
2025-12-22
インタビュー
起業経験とネットワークを強みに、テクノロジーでレガシー産業を変える起業家に寄り添う
ANRI 洪きかさん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。
今回はANRIの洪きかさんにお話を聞きました。
洪 きか
中国生まれ、 清華大学卒業後来日。三井物産株式会社にて、化学品、航空、船舶と言ったレガシー産業で既存事業の成長と新規事業投資、社内起業家としてショートフォームの音声コンテンツを配信するサービス(VOOX)の立ち上げを経てANRIに参画。日中英韓尼5ヶ国語堪能。ヨガ、犬、飛行機、旅行が好き。
https://anri.vc/ja/team投資条件や投資実績がわかる!洪きかさんの投資家プロフィールはこちら👇(クリックするとプロフィールを閲覧できます。)
洪さんが審査員をされる「QWS STARTUP AWARD 2026」の応募は2026年1月13日(火)まで!

まずは、洪さんについて教えてください!
ANRIでキャピタリストをしています、洪(コウ)と申します。
生まれは中国で、私自身は文系だったのですが、自分と異なる人たちが集まる大学の方が面白いだろうと思って、あえて理系が強い清華大学を選んだんです。隣に座っている学生が大腸菌の話ばかりしているのを聞いて「やっぱり(私と)違うな」と感じるなど、マイノリティ感はありながらも面白かったです。
これまでのキャリアを教えてください!
大学時代にインターンをいくつか経験したのですが、一番長かったのは電通での約1年のインターンです。電通ではスポーツマーケティングに携わり、オリンピックやマラソン大会のスポンサーを付ける仕事を手伝いました。
華やかな世界を経験して、自分はそれよりも表には見えない裏側のドロドロとした仕事の方が好きかもしれないと感じたんです。それをグローバルでできる場所として考えたのが商社でした。三井物産がちょうど中国でグローバル採用をしていたので面接を受け、そのまま内定をいただいた形です。
日本という国には、学生時代に初めて来た時に衝撃を受けました。トヨタさんの工場見学でロボットが演奏するパフォーマンスを見たのが印象的でしたし、静かな電車の中で多くの人が紙の本を読んでいる姿も驚きでした。ハイテクと、紙の本を読む文化がバランスしているのがクールだと感じましたね。

三井物産には13年間在籍しました。商社の仕事は本当に楽しかったです。自由闊達な社風で、やりたいことを応援してくれる仲間が多かったので、自由にさまざまなチャレンジをさせてもらいました。レガシー産業を中心に、化学品業界から航空、そして鉄鋼や船舶など、いろんな部署を転々としながらキャリアを積みました。
キャリアの最後の4年間は、社内起業制度で手を挙げ、音声サービス「VOOX (https://voox.me/ )」を立ち上げました。社会人になって本を読む時間がない人たちのために、サクッとインプットできる学びにつながる音声コンテンツをゼロから立ち上げたいと思ったのがきっかけです。私自身、Audibleやpodcastなど音声サービスのヘビーユーザーでしたが、当時の日本の音声コンテンツは学びに繋がるものが少ないと感じていたからです。
ゼロからサービスを立ち上げるのはエキサイティングでしたが、大変なことばかりでした。特に苦労したのはチーム作りです。レガシー産業での経験が長かったため、アプリの開発方法やコンテンツの作り方が全く分かりませんでした。そこで、できる人をチームに巻き込むことを考え、エンジニアや、出版業界で経験豊富な方々、例えばハーバードビジネスレビューの編集長を務めていた方を口説いてチームに入っていただきました。熱意で共感してもらい、メンバーになってもらうことから始めていきました。
このゼロイチのプロセスを経験したからこそ、今、日々お会いしている起業家の方々の苦労が肌でわかるようになりました。

