
2024-08-08
イベントレポート
スタートアップ×VCの最強の経営パートナーとしての共創戦略とは?
IVS2024 KYOTO セッションレポート
2024年7月4日(木)~ 6日(土)に開催された国内最大規模のスタートアップカンファレンス「IVS2024 KYOTO」。
本記事では、「スタートアップ×VCの共創戦略 最強パートナーの選び方」をテーマに、Tebiki代表取締役CEOの貴山敬氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの今野穣氏、STRIVE代表パートナーの堤達生氏、YOUTRUST代表取締役CEO岩崎由夏氏が登壇したセッションの様子の一部をお届けします。
スマートラウンドエバンジェリスト冨田阿里氏のモデレートのもと、起業家と彼らを支えた一流ベンチャーキャピタリストたちが、単なる「資金提供者」ではなく、「真の経営パートナー」となる投資家を見つけ出す方法や共創戦略について語られました。
登壇者プロフィール
◾️貴山敬(Tebiki株式会社/代表取締役CEO)
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、三菱商事㈱にて事業投資を担当し、食品メーカーを買収して取締役副社長兼工場長に就任。その後、旅行C2Cサービスで起業して事業譲渡、習い事C2Cサービスの取締役就任と事業譲渡を経て、2018年3月に二回目の起業。
海と山とキックボクシングが好き。
◾️今野穣(グロービス・キャピタル・パートナーズ/代表パートナー)
2006年グロービス・キャピタル・パートナーズ入社、2012年同社パートナー就任、2013年最高執行責任者就任、2019年同社代表パートナーに就任。主なトラックレコードは、Visional(旧ビズリーチ)、Yappli、クリーマ、アカツキ、ブイキューブ、ライフネット生命保険、Quipper、キラメックス。主な投資担当先は、スマートニュース、アンドパッド、READYFOR、akippa、アグリメディア、FLYWHEEL、リノベる。、tebiki、セイビー、ナレッジワーク、TEARASS、大熊ダイヤモンドデバイス、Helpfeel、YOUTRUSTなど。同社以前は、経営コンサルティング会社(現PwC)にて、プロジェクトマネジャーを歴任。東京大学法学部卒。
◾️堤達生(STRIVE/代表パートナー)
大学院卒業後、三和総合研究所、グローバルブレインを経て、株式会社サイバーエージェント及び株式会社リクルート、グリー株式会社にて、新規事業開発及びコーポレートベンチャーキャピタルの設立と運用に従事。その後、新たにベンチャーキャピタルファンド(現STRIVE)を創業して、代表パートナーに就任。
◾️岩崎由夏(株式会社YOUTRUST/代表取締役CEO)
大阪大学理学部卒業後、2012年株式会社ディー・エヌ・エーに新卒入社。2017年株式会社YOUTRUSTを設立。2018年4月にリリースした、日本のキャリアSNS「YOUTRUST」は累計ユーザー数は25万人を突破。
◾️冨田阿里(株式会社スマートラウンド/エバンジェリスト)
神戸大学海事科学部を卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)へ入社。スタートアップの採用支援と新規事業開発を行う。2016年に株式会社セールスフォース・ドットコム(現:株式会社セールスフォース・ジャパン)に入社し、スタートアップ戦略部を立ち上げ。スタートアップの魅力や可能性を確信すると共に「スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界をつくる」のミッションを実現するため、2019年株式会社スマートラウンドへCOOとして入社。2024年6月に取締役を退任し、現在は起業準備中。
出会いはIVSの飲み会。投資家と会う前から狙いを定めるべし。
冨田阿里氏(以下、冨田):本セッションでは、「スタートアップ×VCの共創戦略 最強パートナーの選び方」というテーマで、Tebiki代表取締役CEOの貴山敬さんとグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)代表パートナーの今野穣さん、YOUTRUST代表取締役CEO岩崎由夏さんとSTRIVE代表パートナーの堤達生さんの2組の最強パートナーにご登壇いただきます。
早速ですが、まずは起業家のお2人に最強パートナーをどう選んだかお話を伺っていきたいと思います。まずは、YOUTRUSTの岩崎さんからお願いします。
岩崎由夏氏(以下、岩崎):よろしくお願いします。今日はSTRIVE堤さんとペアで登壇させていただいていますが、YOUTRUSTはGCPの今野さんからも投資を受けています。
堤さんと初めてお会いしたのはいつでしたっけ?
