「起業家人生は時価総額では測れない。現役COOの経験を活かした経営支援と人生支援を」TRUST SMITH & CAPITAL 安藤 奨馬さん

2025-06-18

  • インタビュー

起業家人生は時価総額では測れない。現役COOの経験を活かした経営支援と人生支援を

TRUST SMITH & CAPITAL 安藤奨馬さん

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Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。

今回はTRUST SMITH & CAPITALの安藤 奨馬さんにお話を聞きました。

安藤奨馬
TRUST SMITH & CAPITAL代表
京都大学工学研究科を卒業後、学生時代に2つのスタートアップを経験。新卒でエンタメ会社に就職するも数ヶ月で退職し、創業期のTRUST SMITHに副業として参画。TRUST SMITHではCOOとして事業開発・資金調達を牽引。その中でRENATUS ROBOTICSの立ち上げに関わりCSO/COOとして事業を成長させ、2024年のIVS LAUNCH PADで優勝。現在はTRUST SMITH & CAPITALの代表パートナーとして、シード特化VC兼インキュベーターとして活動している。

投資条件や投資実績がわかる!安藤奨馬さんの投資家プロフィールはこちら👇(クリックするとプロフィールを閲覧できます。)

まずは、簡単に自己紹介をお願いします!

TRUST SMITH & CAPITALの安藤です。シードステージを中心に投資するVCをやっています。また、物流ロボットの自動走行を手がけるRENATUS ROBOTICSでCOOも務めており、スタートアップ側としても事業家として活動しています。

どんな学生時代でしたか?

私は愛知県の田舎で生まれ育った野球少年でした。父が野球の監督を務める野球一家で、3人兄弟全員が野球をしていて、私自身も9年間野球に打ち込んでいました。中学・高校時代は公立の進学校に通い、現役で東大を目指しましたが合格できず浪人したのですが、この浪人期間が人生について考える初めての時間となりました。最終的に「建築を学びたい」という気持ちが強くなり、京都大学の建築学科に進学しました。

京都大学では研究で建築学会の優秀賞を受賞するなど充実した学生生活を送りました。特に卒論テーマはユニークで、ベトナムの伝統建築における温熱環境の研究のはずが、人間の体感温度を理解するために、最終的には「ベトナム人のお尻の穴の温度」にまで研究対象を深掘りしたんです!これは私のスタイルである「課題の根源から解像度を上げていく」アプローチの一例だと思います。

また、大学時代に2つのスモールビジネスを立ち上げました。漠然と「未来に繋がることをしたい」「自己理解や社会の理解を深めたい」と思い、まずは自分で何かをやってみる経験が大事だと考えたからです。

最初の事業は、理系学生のキャリアに関するものでした。自分自身、普通に大学院に行って専門職に就職するという規定路線に疑問を感じていたんです。就活レースに載せられているのではないかと。そこを変えるために、東大の理系学生と協力して事業を始めました。最初は学生団体として活動し、その後私が法人化しました。

もう一つの事業はマーケティング関連でした。大学の授業がきっかけとなり、クリエイティブや空間に関心があったので、そのような分野での事業を展開しました。このビジネス経験が後の建築学科の学びと相まって「空間を通じて人々を笑顔にする」という興味につながっていきました。

これまでのキャリアを聞かせてください!

大学卒業後、新卒でオリエンタルランドに入社しました。クリエイティブや空間を通して多くの人を笑顔にできる仕事がしたいと思ったからです。しかし、入社後わずか7ヶ月で退職しました。大手ゆえ裁量がないことは分かっていたのですが、自分でコントロールできる範囲が少なすぎることが自分にとって想像以上にしんどいのだと、この時はっきりと気づきました。

退職後、Twitter(現X)で次の機会を探していたところ、TRUST SMITHが創業3ヶ月目でCOO候補を募集しているのを見つけました。当時は、創業者の大澤と共同創業者の2人しかいないような初期フェーズでした。

TRUST SMITHの魅力は、創業者の大澤が人間として面白そうだと思ったことと、AIなど先端技術の領域をやっていることでした。でも決定的な理由は、人数が少なくて自分が多くの裁量を持って動けるということでしたね。1日でも早くジョインして動かしていきたいという思いで入りました。

TRUST SMITHに入ってからは本当にいろんなことをやりました。最初は「何もできないので何でもやります」というスタンスで、営業資料を作るところから始めました。基本的にはエンジニアリング開発以外はほぼ全部担当していました。途中から営業のフロントに立つ機会は減りましたが、必要に応じて出るという形で未だにプロダクト業務以外は幅広く担当しています。

安藤さんが投資家になったきっかけは何ですか?

