「資金調達は人気投票じゃない。共感してくれる1人をじっくり見つけて」グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一さん

2024-04-03

  • インタビュー

資金調達は人気投票じゃない。共感してくれる1人をじっくり見つけて

グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一さん

Share

Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はグロービス・キャピタル・パートナーズの高宮慎一さんにお話を聞きました。

高宮慎一
グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー
コンシューマ、ヘルスケア、デジタルの投資を担当。Forbes日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング 2018年1位、2015年7位、2020年10位。東京大学経済学部卒、ハーバード経営大学院MBA。

投資条件や投資実績がわかる!高宮慎一さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)

まずは、高宮さんについて教えてください!

グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)代表の高宮です。

大学卒業後、戦略コンサルティング会社でITサービス企業に対する事業戦略周りを主導した後、2008年にグロービス・キャピタル・パートナーズに入社しました。2019年に代表パートナーに就任し、今に至ります。

過去の投資としては、IPOにアイスタイル、オークファン、カヤック、ピクスタ、メルカリ、ランサーズなど、M&Aにしまうまプリントシステム、ナナピ、クービックなど、現在アクティブな投資先はタイマーズ、ミラティブ、ファストドクター、グラシア、アル、MyDearest、アルプ、ジョーシス、AnotherBall、newmoなどがあります。

実は、私もスタートアップをやりたいと思っていた時期がありました。でも超慎重な性格ゆえ、石橋を叩き割ってしまい、結局その道に飛び込めずにここまで来てしまいました。

新卒でコンサルを選んだのはスタートアップ経営のための知識を身につけられるのではないかと思ったからなのですが、大いなる誤解でした(笑)経営を知ることと、経営をすることは違うということに気がつきました。

MBAを経て回りまわってVCをやっていますが、今となっては「これでよかった」と思っています。

なぜ、これでよかったと思われているんですか?

スタートアップと金融の「橋渡し役」であるベンチャーキャピタルという仕事が、性に合っていると思うからです。

子ども時代に遡るのですが、私はメーカーに勤めていた父の転勤で、子ども時代に2度の海外生活を経験しています。幼稚園の年長から小1まではイギリス、小5から中3まではイギリスとオランダで学校生活を送りました。この海外と日本の往復生活が今の私を作った原体験になっている気がします。

海外ではもちろん、日本に帰ってきてもずっと周りとは異質な異邦人と感じていました。そのためか「何か貢献しないと仲間に入れてもらえない」という意識が常にありました。

海外でいじめられていた時は「どうしたら仲間に入れてもらえるのか」を考えた結果、ファミコンなど日本の遊びを持っていったり、日本に帰って来たら来たで「英語しゃべって!」と言われてもわざと片言の発音で話したり。子供ながらに周りと同じに見せようとしていたんですね。

仲間に入れてもらうために自分が貢献できることを模索する中で、「橋渡し」や「持続可能な仕組み作り」が得意であると気づきます。

そうしたプロデューサー的な立ち回りが得意で好きでもあり、大学生の頃もファッションデザイナーやフォトグラファーなどのアーティストとイベントをやって、場所を借りたり採算を合わせる算段をしたりしていました。

そんな大学時代が楽しすぎて大学院に行こうかなと考えたこともありましたが「世の中にリアルなインパクトを与えることができるキャリアを築きたい」と思い、就活を始めます。

就活時も、ビジネスプロデューサー的な立ち位置が面白いと考え、戦略コンサルティング会社に進み、その後ハーバードMBAに進みました。

そんな高宮さんが投資家になったきっかけは何ですか?

グロービス・キャピタル・パートナーズからオファーをもらったのがきっかけです。

前職のコンサルでは、ITサービス企業に対する事業戦略や新規事業戦略、イノベーション戦略立案などを主導していたのですが、正直辛かったです。横横の競い合いをラットレースのように感じてしまって、自分のダメなところにばかり目が向いて、苦しかった。

大きく変わったのはMBAの2年目でした。1年目は偏差値的なところで周りに勝とうとしてしんどかったのですが、2年目は好きな科目ばっかり履修していたら自然と成績が伸びていき、優秀賞をいただくまでになりました。

「なんだ、自分が楽しいことをやっていればいいのか」と肩の力が抜け、今後の生き方みたいなものがストンと腹落ちしました。

MBA修了後、デザインファームの起業をしかけたんですが、うまく行かず、結果的にグロービス・キャピタル・パートナーズに参画しました。最初は、クリエイティブな領域での起業に次ぐセカンドベストだと思ったのですが、いざベンチャーキャピタルをやってみるとベストマッチだったように思います。

ずっと「何かと何かの橋渡し」、プロデューサー的な立ち位置が得意で居心地がいいと思ってきた中、ベンチャーキャピタルという仕事も「スタートアップと金融」、「メインストリームと新興のイノベーション」の橋渡しなのでフィットしたんでしょうね。

現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか? 

