
2024-01-31
インタビュー
変革者である起業家へのリスペクトで投資し、本質的な支援を届ける
エンジェル投資家 河合聡一郎さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はエンジェル投資家の河合聡一郎さんにお話を聞きました。
河合聡一郎
株式会社ReBoost 代表取締役社長。大学卒業後、印刷機械メーカー、リクルートグループを経て、株式会社ビズリーチの立ち上げ期を経験。その後、外資系IT等を経てラクスル株式会社の創業メンバーとして参画。人事マネージャーとして経営幹部を含めた採用戦略の策定/実行、人事評価制度構築、採用広報、Valueの浸透施策の実施など幅広く会社創りに従事。2017年、株式会社ReBoostを創業。スタートアップや上場企業を中心に、採用戦略や人事組織戦略の策定から実行までをハンズオン型で支援。国内外を合わせて30社以上のエンジェル/LPとしての出資、VCとの連携を通じて、出資先の人事領域を支援。2021年より、経産省のスタートアップ向け経営人材支援事業、SHIFT(X)審査委員。2023年より、「J-Startup KANSAI」メンター就任。Forbesの連載企画、「私がこの投資家に投資した理由」の2023年12月号に掲載。投資条件や投資実績がわかる!河合聡一郎さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)
河合さんが審査員をされる「QWS STARTUP AWARD 2025」の応募は2025年1月14日(火)まで!

まずは、河合さんについて教えてください。
株式会社ReBoostの代表をしております、河合と申します。ReBoostでは、上場/未上場を問わず累計100社以上の、主にスタートアップ企業を中心に、組織/人事戦略から採用戦略/人事評価制度などの策定とその実行を通じて、創業者のビジョン実現に向けた、組織創りに伴走してきています。
実は社会人の前半は、70年ほど続く家業の印刷機械の商社を継ぐ前提でキャリアを選択してきました。新卒で印刷機械メーカーに入り、リクルートグループに転職しました。その後は、ビズリーチの立ち上げ期を経験させて頂いたり、短期間ではありましたがセールスフォースに在籍していました。
そろそろ家業を継ごうかと、また印刷機械メーカーに入社したのですが、ご縁がありラクスルの創業メンバーとして約7年半、人事領域を中心に幅広く会社創りに従事しました。その後、7年前に創業して現在に至ります。
河合さんがエンジェル投資家になったきっかけは何ですか?
ラクスル在籍中、スタートアップの経営者の皆さんを始めとして、色々な形で人事組織について相談を受けていました。今で言う、副業のような形ですね。もちろん本業に支障がない範囲でわずかな時間ではありますが、壁打ちだったり、少し実務のフォローだったりと。
その中の一人で当時フリーランスだった方から「法人化をしようと思います。河合さんにも、より関わってほしいので、出資していただけませんか」と言われて「あーいいよ!頑張って!」くらいのテンションで銀行口座にお金を振り込んだのが最初でした。私自身も長らくスタートアップにいたので、資金調達がどういうものだとかは当然知ってはいたんですが、当時はバリュエーションも何も気にしませんでしたね。
有安さんも記事内で仰っていましたが、「寄付のような感覚」とは言い得て妙だなと思います。金額も当時の自分で出せる範囲で、シンプルに応援の気持ちでした。
2社目以降はどのようなきっかけで投資されたんですか?
2社目以降はReBoostを創った後でした。尊敬しているVCでもある、ANRIさんと色々とご一緒する機会が多かったのですが、出資先に人事に関するアドバイスをして欲しいということで何社かご相談に乗っていたんです。その中の1社から「河合さんにもっとコミットしてほしい。株主になっていただけませんか」とご依頼いただきました。
起業家からすると「この人は出資をする人なのか?」と言う部分は、気になるかもしれません。私は先ほどお話したようにラクスル時代に1社出資しているので、それをお伝えしたら「河合さんは出資も可能な人なんだ」と認識をしていただき、結果的に「ぜひお願いします!」という、ありがたいご縁になりました。そして、その出資がプレスリリースとして出たことがきっかけで、VCや知り合いの起業家などから次々とお声がけや、ご相談をいただくようになりました。
自分に声がかかった理由を考えてみたのですが、経営する上でHRがものすごく重要な要素である中で、当時は「スタートアップの立ち上げ期や創業メンバーの経験があり、非常に素晴らしい会社に成長していることや、その中で人事の実務経験があり、色々なアドバイスができて出資もしている人」が珍しかったので、紹介が広がっていったんだと思います。
なので私は、エンジェル投資家になろうと思ってなったというより、「結果そうなっていた、そう言ったラベルが付いている」というパターンですね。多くのエンジェル投資家がそうであるように、スタートアップエコシステムの中で自分が持つお金や知見や経験を循環させ還元していきたい、応援したいという思いが強いです。

