
2025-10-20
【弁護士監修】スタートアップで求められるコーポレート業務まとめ
スタートアップの成長過程では、資金調達から組織の拡大、日々の運営に至るまで、様々な重要なイベントが発生します。これらのイベントを円滑に進めるためには、コーポレートセクレタリー、経理・財務・税務、労務といったバックオフィス部門間での密な連携が不可欠です。
本記事は、スタートアップの経営者が知っておくべき主要なイベントごとの各部門の対応業務を俯瞰してまとめたものです。各部門の役割を理解し、効率的な経営体制を構築する一助となれば幸いです。
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注意事項
・本コラムは法的助言を目的とするものではありません。個別の案件については、専門家に各々固有・格別の事情・状況に応じた適切な助言を求めてください。
・本コラムは日本における一般的なスタートアップの実務を想定して記載しています。ここでいうスタートアップとは上場前の、非公開企業でイノベーションにより急成長を目指す社歴の浅い株式会社を想定しています。本記事の監修
武田 竜太郎
弁護士、公認会計士試験合格者慶應法学部卒・司法試験合格。TMI総合法律事務所でM&Aやコーポレートを担当後、公認会計士試験に合格しEYで金融機関・VC案件の監査やアドバイザリー業務に従事。
その後DLA Piper Tokyo Partnershipにて、スタートアップの資金調達・投資契約・M&Aを多数サポートし、国内外投資家との交渉にも携わる。
現在は上場企業やIPO準備企業の社外役員を務め、法務と会計の知見を融合し、資金調達から組織体制づくりまで伴走。また、横浜を拠点に、介護業界向けM&A・事業承継サポートにも取り組んでいる。
1. 資金調達
企業の成長に不可欠な資金調達は、投資家との交渉や契約書の作成をするイメージからコーポレートセクレタリー業務の比重が大きいように思われますが、資金調達の方法によっては多岐にわたる部門連携を要します。
株式発行による資金調達
株式を発行し、投資家(個人・事業会社・ベンチャーキャピタル)がそれを引き受ける形で資金を調達する方法です。会社の運営に係る重要な決定であり、場合によっては定款の変更や、株主総会の決議が必要です。
コーポレートセクレタリー対応業務
・新規株主との契約書作成
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・必要に応じた定款変更(新たな種類株式を発行する、発行可能株式数を変更する場合など)
・取締役会(取締役会非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請
・資本政策表および株主名簿の更新 など
経理・財務・税務対応業務
・税理士または会計士への情報連携
・払込金の資本金/資本準備金への按分仕訳
・登記申請に使用する払込証明書作成のための口座明細取得 など
労務対応業務
・(自社従業員に株式を発行する場合)給与台帳・賞与台帳への記録
・源泉徴収や年末調整での取り扱い確認
・社内規程(就業規則・報酬規程など)の整備
・退職時の取り扱い確認 など
DES(デット・エクイティ・スワップ)
借入金を株式に転換するDESは、個人投資家などから創業当初に融資を受けた金額の一部もしくは全てを株式に転換するもので、該当投資家との合意のもと、主にシード期によく用いられる方法です。こちらも、株式発行による資金調達と同様に複雑なプロセスを伴います。
コーポレートセクレタリー対応業務
・株価算定の検討
・転換価額と割当株式数の確認
・契約書作成
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・必要に応じた定款変更(新たな種類株式を発行する、発行可能株式数を変更する場合など)
・取締役会(取締役会非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請
・資本政策表・株主名簿の更新 など
経理・財務対応業務
・借入金残高の確定
・払込金の資本金/資本準備金への按分仕訳 など
労務対応業務
(役員・従業員が個人で会社に貸し付けていたケース)
・源泉徴収の要否や社会保険料算定基礎への影響を検討 など
2. 資本構成の変更
会社のフェーズが進んでくると、資本構成の変更が企業の財務戦略において重要な意味を持つことになります。下記に代表的な変更について、それぞれの対応業務をまとめます。
減資(資本金・準備金の減額、剰余金の処分)
フェーズの若いスタートアップでは、資本金が1億円を超える場合、外形標準課税を考慮し、かつ株主の不利益にならない方法で減資を行うことが一般的です。また、資本金が5億円以上となる場合、会社法上、会計監査人の設置が必要になるため、やはり減資を行うことが一般的です。
コーポレートセクレタリー対応業務
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・取締役会(取締役会非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請 など
経理・財務対応業務
・税理士または会計士への情報連携
・減資差額の仕訳(資本剰余金からその他資本剰余金への振替や欠損填補)
・機関決議、登記申請用に効力発生日の数値作成
・貸借対照表の注記更新 など
株式分割・併合
シリーズA以降になると、株式分割によって1株あたりの価格を下げて株式の流動性を高めたり、逆に株式併合によって株価水準の調整や、株主構成の整理を行う場合があります。
