブな回答が46%だったことに対し、日本は75%と高い結果が出たんですね。
これも、日本人は「迷惑」「不要」を選ばなさそうなところもあると思うんですが、生成AIに関しては期待感があり、それが上昇幅にもつながっているのかなと捉えました。里村さん、いかがでしょう。
里村:そうですね。アメリカや欧米はAIというと著作権の話が出てくる一方、日本はまだそこまで理解が進んでいないんじゃないかなと思います。生成AIに関して、著作権に対するネガティブなイメージが欧米のほうが強いんじゃないかなと。個人情報の話も日本より欧米のほうが進んでいるといいますか、ルール化されていますしね。
圧倒的に時間短縮が可能に。生成AIの活用事例

――では、ここから本題である「生成AIは、企業価値を高めうるか」というお題でお話をしていければと思います。今回は4つの視点から考えてみたいと思っています。まずはお三方に、どういう取り組みを日頃されているのかをお伺いした上で、4つの視点でお話を進めていければと思います。
風間:Ubieでは主に2つの柱があります。1つはプロダクトにAIをどう活用するかという観点。もう1つは生産性をどう向上できるかという観点で、いろいろな検証をしています。これらを支える3つの観点として、生成AIの基礎技術検証、生成AIの各種アカウント整備、法律や政府・業界動向などを追いながらのリスク最小化があります。
事例の1つは、社内用ChatGPTツールによる生産性向上です。これのいいところは、社内用のため機密情報も入力できること、アカウント課金ではなく従量課金制なので、月額数万円~数十万円ぐらいで活用できているところで、現在200人以上が使っています。
他にも、Github Copilotの活用による生産性向上事例もあります。これはすごく便利で、コードを書くと自動で補完してくれるんですね。社内で全エンジニアに提供しているんですが、アンケートベースで平均40%が社内の生産性が効率的だと答えている、なくてはならないものとして活用が進んでいる事例です。
あとはCode interpreterやプラグインにも本当にさまざまな新しい技術が出てきていまして、Code interpreterですと、CSVをアップロードすると自動で分析してくれて、グラフ化もPythonのコード付きで出してくれます。プラグインでは、URLを投げてそこの情報をCSVで出してくださいという抽出も簡単にできるといった具合に、地味な業務効率につながっています。数週間かかるものが数時間でサクッとできたりしていますね。
あと1つ面白い事例は、BigQuery・LLMを使った検索意図分析の事例です。これはGoogleのLLMを使ったもので、Ubieが一般向けに提供している症状検索エンジンというサービスページにランディングしたユーザーが、どういう検索クエリで流入してきたのか、何を知りたいのかを分類するタスクにおいてBigQuery・LLMを活用すると。本当にすぐできるのでかなりびっくりしています。
例えば「肺炎について知りたい」というキーワードは「病気について」という目的に分類されますとか、「目黒区の病院」から入ってきた方は病院について知りたいといったところになってくるといった具合に、検索クエリのトレンドがわかるので、そこから評価すべきクエリがわかったりしています。
里村:LLMとBigQueryの掛け合わせはマーケティングの仕方が大きく変わるぐらいの可能性も出ると思いますね。検索意図がどういうものなのかを完全に分析してくれるので、あるワードできた人に与えるコンテンツを変えられたりもできるようになるのだと思います。これはすごいことです。
風間:おっしゃる通りだと思います。
――LLMを使わないと何十万件もあるものを短時間で分析するのは難しい。
風間:そうですね。数ヵ月レベルでかかるものが、BigQueryを使えば数日や数週間レベルで分析できました。
及川:弊社では「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」と掲げていろいろな事業をやっているんですが、今回はメディアやゲーム開発領域においての利用についてお話したいと思います。
生成AI以前から、デザイナーはAIによる恩恵を受けてきました。例えば写真の被写体の切り抜きですね。これは私がPhotoshopを使い始めた20年以上前には、さんざん悩んで1枚20分ぐらいかけて切り抜いていたような仕事なんですが、これが今は一発30秒くらいで終わる。
