
2024-12-10
【弁護士が解説!】押さえておきたいスタートアップの取締役会の重要ポイント(セミナーレポート 後編)
会社の業務執行についての決定を行う「取締役会」。
開催が必要なことは知りつつも、具体的な開催のタイミング にどのような時に開催するのかや、議事録の作成方法など不明点も多いのではないでしょうか。
今回は、2024年9月6日に弁護士の五十嵐先生をお招きして開催したセミナー「取締役会の重要ポイント」から、取締役会開催における注意点や具体的なポイントを、前後編に分けてお届けします。
後編にあたる本記事では、取締役会に不慣れな会社がつまづきやすいポイントのうち「取締役会の議事録作成」に焦点を当て、取締役会議事録に記載すべき事項や文例について説明してまいります。
以下に当てはまる方には、特におすすめの内容となっておりますので、ぜひご覧ください。
・取締役会議事録に何を記載すべきか分からない方
・議事録作成の参考となる文例を探している方
・議事録作成の具体的なポイントを知りたい方
※前編の記事はこちらからご覧いただけます!
https://jp.smartround.com/column/boarding_meeting_points1
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五十嵐 将志さんプロフィール
弁護士。弁護士法人アインザッツ( https://einsatz.law/ )代表。中央省庁法務エキスパート兼務。1986年生。慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻、早稲田大学大学院法務研究科卒業。
都内のスタートアップ法務を専門とするブティック系法律事務所での勤務を皮切りに、独立開業後も一貫してスタートアップ法務に取り組む。2021年には地方発のベンチャーキャピタル設立に携わり、法務・行政手続の全てを担当した。2022年からはスタートアップにメンバーとしても参画。
スタートアップの資金調達やベンチャーキャピタルの組成・運営に明るい。
注意事項
・本コラムは法的助言を目的とするものではありません。個別の案件については、専門家に各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めてください。
・本コラムは日本における一般的なスタートアップの実務を想定して記載しています。ここでいうスタートアップとは上場前の、非公開企業でイノベーションにより急成長を目指す社歴の浅い株式会社を想定しています。
・会社法の規定の一部は、各会社の定款で会社法の内容とは異なる内容を定めることを許容しています。株主総会を実施する時は、必ず自社の定款をご参照ください。
・本コラムは2024年9月時点の法令に基づいて作成されています。取締役会に不慣れな会社がつまずく「議事録の作成方法」
取締役会を開催したら、記録しなければならないのが「議事録」です。
会社法でも定められているため、「書き方にも何か決まりがあるのでは」「なんだか難しそう」と思われている方も多いのではないでしょうか。
スタートアップの皆様をサポートする中で、議事録の作成が必要なことは把握していても実際に何を書いたら良いのか分からないと迷われている方が結構いらっしゃいます。
このお悩みは、議事録を「何のために書いているか」意識することで解消できます。
ここからは、「議事録を書く意味」をご説明したあと、法的に求められる記載事項や実際に使える文例などをご紹介してまいります。
なぜ取締役会議事録を書くのか
取締役会議事録を書く意味は、大きく2つあります。
①証拠を残す
役員が義務を果たしたという証拠として記録すること。
②記録を残す
議事の明瞭化・明確化のために記録すること。
特に重要なのは、①の「役員が義務を果たしたという証拠の記録」です。
では具体的にどのような事を記録すればいいのでしょうか。ポイントは大きく3つに分けられます。詳しく見ていきましょう。

(1)法律上決めなければならないことを決めたことの記録
こちらは会社法に則って判断をすれば良いので、比較的分かりやすい部分です。
(2)反対者の記録
取締役は会社に対し、善管注意義務を負っています。
会社法では、取締役は会社と雇用関係ではなく、委任関係にあると定められています(会330条)。この委任を受けた時に発生するのが民法644条の善管注意義務です。取締役は経営者として払うべき注意を払い、誠実に職務を行う義務が生じます。取締役会においても同様で、会社に対して損害を与えるような議案に対しては反対しなければなりません。
ここで反対すべき議案に対して反対をしなかった場合、取締役は善管注意義務に違反したとして、会社か株主から訴えられる可能性もあります。
こうした事態に備えて、取締役の誰がどの議案に反対したかという記録を残しておく必要があります。
(3)報告(相互監視)の記録
先ほどお話しした善管注意義務の観点からも、役員は会社に対して損害を与え得る事象を観測したら、それを報告する義務があります。
なぜなら、「取締役の暴走を止めるための決議事項」を議論し、取締役が相互監視を行った記録を残す必要があるためです(取締役の暴走に関しては、前編の「取締役会の決議事項」をご参照ください)。
取締役会議事録は、株主のための記録と思われることも多いですが、重要なのは取締役や監査役が責任追及されないようにするためという観点です。だからこそ、議事録に記録を残す必要があると考えてもらえればと思います。
一方、上記観点以外の議題で、単なる明確化・明瞭化が目的の場合は、自由に作文いただいて差し支えありません。
【Tips】議事録作成における生成AIの活用について
最近よく活用されている「生成AIによる議事録作成ツール」は会社法的に有効なのか、という論点です。
私自身もよくお世話になっていますが、会社法上有効になるかという観点では、不足する部分もあるのではないかと考えています。
例えば「◯◯に対しての議論がなされた」という記録だけでは、反対意見を出した取締役や、その背景・理由まではカバーできません。
この場合、証拠を残し、取締役や監査役が責任追及されないための議事録という意味では不十分となり、「役員が義務を果たしたという記録」にはなり得ません。
後々の資金調達やM&Aにおけるデュー・デリジェンスであったり、上場準備の段階でつまずく可能性は多いにあります。
しかし、単なる明確化・明瞭化が目的の場合は生成AIを用いて議事録を作成することは問題にはならないと思います。▼取締役会を楽にする!smartround概要資料のダウンロードはこちら
議事録の記載事項とは
議事録に記載する内容については、「取締役会の運営について(会369条)」及び「取締役会の議事録について(会社則101条)」に定められています。
上記のうち、必要な記載事項をまとめたものがこちらです。