(写真:出資先とディスカッション)
現在はどんなところに投資をしていますか?
マーケットサイズも大事かもしれませんが、そもそも創業期やシード期に出資をすることがほとんどです。ビジョンやミッションに共感することを大前提に、ビジネスモデルを問わずシンプルに私自身が「便利ですね!」と感じたものに出資させていただくことが多いです。ビジネスモデルが魅力的でも、「このサービスがあったら世の中がこんなふうに良くなるな」と私が解像度高くイメージできない場合、出資をしない傾向にあります。
出資の初期は、シェアリングサービスやプラットフォームビジネスなど、自分の好きな分野や得意な分野から始めましたね。わかりやすいし、過去の知見を活かせるので。そこから徐々に、先ほど申し上げたように「あったら良いな」と感じたサービスやモノを作られている企業に出資先を広げてきたので、ポートフォリオは業界やビジネスモデル問わず、結構幅広く見えると思います。
自分でも認識している部分ですが、HR領域の企業はかなり厳しく見ていると思います。起業家の方には絶対に成功して欲しいと願う中で、難しさも面白さも何が壁になるのかもある程度の理解があるので、起業家の方の想いを最優先に、それらを全てをお伝えした上でどのくらいのサイズのHRサービスをやりたいのかを率直に問います。私のバックグラウンド的にHR領域の企業からお声がけいただくことが多いので、数が多いという意味でも目線は厳しいかもしれません。もちろんその領域の起業家にも、数社出資をさせて頂いています。
また、複数人で起業されるスタートアップには必ず2つ質問をします。1つ目は「どういう背景でこのチーム構成になっているのか?」です。創業期はもちろん1人で何役も担うことは前提で、それぞれが何を専門として、どの領域をメインで担っているのかがクリアになっているかどうかを見ます。もう1つは「皆さんがどんな時でもブラさない共通の軸は何ですか?」と聞きます。
この2つを聞くことで、うまくいかなくなった時にどんなアクションをするチームなのかを立体的にとらえたいなと思っています。質問の答えによっては、組織創りで起きるポイントなどもお伝えして、リスク回避をなるべくした上で出資の検討をします。
投資先とはどのような関わり方をしていますか?
出資先にはハンズイフで組織創りにおける様々なサポートをします。後は資金調達における資本政策やVCさんとのアレンジなんかも、リクエストがあればフォローします。困ったら何でも相談に乗りますよと。限度はありますが、基本的にはReBoostの支援内容を無償で行っているイメージです。
具体的には、組織図や採用戦略を一緒に考えたり、幹部候補の面接に一緒に出たり、候補者のアトラクトなんかもやります。人事評価制度やValueを一緒に作りや、メディアでの対談、出資先が主催のイベントで登壇したこともありました。あとは、出資先の全社合宿に参加して、社員の皆さんが会社を立体的に見られるようにサービスや経営陣の良さについて私の目線で話したりもしましたね。私のことは好きに使ってください、というスタンスです。

(写真:出資先の起業家が主催するイベントに登壇)
河合さんはHR領域を外から支援する心強い味方なんですね
外から支援する良さは、冒頭にもお伝えした通り、自分の経験とReBoostとして100社以上の支援をしてきたことでn数があるので、それを共通言語化したフレームが提供できることですね。スタートアップが組織としてぶつかる壁って大体一緒で。事業領域は様々あれど、起業家のタイプとビジネスモデルとフェーズの掛け合わせで、起きる組織問題って結構決まってるんですよ。そこに自分の知見を型化してフレームやチェックリストを提供し、どう言う壁にぶつかるか、回避することもできるし、どう乗り越えるかのフォローなど、貢献できる良さはあります。
反対に難しさもあります。もちろん主役は起業家やメンバーなので、発生した事象の裏で起きたことを全部把握するのは不可能だという点ですね。もちろん、先のチェックリストを使って立体的に把握するアプローチはありますし、できるだけ拾おうとしますが、全ては拾いきれないので。ただ、「会社が成長しているから起きている壁だし、〇〇さんだけではないから安心して乗り越えよう!」と言ってあげられるのは良さですよね。
総じて、HR支援はとても面白いです。事業戦略とHR戦略を紐づけて考えるのが好きなので、難しさはあれど引き続きこのスタイルで活動していきたいと思っています。
魅力を感じる事業や起業家はどのような人ですか?
「この人から夜の12時に電話がかかってきても出たいと思うか」が判断基準になっています。
わかりやすく分解すると4つ要素があります。
1つ目は「コーチャブルであること」です。好奇心を持って、常に学びたいと考えているか、アドバイスを一旦受け止められるか、受け止めて実行できるかどうか。あとは、起きた事象から何を感じ取って次に活かしていくか。私は意見を一方的に押し付けることは絶対にしないので、だからこそ私の意見を一旦受け止めてどう取り入れるか考えられる起業家でないと、意味がないと思っています。
2つ目は大きなミッション・ビジョンを持っている方。「これが自分の使命だ」という使命感や、そこから生まれる熱意を強く持っている方。これまで本当に心から尊敬する経営者2人と近くで一緒に働かせていただいて、この要素は本当に重要だと思っています。
起業家って、誰にも頼まれていないのにあんなに多くの壁にぶつかり続けることを自らやるわけじゃないですか。その根底には「これは私じゃなきゃダメなんだ!」「これは絶対こうなるんだ!」という大きいビジョンや大義がある。それに触れると素直に「この人すごいな」「力になりたいな」と思っちゃいますね。
3つ目は、弱いところを見せてくれるかどうかですね。「ぶっちゃけキツいっす」「他の株主には言えなくて…」と弱音をちゃんと吐いてくれたら、「俺も一応株主なんだけどね!?立場的には!」なんて冗談を言いつつ、全力で相談に乗ります。私の前でまでかっこつけなくていいです。役割が違うだけでそもそもフラットな関係であるべきですし、起業家は其のチャレンジの過程で大変なのは理解をしているつもりです。
最後4つ目は、人を巻き込めるかどうかです。チームを作る力とも言えますね。3つ目とも連動してきますが、人に弱いところを見せられて、その結果人を動かせる。チャーミングさとも言えるかもしれません。そして何より、「誠実」であることはとても求めます。
よく、マーケットサイズの大きさや地頭の良さやリーダーシップが大事だ!などと言われていると思いますが、正直シードのタイミングではそこまでわからないので、上記4つがあれば十分です。とはいえ、この4つを兼ね備えている人は、それだけでどんなビジネスでもうまくいくだろうなとも思います。