そんななか、生成AIが出てきて「どうしましょう」と考えているわけなんですが、弊社ではクリエイティブのガバナンスを利かせるための横軸の組織を作り、担当役員とクリエイティブ責任者がCCCを務め、方針を決めていっています。正直、クリエイティブ領域ではまだそんなに実例としてお伝えできることがないのが現状です。
デザイナーにとっては画像生成AIが肝なんですが、現状だとまだ完全に安全に使えるものがほぼないんですね。業務上の利用に関しては、ライセンス面で安全に利用できる保証が担保できていないとまずいので、法務と連携し、確認をしてOKだったらいいという取り決めになっています。
前提として、LLMに関しては間違いが含まれている前提で使うこと、画像生成AIにn関しては、生成されたものが著作権侵害の可能性をはらんでいると認識したうえで使うことが現状での肝だと思っています。AIで何かを生み出すことはすでにできますが、企業や事業として扱うのであれば、それぞれが社会的責任において活動しているスタンスを徹底することが必要かなと思います。
取り組みでは、アドビさんと以前から連携していまして、「Firefly」がリリースされたタイミングで、新卒研修に使わせていただきました。なぜ使いたかったかというと、今はクリエイティブな発想さえあれば、スキルがなくてもアウトプットできてしまう時代なので、そこでフレッシュな新卒がどうもの作りに向き合うのか、どういうプロセスで生み出していくのかを見たかったんです。
結果として、AIは便利ですが、誰が作っても同じ結果にはならないということがわかりました。何を作ろうとしているか、結果の良し悪しの判断をするのは人であることに変わりはないので、最終的なゴールまで引っ張っていく力が必要で、そこがクオリティに直結していくなと思っています。
最終的には、作るところ造形するところはAIに置き換えていき、人は「こっちをもっとやりたいのにな」というところに時間を使うという感じですね。作ることがゴールになってしまうと自分の仕事を取られてしまうことになるので難しいんですが。メンバーが1人増えている感覚で接するといいのかなと思います。

里村:私からは、アドビの「Firefly」の紹介を簡単にしたいと思います。初めに、我々が概念的に考えているのは、生成AIは副操縦士であるということです。AIは大きく2つのことができると思っていまして、1つは不必要なものを効率的にしていくこと。もう1つが必要なものを創造することで、効率化だけではなく、新しいアイディアをくれるものだと思っています。
人の役割は、構想や判断をするリーダーシップ、マネジメントです。本当にそれがいいのか悪いのかの判断は人でなければ下せませんし、そこまでAIができるようになると人がいなくてもよくなってしまうでしょう。このリーダーシップとマネジメントに関して、自分の会社や業界だとどのエリアならAIが輝けるのか、どこを任せたいのかを判断、管理していくことが求められていると思います。
「Firefly」の他との違いは、簡単に3つあります。1つは著作権ですね。契約次第ではありますが、もし訴訟が起きたら補償するとまで明言している著作権をクリアしているものになります。2つ目はクリエイターへの還元。3つ目はPhotoshopやillustratorなどからも使えるため、AIから出てきたものに自分のニュアンスやこだわりをすぐ加えられるようになっているという点です。
9月14日に一般公開されたので、誰でもお使いいただけます。限定的ではありますがフリー利用も可能なので、ぜひお使いいただきたいです。
表に出るプロダクト作りへの活用には慎重な姿勢。マネタイズの難しさも課題
――いろいろな事例がありましたが、活用アイディアはどう湧いているのでしょうか。
風間:社内勉強会などで生成AIの理解度を高めています。社内で熱狂的に生成AIが好きな人に使ってもらって、ユースケースを社内でお披露目していくという取り組みもしていますね。
及川:アドビさんに研修していただいているものもありつつ、社内だと私が生成AI好きなので、勝手に情報を集めてきてSlackに貼っています。それを見て反応を示す人がいたら、さらに深く調べていくという感じですね。
――生産性向上が実現したかどうかについて、KPIの持ち方はどうされているのでしょうか。
風間:数ヵ月間導入期間があり、ROIを検証していました。実はNotion AIも試したことがあったんですが、これはワークスペースにいるメンバー全員が課金になる形だったので、ROIの観点から一旦見送りになっています。
