2024-12-17

      【知っておきたいストックオプションの基礎】スタートアップ経営者のための株価算定ガイド

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      スタートアップにとって、資金調達や人材確保に不可欠な「株価算定」。
      正しく理解し、実務に活かしていくためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。

      今回は、2024年10月24日に公認会計士・税理士の大野修平先生をお招きして開催したセミナー「スタートアップ経営者必見!株価算定のキホンを学ぶ勉強会」から、株価算定の基礎からストックオプション(SO)活用のポイントまで、スタートアップの経営者に特に役立つ内容を解説します。

      以下に当てはまる方には、特におすすめの内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

      ・株価算定の基本を知りたいスタートアップ経営者の方
      ・SOの発行を検討しているスタートアップの方、発行を支援する士業の方
      ・税制適格SOと税制非適格SOの違いについて理解を深めたい方
      ・企業価値の評価方法について学びたい方

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      大野 修平さんプロフィール

      公認会計士・税理士/セブンセンス税理士法人(https://seventh-sense.co.jp/ ) ディレクター

      大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。

      トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。

      また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。

      さらに、セブンセンス税理士法人が運営する『セブンセンスビズマガジン(https://consulting.seventh-sense.co.jp )』では、ビジネスに関する様々な情報を発信し、中小企業やスタートアップのお悩み解決にも力を入れている。


      株価算定の必要性

      近年、スタートアップでは、資本政策や従業員へのインセンティブ制度としてのストックオプションが浸透しています。そして、そうしたSOの発行にあたっては株価算定が不可欠です。
      また、税制や会計基準に則った適切な株価算定ができることで、企業としての透明性が増し、投資家からの信頼も得られやすくなります。

      先日、税制適格SOに関する新ルールが導入され「SOの発行時に債務超過であれば株価算定をする必要はないんですよね?」と質問されることが増えましたが、これは大きな誤解です。

      債務超過の状態であっても、税制適格SOであっても、株価算定は必要です。

      本日はこのことをお伝えしたく、セミナーを開催させていただきました。
      ぜひ本日はセミナーを通じて、株価算定の実務的な知識を深めるお手伝いをできればと思います。

      ストックオプション(SO)とは? 基本的な仕組みとそのメリット

      ストックオプション(以下SO)とは、新株予約権の一種で、企業の株式を決められた価格で買う権利のことです。通常の株式と同じように、株価が上昇した際に株式を売却すればその差額が売却益(キャピタルゲイン)となります。

      例えば、A社の株式を200円で買えるSOがあるとします。
      A社の株価が1,000円だとすると、SOを行使して200円で株式を購入し、すぐさま売れば、800円の売却益を得ることができます。

      あくまで、SOは権利であり、義務ではありません。
      上記のケースであれば、株価が200円未満の場合はSOを行使しないことも可能です。
      つまりストックオプションは損失が限定的にも関わらず、大きな利益を得られる可能性があるといえます。

      ストックオプション(SO)の重要な要素①価格

      SOには無償で付与される場合と有償で購入する場合があります。

      有償で購入する場合の購入価格を「発行価格」といい、SOを行使して株式に転換する際に払い込む価格のことを「行使価格」といいます。

      ストックオプション(SO)の重要な要素②時点

      SOを付与(または購入)した時点を「付与時点」、行使して株式を購入した時点を「権利行使時点」、購入した株式を売却した時点を「譲渡時点」と呼びます。

      権利行使時点と譲渡時点が近ければ近いほど早く利益が得られますが、必ずしも、権利行使後すぐに売却できるとは限りません。そのため、売却までに「未実現利益」が発生することが一般的です。この「未実現利益」がストックオプションの種類における課税段階での重要なポイントになります。

      ストックオプションの種類

      ストックオプションは、有償で発行する有償SOと無償で発行する無償SOに分かれます。そして無償SOは、さらに税制適格SOと税制非適格SOに分けることができます。

      今回の勉強会は税制適格SO発行時の株価算定を念頭に開催していますので、有償SOには触れず、無償SOの説明だけに絞っていきたいと思います。

      税制非適格SO

      税制非適格SO、つまり税務上なんの対策もしていないSOが通常通り課税されるとどのようになるのかご説明します。

      大前提の話にはなりますが、勤務先から何らかの現物の支給がある場合、その支給時点で給与所得の課税対象になります。
      ただし、譲渡制限が設けられたSOの場合、売却するなどして所得を実現できないため、原則SO付与時には所得が認識されず、課税も発生しません。

      しかし、無償SOの場合、権利行使時に金銭的な負担が発生しないため、職務遂行に対する対価と見なされます。
      このため、「権利行使時点」で実際に利益を得ていないにもかかわらず、権利行使時点の株価から行使価格を差し引いた金額(未実現利益)が給与所得として課税対象となります。

