
2025-05-09
インタビュー
スタートアップと『本質のイノベーション』を起こし、子どもが就職したくなる新しい産業を生み出したい
東芝テック株式会社 石井達也さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回は東芝テック株式会社の石井達也さんにお話を聞きました。
石井 達也
東芝テック株式会社 経営企画部 CVC室 パートナー
2010年カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社(2015年グループ会社のCCCマーケティングホールディングスに出向)。社長室、経営企画室にて中期計画の策定やデータビジネス領域における協業プロジェクトの推進に従事した後、プロジェクトマネージャーとしてM&Aやスタートアップ投資に携わる。2022年10月に東芝テックに入社し、CVC推進室にて投資案件の実行を担当する傍ら、中期計画の策定や新規事業創出のための戦略策定を行う。投資条件や投資実績がわかる!石井達也さんの投資家プロフィールはこちら👇(クリックするとプロフィールを閲覧できます。)
まずは、石井さんについて教えてください!
東芝テックの石井です。
私は高校生の頃から自由奔放で、新しいことに挑戦するマインドが強かったです。自分だけでなく、みんなにとっても良い環境であってほしいという思いから生徒会長に立候補し、いろいろなルールを作ったり新しい部活動を作ったりするような子どもでした。
エンタメとコンテンツが好きだったことから、TSUTAYAの国内外での拡大に貢献したいという強い思いを持ち、2010年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に新卒入社しました。入社2年目でCCCの歴代最年少店長として世田谷区のTSUTAYAで店長を務め、実績を積んでいきました。今となっては懐かしいですね。
その後、社長室の経営戦略部に異動し、大手企業とのM&Aや資本業務提携のプロジェクトマネジメントを担当しました。2015年にCCCがホールディングス化するタイミングで、データドリブンの時代が来ると考え、Tポイント(現Vポイント)の出資マーケティング部門に異動しました。
2017年からはCCCの社長室で社内文化の醸成やオープンイノベーション推進のプロジェクト責任者として、スタートアップへの出資やM&Aなどの活動に携わりました。そして2022年10月に東芝テックに転職し、現在はCVCキャピタリストとして投資先の探索、投資実行責任者とビジネスデベロップメントのディールマネジメントに従事しています。
石井さんが投資家になったきっかけは何ですか?
実は自分のことをキャピタリストだとあまり思っていないんですよね。結果としてキャピタリストになっただけというか。
例えば、2017年にオープンイノベーション推進の責任者になったのは、製品ライフサイクルが短くなる中で、お客さんに価値を提供するためには自社の努力だけでどうにかするには限界があると感じたからです。オープンイノベーション推進の中で一番合っていた仕事が、TSUTAYAの店舗責任者としてのP/L管理の経験や経営戦略部門でのM&A・資本業務提携で培った経験を活かせるキャピタリストだった、という感じです。
常に「いろんな人とおもしろいことをしたい!」という思いが核としてあり、その中で自分のキャリアを含めて一番得意なことが投資だったというだけ、と自分では捉えています。
CVCに移ってからも、やること自体はあまり変わっていません。目の前のスタートアップと一緒に本質と向き合い、世の中に求められているものを考えて提供するという役割の一部を担っているだけです。
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
東芝テックの強みであるPOSシステムを中心に、小売業界に関連する企業に投資しています。ただ、小売業だけでのイノベーションだけでは大きなインパクトにならないので、サプライチェーンの上流下流も視野に入れています。リアルだけでなくオンライン側もしっかりと繋いでいけるよう、コマース領域を広く見ています。
また、従来の「仕入れて販売する」だけのビジネスモデルだけでなく、新しいビジネスモデルを構築している企業にも投資しています。例えば、ファーストパーティーデータ(編注:第三者を経由せず、企業が自社で収集したデータ)をメーカーが活用できる形で提供する企業や、リアル店舗のスペースをオンラインで展開するブランドのポップアップ出店に活用するソリューションを提供する企業などです。
投資フェーズとしては、シリーズA〜Bが中心ですが、将来性を感じるシード企業や、資本業務提携の可能性が高いレイターステージの企業にも投資しています。
また、東芝テックは売上の半分以上が海外であり、グローバルでのシェアも大きいため、国内だけでなく海外の案件にも積極的に投資を行なっています。東芝テックのCVCでは、アメリカにも1名キャピタリストが駐在し、案件の割合としては日本と海外で半々くらいです。
CVCとして戦略的シナジーとフィナンシャルリターンの両方を目指していますが、どちらかというと戦略重視の案件が多いです。ただ、CVCの活動を持続させるためには、シナジーがなくてもリターンが出るような案件も必要だと考えています。

