
2026-01-06
インタビュー
起業家時代の投資元であるANOBAKAで、全ての経験を起業家支援に
ANOBAKA 原 佑理子さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。
原 佑理子 Yuriko Hara
モルガン・スタンレー証券に新卒入社。法人営業を担当後、国際協力分野へ転身。
UNICEFや国内外のNGOで広報・啓発業務に携わる。フィンテックスタートアップで人事部長を務めた後、2020年に早朝宅配事業を手がける株式会社カノエを創業。2025年4月よりANOBAKAに参画。
パリ政治学院修士課程修了(2014年)、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得後退学(2024年)。投資条件や投資実績がわかる!原 佑理子さんの投資家プロフィールはこちら👇(クリックするとプロフィールを閲覧できます。)
原さんが審査員をされる「QWS STARTUP AWARD 2026」の応募は2026年1月13日(火)まで!

まずは、原さんについて教えてください!
ANOBAKAの原です。
役職は「ポートフォリオマネージャー」で、投資業務だけでなく今組成中の4号ファンドの組成やLP(リミテッド・パートナー)対応なども行っています。
高校生の頃からずっと、「自分で事業をやりたい」と強く思っていました。叔母がオーストラリアの蜂蜜を輸入する小さな会社を経営していて、そこに憧れを抱いていたのがきっかけですね。
大学は経営やマーケティングが学べる慶應義塾大学のSFCを選びました。当時のSFCはプログラミングやベンチャー経営論の授業も充実していたため、ここで学びたいと考えたんです。在学中はダンスサークルにどっぷり浸かり、青春を謳歌する一方、いつか自分で何か事業をという気持ちは常に頭の中にありました。SFCは学生起業家が多く、起業がとても身近で憧れを持てる環境でしたね。
これまでのキャリアを教えてください!
新卒でモルガン・スタンレー証券に入社したのは、とにかく早くビジネススキルを身につけられる職場が良いと考えていたからです。外資コンサルや外資証券が人気だった時代で、そこで揉まれればタフに鍛えられるだろうと思ったんです。
私は経済や金融の勉強をしていなかったので、株式のこともわからない中、株式のチームに配属されました。しかも新卒がいないチームで、メンバーは中途の男性ばかり。たくさん失敗し苦しい思いもしましたが、今振り返れば大変に鍛えてもらった3年間でした。その後、リーマン・ショックの流れでポジションを解雇され、別の外資系金融会社に入りましたが、「この業界でずっとやっていくのはしんどいな」と感じていました。
元々、幼少期にシンガポールに住んでいた経験から国際協力分野に関心があり、キャリアに悩んでいた時、アフリカの国際機関に勤めていた知人から「こっちに来てみたら、世界が変わるよ」という話を受け、ボツワナの支援団体へ行きました。
これを機に、本格的に国連職員になりたいと思うようになりました。国連職員になるには第三言語と修士号が必要なため、東京大学とフランスの大学院で修士号とフランス語を習得するプランを立て、足かけ3年で条件をクリアしました。当時は本当にユニセフ(国連児童基金)で子どものケアに携わりたいという強い思いがあり、そのエネルギーで頑張っていましたね。

念願のリベリアのユニセフでインターンを経験できましたが、到着時にはエボラ出血熱が大流行し、事務所長から身分の保障ができないとして、強制送還で日本へ帰国せざるを得なくなりました。悔しい思いもありましたが、この時、結婚の話が出ていたこともあり、日本でキャリアを再開することを決めました。
帰国後は日本のNPOに入りましたが、カルチャーが合わず、民間企業へ戻りたいと思っていたところ、フィンテックスタートアップのクラウドクレジットからお声がけをいただき入社しました。人事経験は全くなかったのですが、当時の取締役から「人事は会社の顔であり、採用中心のポジションなので、人間性や経験を最大限に生かしていい人材を採る仕事だ」と言われ、ぜひにと。入社から約1年間で、評価制度の構築や上場準備のサポート、30人から60人規模への積極的な採用に関わらせていただき、非常にやりがいのある仕事でしたね。ラッキーな巡り合わせをいただいたと思っています。
クラウドクレジットでの仕事は楽しかったのですが「自分でスタートアップをやりたい」という気持ちは消えず、後の共同創業者となる間部とチームを作り、タイミングも今しかないということで、コロナ禍の2020年に創業。私は36歳。「やるならこれが最後のタイミングだ」という思いもありました。
事業は、夜注文したら翌朝届く、食品の早朝宅配です。当時3兆円規模の生協市場が何十年もスタイルを変えず利用されていて、そこにシェアを取る狙いがありました。コロナ禍で、それまでほぼなかった食品の「置き配」がスムーズに受け入れられるというメリットもありましたね。
ただ、事業としては難易度が高く、事業はクローズしました。従業員の解雇や投資家への対応など、約1年かけて清算処理を行いました。