コーポレートセクレタリー対応業務
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・必要に応じた定款変更(発行可能株式数を変更する場合など)
・取締役会(取締役会非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請 など
経理・財務対応業務
・税理士または会計士への情報連携
・1株当たり当期純利益や純資産の変動数値の算出 など
3. 新株予約権(J-KISS・ストックオプション)発行・管理
J-KISSは、新株予約権を交付することで、次回の資金調達ラウンドまでのブリッジ資金を迅速かつ円滑に確保するためのスキームです。
ストックオプション(以下、SOと表記)は、採用における人材獲得や、既存従業員の功績に対して付与することが多い重要なインセンティブですが、発行前の設計や実際の発行時の実務、付与後の管理などがやや複雑になっています。
また、税制適格SO発行前には株価算定が必要、SOプールを設定する場合には経済産業省が認定するSOプール制度へ申請し確認書の交付が必要になるなど、付随する業務もあります。
J-KISS・SO発行
コーポレートセクレタリー対応業務
・(SOの場合)株価算定の検討、実施
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・投資家との契約書作成
・割当契約書作成
・取締役会(取締役会非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請
・資本政策表および新株予約権原簿の更新
・「募集新株予約権の機動的な発行(ストックオプション・プール)に関する制度」申請 など
※SO発行時の株価算定の必要性についてはこちらの記事をご覧ください。
▶︎スマートラウンドが提供する株価算定サービスについてはこちら。
経理・財務対応業務
・権利確定期間に応じて株式報酬費用を按分計上
・行使・失効時の仕訳・税務処理 など
労務対応業務
・行使時の源泉徴収
・住民税計算
・退職時の失効処理 など
SO発行後の管理
コーポレートセクレタリー対応業務
・権利確定期間の管理
・関連するドキュメントの管理 など
労務対応業務
・付与後の在職要件チェック
・権利行使申請窓口としての対応
・法定調書など税務署提出書類の準備 など
4. 組織・人事関連
取締役・監査役の選任や解任、報酬改定
取締役・監査役の選任や解任、報酬改定などは企業のガバナンスに関わる重要な決定です。しかし、取締役や監査役には定款で定めた任期があり、任期満了を迎えた株主総会での再任決議が必要ですが、ここが忘れがちなポイントなので注意が必要です。
コーポレートセクレタリー対応業務
・取締役、監査役の任期の管理
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・取締役会(非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請 など
労務対応業務
・報酬改定に伴う給与計算
・社会保険料の再計算
・役員報酬改定議事録の労働基準署・年金事務所への提出 など
本店移転
移転する地域、定款で本店所在地をどこまで詳細に記載しているかによって対応方法が変わります。
コーポレートセクレタリー対応業務
・定款変更
・(必要な場合)既存株主から事前承諾を得る
・取締役会(非設置の場合は取締役決定)、株主総会など機関決議の実施
・登記申請 など
労務対応業務
・就業規則の労基署再届出
・社会保険の管轄変更
・通勤手当ルールの見直し など
5. 月次・年次決算と株主への報告
事業年度ごとに作成する年次決算は、定時株主総会での承認が必要です。
また、株主間契約書によっては月次、四半期ごとの決算書を株主へ報告することが定められている場合があります。
コーポレートセクレタリー対応業務
・契約書の定めに沿った(毎月、四半期ごとなど)投資家への報告
・経理担当から年次計算書類が連携されたら取締役会承認、監査役承認、株主総会承認を得る
smartround「経営管理」に数値を入力、もしくはAPI連携(※)を行って自動で数値を反映すれば、smartroundの画面を直接投資家へ共有できます。
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※API連携では、会計ソフトであるfreee会計、マネーフォワードクラウド会計、マネーフォワード クラウド会計Plusとの連携が可能です。
経理・財務対応業務
・会計ソフトへの入力
・税理士と連携して月次、年次計算書類一式作成
(年次決算は事業年度末から2ヶ月以内を目安に作成)
・年次計算書類一式が完成したらコーポレート担当に連携
まとめ
ご紹介した各業務は、それぞれ独立しているようで、実際には密接に連携しています。
将来のIPOなどを見据えた経営のためには、それぞれの業務にかかる機関決議や報告、手続きを漏れなく遂行していくことが重要で、漏れがあることで資金調達が叶わないことや、IPOに影響を与える可能性があります。
スタートラウンドではこうした各業務の必要時期、実行するスケジューリングや実務、機関決議の開催リマインドや実務自体を代行する「コーポレート代行サービス」を提供しています。
まずは「自社が何を対応すべきか」「どのように対応すべきか」からご相談を承っております。

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