(写真:CVC勉強会のファシリーターを務める石井さん)
投資先との関わり方としては、仲良くなるだけでは意味がないので、戦略的な打ち合わせを頻繁に行っています。私の場合は担当している投資先と月1回、1on1ミーティングを必ず実施しています。逆に飲み会はほとんどやりません。
コミュニケーションは量より質を重視しています。忙しい中でお互いの時間を取るものなので、実りのあるものにすることを意識しています。ポジティブな内容なら5分で終わることもありますが、ネガティブな内容や東芝テックのリソースを活用できることがあれば、しっかり時間をかけて対応します。
また、スタートアップ支援として、展示会への出展サポートも行っています。例えば「リテールテックJAPAN」という大きな展示会や全国支社が主催する展示会では、東芝テックのブースの一部を出資先に提供し、東芝テックの顧客を中心とした小売業界の関係者との接点を作る機会を設けています。このような取り組みを通じて、地方のスーパーやドラッグストアなど、通常であればアプローチが難しい企業との接点作りも支援しています。
東芝テックのユニークな点として、CVCチーム内にビジネスデベロップメント・セールスマーケティング・PRブランディング担当者を配置していることが挙げられます。CVCは13名いますが、キャピタリストは4名だけで、残りの多くは出資後、事業部とスタートアップの間に立って伴走したり、スタートアップの支援をしたりするメンバーです。
また、プロトタイプ開発などのための予算も持っており、人と予算の両面から継続的に新しい価値を探求できる体制を整えています。

(写真:イベント登壇)
魅力を感じる起業家はどのような人ですか?
私が魅力を感じる起業家には二つのタイプがあります。一つは、「よくここを見つけたな」という優れた着眼点を持ち、小さな工夫で大きな付加価値を生み出せる人です。高度なテクノロジーである必要はないと考えています。
もう一つは、強い思いを持ちながらも柔軟に対応できる人です。強い思いは大切ですが、それに固執しすぎると足を引っ張られて失敗することもあります。未来を見据えて、強い信念は残しつつも柔軟にピボットできる人が素晴らしいと思います。漫画『バガボンド』で宮本武蔵が「負けじゃねえ 勝ちへの途中!!」と言ったように、ピボットすることは負けではなく、より良い未来を作るための過程だと考えられる人は応援したくなります。
投資の際には、「もしこうなったらどうしますか?」という意地悪な質問をすることがあります。「うちは絶対大丈夫です」という答えだと少し不安になりますが、「もしこうなったらこういう対応も考えていますが、今のプロダクトならこのままでいけます」と理由をきちんと説明できる人には安心感があります。

(写真:VC/CVCの仲良しの皆さんと)
今後の展望をお聞かせください!
東芝テックのCVCとしては「選ばれるCVC」になることを目指しています。CVCの数も増えていますし、いわゆる独立系のVCとも差別化して異なる戦い方をする必要があります。スタートアップが求めるのはエクイティだけでなく事業アセットだと思うので、それを最大限活かせる体制や仕組みを作ることを意識しています。
また、キャピタリスト個人のプレゼンスを上げて、スタートアップの方に選んでもらえる確率を高めることも大切にしています。業界は狭いので、下品な行動をするとすぐに評判が広まってしまいます。当たり前ではありますが、出資を断る場合でも丁寧なフィードバックを行うなど、常にスタートアップへのリスペクトが伝わるような行動を心がけています。
個人的には「本質のイノベーション」をやっていきたいです。小売領域に特化したイノベーションも大事ですが、それだけでは大きなインパクトにはなりません。サプライチェーン全体を見て、物流会社などの様々な企業、そしてソリューションを提供するスタートアップが規模を問わず、連携して新しい事業を作ることが本当のイノベーションだと考えています。
そのために、事業会社とスタートアップが出会う場を作るイベントを開催したり、CVC同士の交流会を開いたりしています。これらの活動は自己満足で終わらせず、CVCが起こすイノベーションが日本経済に大きなインパクトを与え、厳しい経済環境となりつつある日本に新しい産業を生み出すことを目指しています。そして、そうした新しい産業に自分の子どもが就職できるような未来を作りたいと考えています。

(写真:お子さんと)
最後に、スタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
私たちは「選ばれるCVC」を目指して、強い思いを持って活動しています。まだまだ至らない部分もありますが、ぜひいろいろとお話をさせていただきたいと思っています。いつでもどこでもお声がけください。
私は日本の未来や将来を作るスタートアップの皆さんを心の底から応援したいと思い、キャピタリストという立場を選びました。直接的に出資という形で関わりがない企業様でも、ずっと応援しています。
また、CVCの活動についても積極的に共有していきたいと思っています。設立間もないCVCの方々に対しても、「教える」というスタンスではなく、私たちの経験を「共有する」という形で、日本のCVCエコシステム全体が良くなるよう貢献していきたいと考えています。

(写真:CVC交流会にて)
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