原さんが投資家になったきっかけは何ですか?
私たちが投資を受けていたANOBAKAから「原さん、キャピタリストをやってみませんか?日本は女性起業家が少ない上に、事業家出身のキャピタリストもほとんどいない。原さんのように女性起業家出身の人が投資家になれば、すごく良いと思う」とお声がけいただいたんです。
ANOBAKAには損をさせてしまったという思いもあり、まさかお声がけいただけるとは思っていなかったので、ありがたいと思い、引き受ける流れとなりました。
私としては、「もう一度スタートアップをやる」ということは考えていませんでした。やりたいことはやり尽くした感もありましたし、生活のこともありましたので。ただ、小さい頃からずっと起業したかったという思いは一定叶えられたと思っています。
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
ANOBAKAはシード特化なので、フェーズはシードしか見ていません。バリュエーションでいうと、基本スタンスとして5億円未満の会社に投資を検討しています。領域はオールジャンルで、やらない領域は特に決まっていません。
社内では役割分担をせず、みんなでオールジャンルを見るスタンスですが、私は女性の起業家さんとお話する機会が多かったり、女性ならではの課題をテーマにした会社が集まりやすい傾向があります。美容や健康の話など、女性の課題は私にとっても解像度が高く、話がしやすい部分があるのかもしれません。
ただし個人的には、私が女性だからといって女性起業家に特化して投資しているわけではありません。性別に関係なく、とにかく「良い事業に投資したい」というスタンスです。
私が考える「良い事業」とは、やはり社会にインパクトを与える事業です。その事業が普及したことで、社会が劇的に変わっていると思えるようなところは、インパクトが非常に大きいと感じています。そのようなチャレンジを、起業家さんと一緒にできたらと思っています。
私の強みは、社内で唯一、起業家サイドにいた経験があることです。起業家さんがその瞬間瞬間に抱える苦しみやつらさ、特に一番しんどい資金調達のタイミングでの気持ちは誰よりもわかると思っています。
ピッチ資料の修正を一緒にやらせてもらうなど、心に寄り添って応援できるのが私の強みです。起業家としてほとんど全てのVCにアタックした経験があるので、どういうところを突っ込まれやすいか、どう準備したら良いかといった資金調達のサポートは得意だと考えています。社長の精神的なケアも含めて一生懸命伴走していきたいですね。
また「言うは易し、行うは難し」の世界だということもよく理解しているつもりです。起業家が「やりたい」と思うことと客観的に「やるべき」ことが一致しない時もあるので、気持ちに寄り添いつつも「この数字を伸ばさないと評価されないよね」といった話は、投資家として伝えるべきだと考えています。リソースや関係者紹介も含めて、共感しながらどう伸ばしていくかを支援することを意識しています。
投資先とのミーティング頻度は、基本的に月1回の定例ですが、大学生の起業家さんなど、相手次第で週に1回の定例を行うこともあります。常に横にいて仕事をするわけではありませんが、困ったときにすぐ連絡して良い環境にある、と思ってもらえたら嬉しいです。
魅力を感じる起業家はどのような人ですか?
魅力的に感じるのは、やはり「今のままじゃ駄目だ」「こういう社会を作りたいんだ」という情熱があり、それを実現しようとひたむきに頑張る方です。
社会課題といっても、ソーシャルインパクトだけでなく、健康課題などもあります。そういったものを変えたい、あるいは大きな市場を作りたいと思っている起業家さん、つまりビッグピクチャーでチャレンジしたいと思っている方は、やはりかっこいいです。
私たちはシード特化なので、必ずしもキャリアがピカピカでなくても、パワーやポテンシャルがある方は山ほどいらっしゃると思っています。学歴や職歴といったバックグラウンドはあまり重要視していません。それよりも、「どういう爆発力を出せる人なんだろう」という点に注目しています。
もし一人で爆発力を出せなくても、チームができたら爆発するかもしれない。その場合は、チーム作りのサポートもします。
人にはいろんなタイプがいて、「このタイプは必ず成功する」という方程式はありません。市場と事業の方向性、いわゆる「勝ち筋」がキラリと光っているか。それに加えて、お人柄を総合的に見て投資判断しています。最終的には、仮に失敗しても「この人になら出資してよかった」と思えるかどうかも、大事なポイントになるでしょう。
完璧なオールラウンダーである必要はありません。「やばい」と言われる要素がどこかにあったとしても、事業を作る嗅覚や能力が抜群に優れているなど飛び抜けて優秀であるか、人と違うことができるといった何かがあれば、そして事業性が良ければ、起業家としてすごくポテンシャルがあると考えます。
今後の展望を教えてください!
投資家としては、引き続き良い事業に投資したいという展望があります。
今は「このポジションに行きたい」という具体的な個人の野望はあまりありません。それよりも、ANOBAKAをより良い会社にしていきたいし、しっかりパフォーマンスを出せる会社にしていきたい。そのためにできることを粛々とやっていきたいと思っています。
例えばポートフォリオマネージャーとしては、ANOBAKAの投資先をどうマネジメントしていくかが重要だと考えています。現在、当社の投資先は220社ほどありますが、将来的には300社近くになる見込みです。300社ものデータが集まるはずなので、そこを紐解いて、よりファンドのパフォーマンスを上げる材料にしていきたいですね。
また、この会社の認知度を上げたいとも思っています。ANOBAKAはシード投資を本当に真面目にやっている会社なので、もっとたくさんのシードの起業家さんに集まってもらい、活性化してもらいたいですね。
スタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
とにかくチャレンジしていることは、それだけで尊いことです。事業が今うまくいかなかったとしても、胸を張って生きていけばいいと思います。
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