VCの構想自体は、2021年頃からTRUST SMITH内部であったんです。発起人は代表の大澤で、TRUST SMITHが実現してきた「マーケットイン」のアプローチには再現性があるので、投資という形でより多くのビジネスに貢献しようと。ただこのタイミングではファンドレイズをちょっと始めたものの本腰を入れる余裕がなく、投資家に声をかけた程度で終わってしまいました。改めて2024年末にファンドレイズを始めたのは私の意思です。

投資という形にした理由は、支援だけだとリソースの限界があるからです。お金を投げ込むだけではなく、LPからお金を集めてきてそれをスタートアップに還元する形でスタートアップを支援する方が、動かせるリソースが多いと考えました。

ファンドレイズにあたっては、IVS LAUNCHPADでの優勝が効いたと思っています。VCとしてファンドを立ち上げようとすると、人のトラックレコードに依存せざるを得ない部分がありますよね。特に1号ファンドはそうです。そのときにわかりやすい証明できるものが必要で、LAUNCHPADの優勝は「この人たちにお金を預けて大丈夫だ」というわかりやすい実績として役立ちました。

(写真:IVS 2024のLAUNCHPADにて優勝)

改めて、IVS LAUNCHPADでの優勝、おめでとうございました!安藤さんから見たIVSの攻略法を聞いてみたいです。

ありがとうございます。

IVSへの参加は、LAUNCHPADに出なくてもスタートアップにとって大変価値のあることだと思っています。

メリットは4点あり、1つ目が採用、2つ目が資金調達、3つ目がパートナー・顧客との営業活動、4つ目が楽しさです。特に4つ目の「楽しさ」は重要です。起業家人生は時価総額だけじゃないと思っているので。

参加のメリットを最大限に享受するためには、目的とKPIを明確にすることが大切です。例えば採用なら「何人採用します」「このポジションの人を採用しに行きます」とか、資金調達であれば「何人のVCと名刺交換して、何人のVCと面談を組む」とか、シナジーのあるVCを事前にリサーチしてから行くなど。

私自身、昨年末の段階ではファンドレイズを全く意識せず、シンプルにRENATUS ROBOTICSの資金調達のためにIVSに参加しました。結果的に、その後すぐに資金調達が決まり、理想的なファイナンスになりました。「資金調達をする」という確固たる目的のもと参加したことが功を奏したと思っているので、目的とKPIはぜひ考えて行くのをおすすめします。

1万人を超えるスタートアップ関係者が一堂に会する機会は他にないので、ただ行くだけではもったいない。皆薄々勘づいていると思いますが、オンラインで完結できてしまうことも多いこの時代だからこそ「会う」ことで得られるものは非常に多く、大きな価値があるので、ぜひこの機会を最大限に活かして欲しいと思います。

なるほど!TRUST SMITH & CAPITALの話に戻りますが、どのような企業に投資していますか?

私たちは主にPre-Seed(起業前)からSeed(起業後〜資金調達前)のフェーズに注力しています。投資領域としては、「巨大産業×テクノロジー」によりユニコーンやデカコーンを狙える分野に積極的に投資しています。

具体的には、AI・アルゴリズム、ロボティクス、脱炭素・気候変動・環境エネルギー、宇宙、製造業、物流業、不動産・建設、防衛テックなどが中心です。1社あたり1,000〜5,000万円の投資を行い、リード投資を中心としています。

投資先との関わり方

基本的には相手次第でほぼ完全なハンズイフ型です。こちらから介入はほぼせず、逆に求められたことは全部やるというスタイルを取っています。例えば定例ミーティングも相手の希望に完全に合わせていて、欲しい人にはするし、いらない人にはしません。

私自身、RENATUS ROBOTICS incの創業者兼COOとして、また東大発AIベンチャーTRUST SMITHグループのCOOとして、個性溢れるCEOと共にAI・ディープテック・ブロックチェーン領域で累計7法人の事業立ち上げを経験してきました。その経験を活かし、投資先に対して「CEOの妻」として、自分にしか提供できないようなユニークな価値を創造することをお約束しています。

(写真:投資先と展示会にて)

具体的に私たちが提供する支援は、大きく「経営支援」と「人生支援」の2つに分けられます。

経営支援では、事業計画・資本政策・プロダクトロードマップの策定から、営業・Go To Market戦略の策定と実行、採用支援(CXOクラスの紹介や採用ワークフローの構築)、大企業とのアライアンス・知財戦略の策定、人事戦略の策定(組織図設計・人事評価制度の策定・Company Deck作成・MVV策定)などを行います。

