
2026-07-21
【後編】国内初のSOセカンダリーの実態ーHelpfeelが語る、発端からクロージングまでー
前編では、企業価値向上に向けて全社のインセンティブを揃えるために緻密に作り込まれた、HelpfeelさんのSO設計についてお伝えしました。後編では、このSO設計がどのようにして国内初のセカンダリー取引へと繋がっていったのかをご紹介します。発端となったニーズや既存株主との調整、クロージングまで。洛西さんと宮長さんに引き続きお話を伺いました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2027S0Q6A720C2000000/
発端は、上場後も見据えたSO発行のための枠取り
──今回のセカンダリー取引のきっかけを教えてください。
洛西:これまでお伝えした設計思想に基づくSOを、上場後を見据えて発行したかったのですが、既にSOの発行枠は足りなくなっていた状況でした。この枠をどう確保するかを検討したのが発端です。枠を空けるために、当初は会社が従業員のSOを取得することを検討していました。これが2025年の夏頃です。この検討のなかで、既存株主から「それなら自分たちで買い取れないか」という話が出てきて、セカンダリーにつながりました。
──上場後も見据えた資本政策や株式報酬の検討から、自然とセカンダリーにつながっていったのですね。
洛西:もう一つの背景として、創業初期から在籍している従業員のなかに、長くSOを保有し続けている方がいました。こうした方々に適切なタイミングで流動化の機会を提供できるなら、会社にとっても好ましいことだと考えました。
──会社と従業員それぞれにとって意義のある取り組みだったのですね。

スキーム概要と実行時の留意点
──今回のセカンダリー取引の概要について教えてください。
洛西:売り手は従業員で、買い手は複数の既存株主です。前編でお話しした税制改正への対応を経て、SOを行使可能な状態になっていましたので、行使後に取得した普通株式が取引の対象になっています。
──取引価格はどのように決まりましたか。
洛西:セカンダリー取引の前にミックスディール(既存株式の売却を含めた資金調達)を実行していたこともあり、そのときの価格も参考にしながら決まっていきました。比較的順調に進んだほうかと思います。
──初めての取引であり大変なこともあったかと思いますが、難しかったポイントはありますか。
洛西:証券会社への委託ですね。いわゆる租税特別措置法の「売委託」にあたるもので、税制適格要件を維持したまま今回の買い手に株式を取得してもらうには、証券会社を通す必要があります。最初は戸惑いましたが、結果的に証券会社にもスムーズに対応いただけて助かりました。
※編集注:「売委託」の詳細についてはこちらの記事も参照
──SO行使後の株式を引き取った既存株主にとっては、さらに新しいSOが発行されると希薄化しますよね。そこはどう調整されましたか。
宮長:VC等の既存株主が当社の取り組みを応援してくれたことが大きいです。今回新たに発行するSOは、これまでお話したように、業績連動・株価連動の条件がついた企業価値向上に直結する設計です。この設計がちゃんとしていないと無理だったと思います。
洛西:足下の希薄化も限定的ですし、想定されるシナリオにおいてもSOのベスティングは一部にとどまるため、希薄化は抑えられている点をお話ししました。
──理想的なインベスターリレーション(IR)ですね。
宮長:VCは上場時に卒業されるのが一般的ですが、今回我々が発行したSOは上場後の業績や株価も見据えたものになっており、両者にとってwin-winになったと思います。むしろ、VCに「なんだ、これくらいしか希薄化しないのか」と言われたりしました(笑)。
リハーサルを経て、気持ちを込めて伝えた社員説明
──社内への説明はどのように進められましたか。
宮長:社内への説明は入念に準備しましたね。洛西は何度もリハーサルをやってました。
洛西:想定社員を立てて練習したんですけど、ここだけの話ですが最初は「全然気持ちが伝わらない感じです」「淡々と説明していて何を言っているかわからない」って言われて(笑)。気持ちを込めて話すことを意識しました。
──説明を受けた従業員の皆さんの反応はどうでしたか。
宮長:ポジティブな反応が多かったです。「こんな機会をIPO前に提供してくれるなんていい会社だ!」といった声もいただきました。資本市場に対する解像度が高い社員は即座に意義を理解してくれました。一方で、正直よくわからないという社員がいたのも事実です。ただ、周囲の社員の反応を見ながら徐々に理解が広がっていったという流れでしたね。
──SOを売却して利益を得ると、退職してしまうリスクもあると一般的には指摘されます。そこはどうお考えですか。
宮長:現時点ではあまり課題感はないですね。今回の取り組みのポイントは、過去の貢献に報いた上で、次のフェーズに向けた新たなインセンティブを切り分けて設計しています。過去の成果をきちんと評価したうえで、これからの企業価値向上にも引き続きコミットしてもらえる制度にしているので、「利益を得たから終わり」ではなく、「次の挑戦につながる」仕組みになっていると考えています。
CXO・スタートアップ経営者へのメッセージ
──最後に、スタートアップでSOの設計に携わる経営者や担当者の方、あるいはSOを付与される側の役職員の方々にメッセージをお願いします。
宮長:SOは、従業員が資本市場と向き合って仕事をすることでリターンが出る唯一のインセンティブ機会でもあるんです。これをうまく活用することで、経営者として必要な視座の獲得にもつながります。もちろん既存株主や役職員などとの調整も必要ですが、資本市場を向いていればちゃんとwin-winにできると思います。これから私たちがしっかり成長できるか次第ですが、もしうまくいったらぜひ参考にしてほしいなと思います。
洛西:アメリカにいた時は、SOで潤っている人が周りに普通にいたんです。日本だと、そういった体験がない。このギャップを埋めたいと思っていたので、今回のセカンダリーを通じて上場エグジット以外でも売却の体験を作れたのは良かったなと思います。

──洛西さん、宮長さん、長時間にわたりありがとうございました。
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※本記事は、株式会社スマートラウンドが運営するメディアにおいて、スタートアップエコシステムにおける先進事例として株式会社Helpfeelに取材・掲載したものです。株式会社スマートラウンドおよびその子会社は、本記事で紹介した株式会社Helpfeelのセカンダリー取引には一切関与しておりません。
※本稿はあくまでも市場のトレンドについて記述したものであり、個々の銘柄に関する投資のアドバイスや特定の取引を勧誘するものではありません。
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