①開催日時・場所
取締役会を開催した日時、場所を正確に記載します。
③(テレビ会議等による場合)出席の方法
外部役員は特に、オンラインでの出席が多いのではないでしょうか。
オフライン以外の方法で出席する役員がいた場合は、出席方法の詳細と、通信状況に問題がなかった旨の記録が必要になります。
④議長の氏名
取締役会の議長の氏名を正確に記載します。
⑤議事の経過と記録
役員が義務を果たしたという証拠を記録する部分になります。
議案に対する反対者や、報告(相互監視)の詳細を記載します。
作成にあたってはある程度知識が必要になります。おすすめしたいのは、信頼できる文例を探し、状況に合わせてアレンジするやり方です。
議事録作成には絶対的な正解はなく、契約書のような論理的な判断基準もありません。そのため、まずは文例を参考に基本的な記載方法を理解することが重要です。
ただし、多くの文例を参照すると学習の負担が増え、また様々な文例の組み合わせは文体や用語の統一性を損なう恐れがあります。文例だけではすべての内容をカバーできないため、状況に応じて作文する技術も必要となります。
本項目の記載内容は重要事項となるため、判断に迷う場合は専門家への相談をおすすめします。
【参考書籍】文例などで使える書籍の紹介
弁護士の私もよく参照しているのが、以下の2冊です。
・「会社議事録の作り方」(森・濱田松本法律事務所 編集 松井秀樹 弁護士著 中央経済社出版)
洗練された表現で多くの文例が掲載されており、専門家も参考にしている書籍です。
・「取締役・執行役ハンドブック」(中村直人 編著 商事法務出版)
掲載されている文例はそれほど多くありませんが、取締役や取締役会についての基本的な考え方がコンパクトにまとまっている良著です。
⑦出席取締役・出席監査役の署名または押印
株主総会と異なり、取締役会には出席義務があります。会社法では、出席した証明として出席者の署名または押印が義務付けられています(会369条3項)。
一般的に、ほとんどの企業は押印もしくは電子署名で対応しています。しかし、後で対応しようと思っているうちに記録を失念してしまい、役員の退任後などに困ってしまうというケースもよく見受けられます。運営側は慌ただしくなりがちなタイミングですが、取締役会の開催直後に都度対応しておきましょう。
参加者アンケート①押印と電子署名ではどちらが多いのか
実際、出席取締役・出席監査役の署名または押印ではどちらで対応することが多いのでしょうか。セミナーにご参加いただいた皆様に伺ってみました。

電子署名が最も多く、押印、署名と続いています。押印の割合が意外に多いです。
参加者アンケート①よく使われている電子署名サービスは?
最も多かった電子署名サービスについて、どのサービスを使っているかも質問してみました。

こちらは「クラウドサイン」を使われている方が多いですね。
その他のツールも多く、色々比較検討された上で導入されていることが伺えます。
smartroundの一ファンとしては、ぜひ「取締役会smartround」をおすすめさせてください。電子署名機能に加えて、招集メールの送付や、場所・日時を反映した議事録の自動生成、格納にも対応しています。取締役会業務を効率化したい、IPOに向けて記録をきちんと管理したいという皆様はぜひ一度お話を聞いてみてください。
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書面決議について
取締役会も所定の条件を満たせば、株主総会と同様に「書面決議」が可能です。書面決議を成立させるには、
①取締役全員の同意が得られていること
②監査役から異議が述べられていないことの証明ができること
の2点を満たす必要があります。これまで書面決議は、取締役会の内容を知るタイミングや、異議を述べられる期間が不明瞭になりやすいことから、②の監査役からの異議がないことの証明が難しく、一般的なやり方ではありませんでした。
しかし、上記の部分を明確にして証明を残しやすいよう設計されたツールが普及しつつあり、書面決議を取り入れる企業も増えています。
ですが、ツールを使っているからといって安心せずに、曖昧な部分が残ってしまわないよう、慎重に対応することが大切です。
まとめ
ここまで前編・後編にわたり、取締役会でつまずきやすいポイントを2つ、ご紹介しました。
「①取締役会の開催を忘れる」
「②議事録の作成方法」
「取締役会を開催するタイミング」で最も忘れられやすいのは、取締役の暴走を止めるための決議事項=ブレーキの決議事項です。さらに、その中でもおさえておくべき決議事項のタイプ3つをご紹介しました。
どんな決議事項がブレーキタイプにあたるのか確認し、今後の業務時に意識しておけるようにしておけば、忘れる確率は減らせます。全て暗記するのではなく、必要に応じて確認できるようにしておくことが重要です。
また、「議事録作成方法の概要」として、議事録を作成する背景についてもお伝えしてきました。まずは雛形や文例、そしてsmartroundのようなツールをうまく使ってください。あるものを活用した上で、「役員が義務を果たしたという証拠の記録」を作成していくというスタンスで対応いただければと思います。
「証拠の記録」というとイメージが湧きにくいかもしれませんが、株主に聞かれた時に詳細や背景を説明できるようなものを用意するつもりで作成してみてください。
また、具体的な記載の仕方については、まずは実際に文例集を見ながら、まず書いてみることが大切になります。
本日お話ししたことが、皆様のお役に立てば幸いです。取締役会は会社経営にも影響の大きい重要な機関なので、ご不明点等が出てきたらぜひ専門家の知見も活用しつつ、運用していっていただければと思います。
ありがとうございました。
五十嵐先生、ありがとうございました!
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