
2024-01-23
インタビュー
起業家が誰かのマネをしたら終わり。競うより持ち味を活かせ
エンジェル投資家 有安伸宏さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はエンジェル投資家の有安伸宏さんにお話を聞きました。
有安伸宏
ユニリーバ・ジャパンを経て、2007年にC2Cマーケットプレース事業を創業。2013年に同社の全株式をクックパッドへ売却。2015年にTokyo Founders Fundを共同設立。米国シリコンバレーのスタートアップへの出資等、エンジェル投資も行う。投資先はマネーフォワード、キャディ、Kanmu等、日米約130社。慶應SFC卒。投資条件や投資実績がわかる!有安伸宏さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)
有安さんが審査員をされる「QWS STARTUP AWARD 2025」の応募は2025年1月14日(火)まで!

まずは、有安さんについて教えてください。
新卒でユニリーバ・ジャパンに就職して2年ほど消費財マーケターとして働いた後、習い事のC2Cマーケットプレース事業を創業し、6年後に全株式を上場企業へ売却しました。その後、グループ会社の社長を3年ほど務めた後、10年ほどエンジェル投資家として活動をしています。日米合わせて130社を超える企業に投資してきました。
有安さんがエンジェル投資家になったきっかけは何ですか?
2013年にマネーフォワード社へエンジェル投資したことがきっかけです。
と言っても当時はまだ「エンジェル投資」という言葉は一般的ではなかったので、感覚としては寄付に近かったですね。経営陣が友人だったので声がかかったという経緯で、人の経営を間近で見られますし、自分が経営で苦労したことも伝えられると思い、損得考えずに決めました。バリュエーションがいくらかも知らない状態でした。ほぼ趣味ですね。
とはいえ、「市場領域」と「人」は見ていたように思います。
まず「市場領域」に関しては、自分自身も経営をしていたので「ファイナンスは真っ先にIT化されるべきだ」と思っていました。当時、会計も税務もとにかく紙だらけだったんですよ。一方海外ではペーパーレス化が先んじて進んでいたこともあり、間違いなく金融業界のクラウド化は進むなと。
そして「人」ですが、エンジェル投資は10年スパンの長い付き合いになるので、メンバーの覚悟を感じて決めたようなところがあります。事業の形は様々なので、3年でさっさと売却したい!という形も、自分のペースでゆっくりやりたい!という形ももちろんアリです。ただ、マネーフォワードのメンバーの「大きい市場で大きい事業を、長期でやり抜く」という深い覚悟が見えたので、こちらも腰を据えて長くお付き合いしたいと思った、という部分は確実にありました。
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
かなり色々、というのが正直なところです。
ソーシャルゲームやDeep Tech以外幅広く。FinTechや法人向けSaaS、マーケットプレース、Eコマース…と幅広く投資しています。ステージも、エンジェルなのでアーリーステージが多めではありますが、創業前後から月商数億円規模の企業まで様々です。
ただ、基本的にはずっとソフトウェアビジネスが好きですね。これだけDXが進んだ今でも、まだDX化されてない領域ってあるじゃないですか。それには必ず理由があると思うんです。例えば建設業界だと、商談から導入までのリードタイムが長すぎることがハードルになっていたり。そういったハードルをどう乗り越えるかに面白味を感じます。
スタートアップへの支援のスタイルについては「ハンズイフ」です。ハンズオンでもハンズオフでもどっちでもいいと思っています。必要な時に必要なサポートをする、召喚獣のようなイメージです。
どのような関わり方をするかはスタートアップごとに異なりますし、同じスタートアップでもフェーズによっても変わります。
子供との関わり方も、年齢に応じて変わりますよね。それと同じです。会社ができたての頃は企業としては保育園児のようなものなので、週に1回など定期的に話を聞いて「話し相手」になり、起業家が適切な論点について適切に考え抜くためのサポートをしたりします。