僕自身の投資領域としてはデジタルやヘルスケア、テクノロジーといった領域にフォーカスしています。ステージはアーリーからレイターまで広くカバーしていますが、PreAやレイトシード、Aから投資してずっと伴走することがほとんどです。

投資金額としては、アーリーステージの初回投資だと5億円程度が多いですが、いきなりアーリーの初回投資で20億円ほど投資することもあります。その後、ずっとフォローオン投資をしていき、最大で累計100億円程度まで投資することができます。スタートアップの段階の事業であれば、MBOやカーブアウトなども行っています。

投資先との関わり方はハンズオンで、とにかく経営目線で起業家に寄り添うようにしています。ほとんどの投資先で社外取締役として参画させていただいています。

取締役会・経営会議等での経営陣との戦略ディスカッションを軸に、仕組化や組織化、提携などのビジネスディベロップメント、さらにはGCP Xというプラットフォームチームと一緒に採用支援などのオペレーションの支援も行っています。

その中で、気をつけているのは「日々のオペレーションを回す上での不可欠なパーツにならないこと」です。戦略のつくり方や仕組みや制度の設計の考え方を伝えるといった、OSをインストールするような部分はお手伝いします。

でも、そのOS上で動くアプリ、実際にその仕組みを回したり、業務自体を代わりにやるようなことはしないようにしています。僕らが不可欠なパーツになってしまうと、投資家の宿命としていつかはExitしなければいけないので、その時に事業が回らなくなってしまいます。

それでもオペレーションのレイヤーで支援するのが、CxOといったキーマンの採用支援です。優れた人材を投資先に迎え入れることができれば、自走できる組織体制の構築につながります。企業価値評価に対するインパクトも非常に大きいです。なので、採用支援は私たちも積極的に手を動かすようにしています。

魅力を感じる起業家はどのような人ですか?

真っ先に思いついたのは「大振りする人」ですね。大きな絵を描いて「世界で勝とう!や「日本のこの古い業界を丸っと変えてやろう!」と、パッションと野心を兼ね備えた人ですね。魅力的に感じるというのももちろんなのですが、むしろ憧れに近いかもしれません。

モチベーションの源泉が美しい人も魅力的ですよね。お金儲けのためにやっているというよりは、自分や世の中に問題を感じて「なんとか自分の手で変えたい」と思っている人。

それから、オタク的に「この領域大好き!好きすぎてこんなことやっちゃってます!」みたいな、深みにはまっている人。笑

出資したら7年や10年という長期に渡って一緒に仕事をする中、事業は外部環境の変化やピボットでいくらでも変わります。一番変わらないのは人だと思うので、人として魅力的で共感できる方と一緒に仕事をしていきたいと、折に触れて思います。

ベンチャーキャピタルという仕事の良いところは、来たストライクを全部当てないといけないわけではなく、ど真ん中に来た!と思う球を大振りして、ホームラインできたら良いというところです。だったら、一緒に仕事をしていて心地良い人や人間的に合う人、人として魅力を感じる人と働きたいじゃないですか。

もちろん、事業領域ごとに有利なスキルや経験は存在しますが、スキルや経験があるからといって必ず成功するわけではありませんし、後からいくらでもキャッチアップできます。

今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!

スタートアップ起業家の皆さんへのメッセージとしては、「資金調達を人気投票と思わないでください!99人に断られても、共感してくれる一人を見つければ、それで大成功なんです」とお伝えしたいです。

資金調達で多くの投資家を周っていると、基本的には出資をしてくれることよりも、断られることの方が圧倒的に多くなります。そうなると、ついつい自分たちのやっていることが本当に世の中に必要とされているのかとか、本当に自分たちのやり方でいいのかとか、迷ってしまい、悪い精神状態に入ってしまいがちです。

でも、自分たちのやっていることを信じて、それに共感してくれる人を一人見つけさえすればいいんです。スタートアップの世界は、絶対的な正解がないんです。同じ未来を見ているかどうかという主観の違いだけなので、断られても引きずらずに運命の人を探してどんどん次にいけばいいと思います。

そのためには、調達をする1年以上前からいろいろな投資家と会って人となりを知り、お互いに信頼関係を築き「いざ調達するとなったらこの人とこの人に声をかけよう」と絞り込んでおくと良いと思います。

人となりを知るには机を挟んで打ち合わせをするだけでは正直なかなかわからないので、スポーツなど仕事以外のアクティビティを一緒にやったり飲みに行ったりするのをお勧めします。例えば釣りとかいいですよ、釣り!(笑)

勤め人的な意識だと「休日も仕事で接待」みたいな感覚になってしまいますが、スタートアップと投資家は人としての信頼関係ができていれば、仕事もプライベートも関係なく人生を一緒に楽しめるパートナーになると思っています。だから私はこの仕事が好きです。

今後の展望ですが、私もいい年齢なので「残り10年、最後に何を残すか」は最近よく考えます。それこそ「日本の仲間に入れてもらう」ために何ができるか、第三思春期的に考えていて、VCという形にこだわってもいないです。

とはいえ、日本に新しい産業を作ることと、1兆円企業が定常的に出てくるような仕組みを作ることには何らかのインパクトを残したいですね。

特別コーナー:起業家から高宮さんに質問!