――2つ目、生成AI活用によるプロダクト・サービス価値の向上について、「Firefly」ローンチからの手ごたえなど、いかがでしょうか。
里村:利用いただいているお客様から向上したという話は聞きますが、まだテスティングモードという感覚で、どう使うのがベストなのか試行錯誤しているところだと思っています。うちもですが、大企業はセキュリティの話が出てきてスピード感が落ち、テストもなかなかできなかったりするんですよね。日本の大企業は生成AIにそこまで対応しきれていないのではという気がします。
及川:おっしゃる通りで、やはり慎重にはなるんですよね。どうしても取引先への影響範囲を考えた上で判断を下さないといけないので。ただ、明確に禁止もされていません。作ったものをプロダクトとして外に出すのはやめておこうとなっているんですが、アイディアの発散段階で、フリーの写真サイトを検索する感覚で生成AIを使っている感じです。デザイナーの肌感からすると、そうとう効率性向上に効果があると見えているんですが、数値化して検証するところは今やりかけている状態ですね。
風間:難しいのはマネタイズポイントで、精度が高いけど1回たたくと10円かかってしまう場合、toCサービスで100万人ぐらいユーザーがいると、月間1000万、5000万円がかかってしまうんですよね。じゃあ課金するかなど、どうマネタイズするのかを考えるのが難しいところです。
――3つ目は「生成AI活用のための組織づくり・採用方針」です。風間さん自身の体験を踏まえて、何が入社のポイントになるのかを伺えますか。
風間:私が入社した理由の1つはその会社の解くべき課題が面白いかどうかで、ヘルスケアでAI活用すると本当に多くの課題を解決できるなというところに魅力を感じて入りました。
及川:どういう方向でクリエイティブを使うのかを意思決定する点に対し、動ける人間を増やしていくというところで、リスキリングを考えています。採用に関しては、いわゆる従来の造形力に強みを持っている、たとえばデザイナーとは違う観点でクリエイティビティを測定しています。そういう人たちがフレームを考えなければいけないので、試しつつというのが正直なところですね。
――職種としてプロンプトエンジニアも出てきていますね。
及川:個人的には、プロンプトを叩いているのはインターフェースの過渡期だと思っていて、将来的には何も言わなくても推測して出してくれるのが未来像だと思っています。プロンプトエンジニアリングすると気を遣わずとも、自然に使えるようになっていくのかなと。
詳しい人をフォローし、最新情報をキャッチアップしつつ「まずは使う」ことが重要
――最後に、生成AIの活用の第一歩についてお伺いさせてください。
風間:やはり使ってみるところかなと思いますし、使っている方は発信してみることが重要かなと思います。私が今回こういう機会をいただいたのも発信したものを読んでいただけたからなので、そういう発信はすごく重要かなと。
及川:AI関連の発信をされている方はたくさんいるので、片端からフォローするのがいいでしょう。自分で使っているだけだと、世の中がどれぐらいのスピードで動いているのかつかみにくいので。日進月歩で変わっていて、1ヵ月くらいで全然違う状況になっていたりするので、そういうのを考えて発信してくれるところをフォローすれば、流れに追いつけると思います。
里村:専門性と汎用性みたいなところがあると思います。パッションを持っている人はアイディアが湧いて出てくるので、それをいかに周りに広めていける汎用性を持てるかという話だと思うんですよね。ですので、組織としては、専門性やパッションを持った人を採用し、オペレーションとしてその知識を広げる勉強会や社内コミュニケーションの場を作り上げるのが必要になってくるのではないでしょうか。
まとめ
技術の進化スピードが著しく速い生成AI。労働人口が減少し、限られたリソースで仕事の効率化を上げる必要があるなか、今回のセッションは、どうすれば自社で生成AIを活用できるのかを考えるヒントになったのではないでしょうか。
まず触れてみることで見えてくる可能性もあるでしょう。本記事を機に、「まずは使ってみる」という最初の一歩を踏み出してみてはいかがですか?

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