また、広報・マーケティング支援、次ラウンド以降のエクイティ・ファイナンス支援(投資家の紹介・資金調達の商談同行)、デット・ファイナンス支援(融資・RBF・プロジェクト・ファイナンス・Crypto調達)、補助金申請(NEDO・ものづくり補助金など)のサポートも行っています。

さらに、ピッチコンテストの必勝法伝授(スライド作成・トークスクリプト作成・話し方改革)、アクセラレーターの活用戦略の検討、バックオフィス体制の構築支援(会計・経理・労務・法務・庶務など)など、シリーズAまでに必要な経営に関するあらゆるサポートを提供しています。

人生支援も提供しているのは、起業家が幸せかどうかが一番大事だと思っているからです。会社の方向性を決めていく上でも、結局社長のモチベーションの方向にしか会社は動いていきません。そこに正直でないと、後からねじれが生じて進まなくなることがあります。社長の人生をどうしていきたいか、そこに寄り添うのが一番フェアなアプローチだと考えています。

例えば支援の一つである「結婚やパートナー探し」。これは本当に重要な話で、会社の成長率がどう変化したかよりも生涯のパートナーとの関係の方がずっと重要なファクターなのに、多くの起業家は会社のことに集中するあまり、気づいたら年を取ってしまったというケースが見られます。

実際、私のまわりには20代半ばの男性経営者が多いのですが、「早く結婚したい」と言いながらもアクションしていない人が多いです。スタートアップのしがらみに囚われすぎず、フラットに人生を考えることが大切だと思います。

(写真:運営するデカコーンハウス)

どんな起業家に魅力を感じますか?

魅力を感じる起業家の特徴で最も重要なのは、会社のやりたいことと起業家本人の方向性が合致してること、つまり「会社を伸ばすことが起業家個人にとっても幸せである」と本人の中で腹落ちしていることです。

起業家と面談していると、最初は「ロボットを通じて物流の人手不足を解消したい」など建前的な理由を言われることが多いですが、そういうことよりも、本当に何のためにこの会社をやっているのか、あなたは何のためにやっているのかを聞きたい。お金の話であれば「いくら必要なのか」「お金がなかったらどうするのか」など、いろいろと掘り下げて話します。私自身のことも開示しながら「あなたはどうですか」と問いかけると、意外と早く本音で話してくれるようになります。

私は、強制することは絶対にしたくないんです。自分自身もやりたくないことを強制されるのが嫌いで、パフォーマンスも出にくいと感じています。息をするように自然にできることをしている方が絶対にパフォーマンスが出る。なのでそこを最重要視しています。

他にも「一緒にやりたいと感じるかどうか」も大切です。感覚的な部分もありますが「他人のことを考えられない人」とは難しいと感じますね。ただ経営者には時に厚かましさも必要ですから、その兼ね合いが難しいところです。許せる範囲での厚かましさ、いわば「許されるかわいさ」があるかどうかも一つのポイントかもしれません。

ご自身の今後の展望は?

まず私個人としては、物流などの領域で培った課題感から「こういう事業があったら面白いのではないか」というアイデアがいくつかあります。それをVCという形でも実現していきたいですね。

お金を投げ込むだけなら他のVCも得意ですから、そうでないことをしていく必要があると思っています。投資しつつ、共同創業のような形でしっかり事業に関わっていくスタイルを取りたいです。もちろん全ての案件でそれをやると体が持ちませんが、なるべくそういう形で関わっていきたいと考えています。

RENATUS ROBOTICSに関しては現在も継続して関わっていく予定ですが、もっとできる人がいると思うので「後継者募集中」という気持ちもありますね。

最後に、起業家へのメッセージをお願いします!

基本的に全ての起業家の方とお話したいと思っていますので、どんな方でも気軽にご連絡いただけると嬉しいです。起業されている方だけでなく、起業を考えている方、そもそも起業した方がいいかわからず相談したい方も含めて、ぜひお話しましょう。

X(旧Twitter)のDMが一番連絡が取りやすいと思います。整理されていない質問でも全然構いません。お気軽にどうぞ!

また、インターン生も募集しています。基本的には3ヶ月で卒業してもらうというスタイルを取っています。インターンは将来起業したい人か将来VCファンドをやりたい人のみ受け入れており、業務の管理などは一切せず、目標だけ決めて「頑張ってください」というスタイルです。起業家の卵であればそれで動けるはずですし、そうでなければそもそも起業してもうまくいかないでしょう。いろんな企業のアイディアを聞いたり、自由に面談をしたりと、かなり自由にやってもらっています。こちらもお気軽にご連絡ください!

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