洪さんが投資家になったきっかけは何ですか?
投資家に転身した理由は主に二つあります。
一つ目は、起業家としてプロダクトマーケットフィット(PMF)していないフェーズで、自信を失いそうになったとき、それでも信じきって励ましてくれた投資家の存在です。その方の一言が、当時の私にとって大きな自信に繋がりました。PMFをしていない起業家にとって、信じてくれる人の存在は非常に大切だと感じたんです。
もう一つは、私自身の知的好奇心が強いことです。一つの業界に絞って深掘りし続けることができず、この業界も、あの新しいトレンドも気になる、という性分です。いろんなものを見て、何が起きているかを知りたいという知的好奇心を一番満たせる仕事が投資家だと考えました。
その二点を組み合わせたキャリアを考えたとき、ベンチャー投資、特にシード・アーリーのステージに投資するキャピタリストがドンピシャにハマったというわけです。シード・アーリーの起業家の苦しみや大変さを解像度高く理解できることが、今の強みになっています。
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
ANRIの投資領域はディープテックからバイオテック、インターネットサービス、最近ではAI系まで、非常に幅広いです。私の投資領域は、レガシー産業でのキャリア経験が長かったことから、AIを含めたテクノロジーでそういった産業を変えていきたいという、いわゆる「業界特化型AIサービス」に注目しています。
また、日本国内のみならず、「日本からグローバル」または「グローバルから日本」という、日本とグローバルがクロスする領域にも面白みを感じ、応援したいと考えています。
その他、AIの延長線上でフィジカルITやロボティクス周りも最近は積極的に見始めています。
投資先との関わり方ですが、事業がうまくいくためには、まず起業家自身が運転席に座って事業をドライブしていくことが大前提です。その上で、起業家が求めるサポートは、できることは何でもやるというスタンスでいます。
例えば、他の投資家さんの紹介やお客さんの紹介、そして採用に関するサポートも求められることが多いですね。最近では、ロボティクスなどの領域で、アメリカや中国のネットにはなかなか出ていない生の情報(現地のVCとの繋がりや大学のOB・OGネットワークから得た情報など)を、起業家さんのニーズに応じて提供したりしています。特にロボット系では、私の大学出身の起業家が多いこともあり、まさかの大学ネットワークが今、ものすごく役に立っているんです!

私が事業をしていたときに投資家の言葉が心の支えになった経験から、投資する起業家は何があっても最後まで信じ切りたいと思っています。私のスタイルは、クリティカルに質問して攻めていくというよりは、エンカレッジして起業家の強みを引き出すタイプだとよく言われます。もちろん、間違った方向へ進み始めたときは、そこは仕事だと思ってはっきりと指摘しつつ、フォローするようにしています。
起業家の方々には、株主の意見を鵜呑みにはせず、その方の経験やバイアスに基づいていることを理解した上で、正しいことは聞きつつ、そうでないところは反論し、対話を続けてほしいですね。
魅力を感じる起業家はどのような人ですか?
魅力的な起業家は、まず「プロダクトを作る人」という印象です。例えば、先日お会いしたGensparkの創業者の方も、前の経験からMicrosoft Bingという検索エンジンを作り、そこから今のGensparkのプロダクトを作っている、まさにプロダクトの人です。
彼のように、プロダクトについてものすごい解像度で細部までこだわってデザインしつつ、ときにはズームアウトして全体を俯瞰して見られる、つまり、他の人には見えない洞察を持っている人が最強だと感じます。
また、起業家が作りたいサービスに対する熱量が強いことも大切です。その熱量が人を惹きつけるからです。私もゼロからサービスを立ち上げたときは、ビジョンやプロダクトのコンセプトを載せた数枚のスライド以外何もありませんでしたが、その熱量で人を共感してもらい、チームに巻き込みました。
面談などで熱量を感じるのは、ご自身の原体験に基づき、「なぜ私がこの事業をやるのに最適なのか」を自分の言葉で伝えられる方々です。客観的なマーケット分析だけに基づいたサービス構想だと、私自身、あまり心が動きません。分析はもちろん大事ですが、ご自身の強い「負の感情」や原体験が乗っかったプロダクトでないと、その先の辛い時期を乗り越えられないと考えています。
今後の展望を教えてください!
まず短期的な目標としては、起業家の方々に「何かあったら洪さんに連絡しよう」と認めてもらえる、頼られる投資家を目指したいと考えています。さらにその先の展望は正直まだ具体的に考えていません。
この先も、エマージングなテクノロジー(新興技術)で、私がキャリアを積み上げてきたレガシー産業をどんどん良くしていくサービスが出てくるでしょう。それを自分としても早いタイミングから一緒に携わり、起業家を応援していくのが楽しみです。
スタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
私はこの業界に入ってまだ1年目ですが、このタイミングでよかったと感じています。それは、AIという大きな波が来ているからです。技術の進化が凄まじく早いこの領域においては、3ヶ月前のトレンドすら通用しなくなることもしばしばです。つまり、過去の経験則が効きにくく、ベテランでも新人でも同じスタートラインに立たされる瞬間があります。圧倒的な学習量とスピードさえあれば、後から入ってきた者でも勝てるところもあると考えているからです。
これは起業家の方々も同じで、若いから、あるいは経験が浅いからといって、それがこの領域で不利になるわけではないはずです。むしろ、この新しい波を逆手に取って活かせるところもあるのではないでしょうか。
この大きな波を捉えて、レガシー産業を変えていきたい起業家さんがいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に頑張っていきたいと思っています。お気軽にご連絡ください!

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