堤達生氏(以下、堤):IVS神戸の飲み会です(笑)
岩崎:そうでしたね。IVS神戸は5年前、コロナ前でした。
普段からネットワーキングをしていて、自分の中でデータベースは作っていました。
堤:岩崎さんにはその当時から何か湧き出るものを感じていました。

冨田:逆に岩崎さんからの堤さんの第一印象はどうだったんでしょうか。その時から出資を受けたいという気持ちはありましたか?
岩崎:正直、狙っていました。投資家を選ぶ際に、自分たちとの相性の良さもありますが、次のラウンドへサポートいただけることも大事だと考えています。堤さんはオーラが出ていましたし、業界でも有名だということをわかった上でロックオンさせていただいていました。そもそも投資家の方と会う前から狙っているのが私のやり方です。
冨田:その時からこんな今の関係性、最強のパートナーになるイメージはありましたか?
岩崎:実は、当初担当の方は別にいたのですが、その方が変わるタイミングで、代表パートナーの堤さんと投資後のやり取りをするようになりました。STRIVEにはリードではなくフォローで投資いただいていたのですが、株主の中でも堤さんがレイターのファイナンスに詳しかったので、レイターの資金調達時には堤さんにご尽力いただきました。
堤:普段はリード投資しか行いません。YOUTRUSTには3回投資させていただいている中で、1度リードをとるチャンスがあり話が進んでいたのですが、最終的に振られてしまったんです。ただ、気持ちはリード投資家だったので、たとえフォロー投資家だったとしてもがっつりとサポートさせていただきました。
岩崎:本当に堤さんの大きな器でサポートしていただきました。
当時の背景をお話しすると、STRIVEからリード投資のオファーをもらっている中で、古巣であるDeNAのデライト・ベンチャーズにピッチをしに行きました。
当時、プレゼンテーションの中に時価総額600億で上場しますというスライドを1枚入れていて、それに対してDeNA創業者の南場智子さんに、「誰がこの小さい規模での上場で満足するんだ、逮捕だ!逮捕!少なくともDeNA卒業生なら、DeNAの上場時価総額を超えて上場しろ!」と激しく怒られまして。
その時、直感的に私はこの人ぐらいの目線で会社をやらないといけないなって思い、その場で喧嘩を売り返したんです。「じゃあ南場さんはリード取ってくれるんですか」と。
その流れで、デライト・ベンチャーズがリード投資家になり、とても申し訳ない気持ちで当時のSTRIVEの担当者に電話しました。
イケてる投資家は起業家の話を聞いて初めて判断するのではなく、仮説を持ってくる。
今野:貴山さんはコロナが始まってから1番最初に投資させていただいていたので、初めてオフラインで会わずに投資をさせていただいたケースでした。最初は、私がすごく信頼しているエンジェル投資家の有安伸宏さんからの紹介でお会いしました。
貴山敬氏(以下、貴山):有安から紹介されたときに「GCPの今野さんは本命だから」と言われていました。今野さんとお会いしたときの印象としては、話が早くて余計なことを聞かないなと思いました。言い方が難しいのですが、VCの方とお会いして、しょうもない質問されると萎えるというのがありまして。
岩崎:例えばどんな質問が来るんですか。
貴山:市場規模が、TAMがどうこうとか、セグメントをもっと分けてとか。いや今それはどうでもいいんだけどという質問が沢山くると萎えてしまうのですが、今野さんにはそれが全くなかったのはよく覚えています。
今野さんは、大局観に立って即決する人なんだなという印象が初めてお会いしたときからとても強かったんです。

岩崎:すごくわかります。今野さんもそうですし、イケてる投資家の皆さんは起業家の話を聞いて初めて判断するのではなく、仮説を持ってこられるという印象があります。
本格的に投資の話をする前に2回ほど今野さんとお話させていただいたんですが、2回目にお会いしたときにはもう今野さんの中で調達ストーリーができていたんですよね。