Q、自分の意向と、経営者として選択すべきことのバランスに悩むことがあります。

A、まずは、あんまり選択”すべき”ことがあると思わなくていいと思っています。自分が好きなことや想いがあることをやっていて、結果的に何かを成し遂げられたら、ラッキー。不運にも成し遂げられなかったとしても、好きなことをやれて人生を過ごせたから幸せだと思えると思います。

つまり、”すべき・すべきじゃない”という判断基準を他人や周りに委ねちゃダメだと思うんです。自分自身で思うやりたいこと、自分がやるべきと感じることをやればいいと思います。もちろん、法令違反とか社会性がないことはダメという前提ですが。

では、自分自身の何を基準に判断すればいいのでしょうか。結論としては、全てビジョンを起点に考えればいいんだと思います。自分たちは定性的に何を成し遂げたいか、定量的にどれくらいの高みを目指したいのか、どのような美学を大事にしたいのか、それに立ち返り、それを体現しているのかを判断のモノサシにするのがいいと思います。

なので、資金調達や投資家選びの話も「がんばって投資家に選んでもらう」ではなく、「自分たちのビジョンに共感し、相性のよい投資家を自分たちが選ぶ」というのがいいと思います。

なんとなく「VCから調達するのが偉い」「たくさん調達するのが偉い」という風潮がありますが、そんなことはありません。「良い事業」は多様です。調達も事業を伸ばす手段に過ぎません。ビジョンを起点に、適切な手段を選んでください。VCから調達するのに適していない、素晴らしい事業というのもいくらでもあると思います。

Q、とはいえ出資を断られると本当にしんどいです…

A、そうですよね。多くの起業家にとって事業は自分の魂そのものだと思いますので、断られてしまうと自分自身が全否定された気持ちになってしまうのはわかります。

ただ、先ほどの起業家へのメッセージと重複しますが、VCにも条件やタイミングや興味領域などの個別事情があり、多分に主観みたいなところもあるので、断られたからといってその事業がダメなわけでは全くないんです。就職や結婚のマッチングみたいに、相性の要素が大きいと思います。

これってきっと調達の話だけじゃなく、日本全体の課題だと思います。「VCから調達するのがいいことだ」みたいな、なんとなく世の中の価値基準があって、そこから外れると「不正解」「価値なし」みたいな雰囲気になってしまう。

でもテクノロジーをはじめ、すごく不確実性が高く価値観も多様化していて、絶対的な正解がない時代だと思います。誰も結果を保証することはできません。結果は結果論にしかすぎません。

だったら、「旅路を楽しむ」というのが、幸せへの近道なんじゃないかなと、最近思います。

Q、高宮さんが今20代に転生したら何をしますか?

A、絶対に起業しますね。好きなこととチャンスがあることの掛け算で何かやると思います。

私はC向けのコンテンツやエンタメが好きなので、その領域がいいですね。例えば、日本のIP×世界で需要がある、Vtuber系とか。海外でVtuberそのものに需要があることはもう証明されているので、よりプラットフォーム化するビジネスモデルは作れるんじゃないかと思います。

90年代はスタートアップという言葉すらなく、「VB(ベンチャービジネス)」と呼ばれていました。”脱サラ”してVBに挑戦して、失敗したらメインストリームからのドロップアウト、当時は個人保証も求められたので人生終了感すらあったんです。

でも今は180度変わって、スタートアップにチャレンジして仮に失敗したとしてもむしろ経歴的にはプラスになるくらいです。また起業しても良いし、起業家人材を求める企業に就職もできる。起業家人材へのニーズはいくらでもあります。

「起業家」であることが、継続性のあるキャリア、もっと言ってしまうと生き様として、成り立つ時代になったんだと思います。

この流れは今後もっと進むと思っています。本当にワクワクしますね。もし今20代30代で、当時の私のように「正解がわからないから、挑戦しない」と躊躇してしまっている人がいたら、「正解なんて誰もわからない。旅路は絶対に楽しめるし、長いスパンで見たらプラスにしかならない。やりながら考えればいいじゃん、やってみなはれ!」と背中を大きく押してあげたいと思いますし、力強く後押ししてあげられるようになりたいと思っています。

Startup Nextを運営するスマートラウンドでは、スタートアップが無料で使えるデータ共有プラットフォーム「smartround」を提供しています。株主総会や資本政策など、少しでも業務を効率化したい方は無料登録の上、ご利用ください。

またその他にも、スタートアップ向けのお役立ち資料・テンプレートをご用意しています。ダウンロードはこちらから

Share