(写真左:出資先の起業家と共通の趣味であるバスケ、右:出資先の起業家同士を引き合わせる会)
今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
まず私自身で言うと、自分も手を動かしながら、出資先に対して強みであるHR領域の知見を活かして、スタートアップを応援していきたいです。
スタートアップがこれだけ世の中的に注目されてきたことを素晴らしいと思っています。今後は、起業やスタートアップで働くということは、どんどんキャリアの選択肢に入ってくるはずです。そんな中で単にアドバイスをするだけでなく、一緒に実務をやりながら貢献できることを探して増やして、そして深めていきたいですね。
私にとってエンジェル投資は「起業家へのリスペクト」です。私は基本的に創業期に出資をするので、最初の何もない時に「あなたを尊敬しています。あなたのチャレンジを応援します」という意味でエンジェル出資をしています。世の中を良くしようと新しいことにチャレンジする方に、最初の応援者として、出資を通じて彼らのビジョンやミッションの達成に少しでも関われたらいいなと思っています。
HR領域の知見は、ファイナンス同等に一定の再現性のある領域だと思っています。なので、時代に合わせながらこれを進化させていきたいです。そして起業家とは、ビジネス関係とも友人ともまた違う「戦友」のような形で応援していきたいです。
また、私は個人的なルールとして一つだけ「投資先のグルーピングや定期的な飲み会」をやらないと決めています。起業家はめちゃくちゃ忙しいので、その有限な時間と労力を事業と顧客と組織のために使ってほしいと強く思っているんですよね。
もちろん、領域は違えどビジネスモデルが近しいので話を聞いてみたい。一緒に食事をして意見交換をしたいと言うご相談には全力で応えます。プライベートで共通の趣味があれば、喜んで一緒に取り組んだりもします。ただ、基本的には1対1でのサポートが多い傾向ですね。
大前提ですが、これはあくまでも私が大切にしているスタンスなので、色々な方が色々な視点での支援スタンスがあると思います。どれが正解なのかもあるわけではないなと思っています。どんな支援もそうですが、どんな意図で何のために行われるどのような内容の支援か次第です。ただ、私の信念としては起業家が本質的に事業を成長させるための時間をとれるように追求しています。

(写真:出資先の創業メンバーと組織のディスカッションを兼ねた食事)
スタートアップ起業家へのメッセージですが、皆さんは世の中をより良くしようとする「変革者」だと思っていまして、そういう熱量を本当に尊敬しています。大変なこともあると思うんですが、起業を通じて事業を創り出して、世の中を変えていくというプロセスはすごく楽しいと思います。本当に素晴らしいことだと思っています。挑戦する皆さんを、私は心から尊敬しています。
時代とともにビジネスという意味でも、経営者という意味でも求められることが変わっていくと思いますが、起業を決めたDay1の思いや熱意をぜひ大切にしてください。
Startup Nextを運営するスマートラウンドでは、スタートアップが無料で使えるデータ共有プラットフォーム「smartround」を提供しています。株主総会や資本政策など、少しでも業務を効率化したい方は無料登録の上、ご利用ください。
またその他にも、スタートアップ向けのお役立ち資料・テンプレートをご用意しています。ダウンロードはこちらから。


