第1フェーズはエージェントの時代、第2フェーズはダイレクトリクルーティングの時代、 そしてこれからの人材の流動性が極めて高い世界ではネットワークリクルーティングの時代ですよねと、今野さんがおっしゃったんです。
そこから、GCPと話を進めながらも色々な投資家とお話ししてまわる中で、今野さんにいただいたそのストーリーラインをスライドにおこしてピッチをしていました。
冨田:すごい。もうその時点からパートナーというか、良いコミュニケーションができていたんですね。
堤:VCの役割の1つだと思うんですよね。今野さんの言葉をインプットして自分の言葉にしていけるのは起業家として大事な能力ですし、逆にVCも人から聞いた話をさも自分の考えとして話すのが得意な職業でもあるので、お互いうまくそこを活かしていくのは大事かなと思います。
今野:そうですね。起業家はどちらかと言えば1つのことを深掘りするわけですが、VCは色々な会社を業界を跨いで、また、ステージが進んでいる企業の事例を見ているので、それを活かしたフィードバックができるというのは1つの提供価値だろうと思います。
TebikiがシードもシリーズAもGCP1社のみに投資を受けた理由。
冨田:貴山さんに関して少し補足すると、元々貴山さんはエンジェル投資家の有安さんと過去に一緒に働かれていたことあってその後、有安さんからエンジェル投資を受けてるんですよね。 貴山さんのnote「3億円調達の舞台裏:エンジェル投資家 有安伸宏を20年来の腐れ縁の私が徹底解説」も拝読したのですが、有安さんとすごい信頼関係ですね。
貴山:はい、有安は大学の後輩なので、腐れ縁で(笑) お互いの良いところ、悪いところはよくわかってるので、その彼に今野さんは本命だと言われたので、本命なんだなとあの当時は思いました。
冨田:Tebikiはエンジェルラウンドの後、シードとシリーズA共にGCP1社から投資を受けています。シリーズAで投資を受けるVCを複数社にするか、1社に絞るかはそれぞれメリット・デメリットがあると思うのですが、貴山さんはVCを1社のみにする選択をして実際どうだったのでしょうか。(参考:8億円資金調達(シリーズA)の舞台裏 VC数社/VC1社のどちらが良いか)
貴山:結果ここまで成長できており、結果が全てだと思うので、その選択は正解だったと思います。
まず、シードラウンドでGCP1社だったことはそれほど珍しいことではないと思いますが、その後シリーズAでもGCP1社というのが、かなりユニークなことです。結果的にうちのGCPからの出資率はかなり高いものだったんです。
シリーズAで、他のVCを入れるべきではないかという意見はもちろんあって、GCPからも同じ意見がありました。GCPが1社にしてほしいと言ったわけではなく、私の方からGCPとだけやりたいという風にお話したんです。その時に色々な起業家の友達にも相談しましたが、基本的にみんな1社のみということには反対でした。
よくVCはパートナーであると言いますが、そこにはやはり本音と建前が両方あって、もちろん本音としてもそう思っているのですが、別の本音としては、VCを競い合わせたいとか、 経営権を握られたくないとか、力関係を常に起業家が上に持ちたいとか、そういう気持ちはやっぱりあるんですね。それが反対の理由でした。
冨田:バリュエーションを上げるという観点でも、複数のVCが競ってくれた方がいい場合もありますよね。
貴山:そうですね。そういったメリットもあるのですが、それよりも経営陣を少なくして経営判断のスピードを上げたいということと、GCPにコミットしてもらいたいということ、その2つが目的でした。

今野:その意思決定をされたときに貴山さんが「経営会議のメンバーをこれ以上増やしたくない。議論は健全だした刺激的なので、それが薄まることが嫌で、他は入れたくない。」とおっしゃっていたのが印象的でした。
VC側のコミットの話でいうと、資金調達の際に色々なVCを比較して選び、競わせるというのはあっていいと思うのですが、コミットを引き出すにはリードをしっかり決めて、あまり細かく分散させない方がいいと思います。