(画像:支援先のコミュニティ作りに、自ら肉を焼く有安さん)
フェーズが進むと、小学生をSAPIXに入れるように、VCからの資金調達に向けて気合いを入れて実務的な支援をすることもあります。シリーズAは中学1年生くらいの感覚ですね。その先に進むと、経営者自身が成長し詳しくなっていくので外部の人間にできることは減ります。もちろん、顧客やVCを紹介したり資金調達の戦略を一緒に考えたりなどできることはしますが、起業家の邪魔をしないように気をつけていますね。
ちなみに、いつも思うのですが「期待値のすり合わせ」をもっと皆重視した方が良いです。先ほども話した通り、エンジェル投資は10年スパンの関係になります。「結婚みたいなものだ」とも言われますよね。であれば、思想やビジョン、どのような関わりを期待しているかを両者ともに丁寧にすり合わせる必要があると思うんです。お互い長く良い関係でいるために、私自身ものすごく重視している部分です。
魅力を感じる事業や起業家はどのような人ですか?
一言で「オタク」です!
GAFAの創始者たちもかなり個性が豊かで、半端ないオタクじゃないですか。平均的な知的好奇心・平均的な思考から外れて、何かの領域や何かの仕組みに偏執的にこだわったり、好きでずっとやっちゃう。これは0から1を生み出す時に大きなパワーになります。
起業・経営にはアートとサイエンスの両方が必要ですが、特に0→1の段階ではアート的な素養が重要になってくると思っています。普通の賢い人が賢く意思決定して普通にやっていくと、大爆発するような事業はなかなか生まれにくい気がするんですよね。なので私は、偏執的なオタクのチャレンジを応援したいと思っています。
オタクかどうかは、事業について何か質問した時にわかりますね。解答の量と質が異常なんです。めちゃくちゃ深いものがバーっと出てくる。こだわりや信じるものがあって、それが無理せず出てくるのは、やはり美しいです。
そんな風に、オタクを応援したいと思うようになったのには理由があります。
以前は、エンジェル投資するかどうか考える際、市場領域を特に重視していました。なので、当時「魅力を感じる起業家は?」と聞かれたら「市場領域を選ぶセンスがある人」という答えになっていたと思います。スポーツもそうですが、選ぶ種目次第で勝率って全く変わるじゃないですか。勝てる市場領域を選べたら、基本的にはちゃんと伸びるんです。個人の能力の差なんてものは10倍もないですが、市場領域の選択の巧拙には1万倍以上の差があると思っています。よって「市場領域の選択」を最重要視していました。
では、どうして市場領域を見ていた私がオタクを応援するようになったのか。
エンジェル投資を10年やっていて思うんですが、皆、数年でエンジェル投資をやめていきます。見ていると大抵、情熱かお金がなくなって30社くらい投資したところでやめる人が多い。確かに、エンジェル投資は地道で大変な活動なので、メンタルにくるような出来事があるとやめたくなる気持ちはとてもよくわかります。そんな中で私が続けられているのは、一社目に投資したマネーフォワードのリターンが200倍を超えたおかげで資金体力があることと、起業家が好きで、挑戦する人の気づきを促すことに生きがいを感じていること。だから、シンプルにワクワクする「偏執的なオタクを応援」するようになってきたんだと思います。
今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
エンジェル投資を長く続けたいですね。
世の移り変わりがとにかく早く、新しいものが次から次へと出てくる今だからこそ「ずっと続けてること」って価値があると思うんです。エンジェル投資歴は10年あるので既に「ずっとやってる人」ではありますが、もう10年やったらもっと価値が出ると思っています。具体的には、投資先からIPOする企業が今後毎年のように出てくるはずですし、一方でできたての会社もあり、その100社を越える縦のコミュニティ、蓄積された起業HowToのナレッジ総量は凄まじい。これを続けているだけでコミュニティの価値や信頼、ブランドが指数関数的に伸びていくので経済合理性がありますし、何より「ずっと続けている」ってかっこいいじゃないですか。
そしてそれ以上に、起業家が好きなので。起業するって本当に大変で、私は毎日起業家とばかり会っていますが、全然うまくいかない起業家も不器用な起業家もたくさんいます。中には気軽な気持ちで起業して「本当に大変だったな」と思っている人もたくさんいると思います。「それでもやる」というのは、人間が持つ本質的な知的好奇心、挑戦心というか、美しさが反映されている行為だと僕は思うんですよね。それを応援するのはすごく尊いので、損得を超えてやり続けられたらいいなと思う気持ちが強いです。

起業家へのメッセージは「持ち味を活かせ」でしょうか。
僕が起業した2000年代に比べると、起業家もスタートアップもVCもすごく増えました。上も横も下も見たらキリがなく、ベンチマークもロールモデルも溢れていて、嫌でも視界に入ってくる。完全に手探りだった当時と比べたら、資金調達も組織作りも採用もマーケティングも営業も「型がある」こと自体は良いことです。ただ、同質的になりがちな気もしています。
誰かが言ってましたが、「起業家が人を真似したら終わり」です。
横を見たりトレンドを見たくなる気持ちはわかるんですが、自分の価値観でいった方が楽しいですよ。ぜひ皆さんが20年30年生きてきた中で形成された価値観、一言で言うと「持ち味」が滲み出てくるような事業を作って欲しいと思います。持ち味って別に特殊なスキルとかの話ではなく、職歴や成功体験、失敗体験、原体験と呼ばれる「その人を作った出来事」から滲み出るものだと思うので、持ち味がない人なんていないんです。
自分の持ち味を忘れず、迷わず、自分の道を真っ直ぐに突き進んでいってください。
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