実際、VC側としてもそれだけのシェアをいただき、ご評価いただいているということに応えるため、私ともう一人南というキャピタリストとで完全にツーマン体制でやっています。
投資家からもらって本当に良かったアドバイスとは。
冨田:VC側のコミットを引き出すという点では、シェアがあるからコミットしてもらえるというわけでなく、日々のコミュニケーションも含めて信頼関係を築かれているのだと思います。その点では、経営会議や普段のコミュニケーションなどはどのようにされているのでしょうか。
貴山:情報は基本的に隠すことは何もないので、Slackはフルオープンにして頻繁にやり取りをしています。経営会議(取締役会)は月1でやっているのですが、割と怒られている印象です(笑)
岩崎:何を怒られているんですか。
貴山:判断が遅いとか、目線が低いとかそういったフィードバックです。
岩崎:喝ですね(笑)
貴山:怒られるんですよ。でも、ちょっと怒られると少し気持ちよかったりもします(笑)

岩崎: 大抵怒られるときは、起業家側も気にしてる点だったりするので、はっきり言ってもらうことで気が楽になりますよね。
貴山:そうなんです。 起業家ってその会社の中では本当に強くて、もうスーパーサイヤ人みたいな強さなんですよ。創業から全部見ていて、経営幹部も全員自分で採用していて、 事業の細かいことまで全て把握してるから当然強いんです。ただ、やはり経営としてそれが健全ではない側面もあって、ガバナンスしてくれるような存在がいることがありがたいと思います。
今野:前提として、Tebikiは投資してから4年で30倍近く売り上げが伸びています。そのぐらいすごいです。
貴山さんは元々三菱商事時代に工場長として実務を行っていたので、自分が経験したことのあるペインを解決しているという点でとても強みがあります。なので、私の役割としては、それをどれだけ大きく成長させられるかと、そのために今のタイミングで何を準備しておく必要があるのかをアドバイスするということがあります。
一度、軽くアドバイスをしたことがあり、その当時はあまり聞いていただけなくて、その半年後にその課題が顕在化したときには、意思決定が半年遅いんだと言ったことがありました。
ただ、もちろん経営をしていれば、社員との関係など色々なことがあるので、すぐに変えることができないこともあって、それがダメだったということではありません。
貴山:今野さんからのアドバイスで、これは本当に良かったなというのが1つあります。SaaSで事業を伸ばしていくと、必ず新規事業を上乗せしないといけないのですが、それをどのタイミングで仕込み始めるかという論点がありました。
当時、私としては既存事業にもっとフォーカスしたい、GCPとしてはこの2年、3年、4年先を見据えると、もう今始めなきゃダメだと主張していて、対立構造があったんです。最終的に、弊社のCTOがGCP側につきました。
そこまでみんなに言われるならわかりましたと言って新規事業を始めたんですが、今思うとあのタイミングで始めてなかったらと思うとぞっとしますね。
今野:ちゃんとしたPMFって2年ぐらいかかると思ってるんです。だから、2年前に遡って始めなきゃいけないとすると、今だというのがありました。もう1点、最初の事業がPMFしたら社長は執行から離れるべきだと私は思っています。やはり執行をしている社長は今の売上を大事にしてしまうことがあって、それが結果的に組織のスケールを阻むこともあるためです。
貴山:あれはよかった。あれは本当によかったですね。

イベントレポートは以上です。
当日のセッションでは、上記以外にも「うまくいかない経営会議とは」「起業家目線でVCに求めるものは」など、白熱した議論が繰り広げられました。
登壇者の皆さま、ありがとうございました!
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