      さらに株式を売却する際には、株式譲渡益に対して約20%の譲渡益課税が課されます。

      給与所得は超過累進課税といって、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みとなっています。

      税制適格SO

      取得時に金額の払い込みが必要な有償SOや、権利行使時に給与として課税される税制非適格SOのデメリットを補完するものとして導入されたのが税制適格SOです。

      税制適格SOは一定の要件を満たすことにより、権利行使時点の未実現利益への課税を繰り延べ、株式譲渡時点で株式譲渡益として課税されます。

      未実現時点、つまりまだキャッシュを得ていない時点での課税がないため、キャッシュ・フローに無理が生じることがなくなりますし、実現時の課税も給与所得のような超過累進税率ではなく、約20%の譲渡益課税なので負担税額も抑えられることになります。

      税制適格SOの主な要件は以下の通りです。

      1.無償で付与されること
      2.役職員等に付与されること(※社外高度人材の範囲が拡充)
      3.付与決議から2年後~10年後(特定の場合15年後)までに権利が行使されること
      4.権利行使価格が付与時点の株価以上であること
      5.権利行使の合計金額が年間1,200万円を超えないこと(※引き上げにより一定の場合は2,400万円または3,600万円まで可能)
      6.他者への譲渡が禁止されていること
      7.権利行使により取得した株式は証券会社等に保管委託されること(※譲渡制限株式については、株式会社による管理も可能)
      
      ※は令和6年度改正の内容を含みます

      ストックオプション(SO)の課題

      しかしながら、SOの付与にあたっては、以下のような課題もありました。

      ・バイネームで付与するため、付与段階に在籍している人にしか割り当てられない
      ・SO付与時点では、その後の会社への貢献度が不透明
      ・付与時期が遅くなると行使価格も上昇するため、ステージが進むとインセンティブ効果も薄まる

      3点目については、以下のような前提条件で考えるとわかりやすいです。 

      • シード期の株価 200円 (SOの権利行使価格も200円)
      • レイター期の株価 900円 (SOの権利行使価格も900円)
      • 株式売却時の株価 1,000円

      この例においては、シード期にSOを付与された人の売却益は800円ですが、レイター期にSOを付与された人の売却益は100円となります。

      にもかかわらず、シード期に付与された人のほうが会社への貢献度が高いかといえば、そうとも限りません。せっかくモチベーション向上のために導入したSO制度が、従業員の不公平感を醸成してしまうのでは本末転倒です。

      信託型SOの定義と課税を巡る議論

      そこで、従来のSOの課題を解消するために生まれたのが「信託型SO」です。

      信託型SOでは企業は任意のタイミングでSOを発行し、そのSOを一旦信託銀行等にプールしておきます。こうすることで、行使価格が低いSO、つまりモチベーション向上効果の高いSOを確保しておき、適切なタイミングで、会社への貢献度の高い人へ割り当てることができるようになりました。

      そして、信託型SOは税制適格SOと同様に給与課税もなく、必要なのは売却時の譲渡益課税だけだろうと考えられていました。

      当初の信託型SOの仕組み

      しかし、2023年5月29日に行われた国税庁と経済産業省による説明会で「信託型SOでも、実質的には会社が役職員にSOを付与しており、役職員は労務の対価としてこれを受け取っていることになる。よって給与課税対象と見なされる」という国税庁の立場が明らかにされ、既に信託型SOの権利行使が行われていた企業は、遡って納税義務を負うこととなりました。

      2023年5月29日に行われた国税庁と経済産業省による説明会以降の信託型SOの仕組み

      現行の信託型SOの課税関係

      このあたりの説明については、私のX(旧Twitter)の投稿(https://x.com/Shuhei_Ohno/status/1666780216772132864 )も合わせてご覧ください。

      セーフハーバールールの登場

      信託型SOで想定されていた課税関係が否定されると同時に、スタートアップ(未上場会社)が発行する税制適格SOの権利行使価格の決定のための株価の算定において「セーフハーバー」が設けられることとなりました。

      「権利行使価格の決定のための株価の算定」というのはどういうことかというと、前述の通り、税制適格SOの権利行使価格は付与時点の株価以上でないといけないというルールがあります。

      つまり権利行使価格を決定するためには、株価を算定しなければならないということです。

      そのため、セーフハーバーが発表される以前は、DCF法などで株価を算定し、その株価と同額を権利行使価格とするのが一般的でした。

      今回のセーフハーバーにおいては以下のようなルールで「権利行使価格算定における株価」を算定できるようになりました。

      1.純資産価額方式(もしくは類似業種比準方式)で算定することが認められた
      2.純資産価額方式の場合には、優先株式の優先分配額を控除して普通株式の価値を算定する

      本ルールは従来の算出方法を簡易化するもので、累積赤字を抱えて純資産価額が少ない多くのスタートアップにおいては、株価をゼロまたはマイナスとすることができ(※)、株価をより低く設定することが可能となりました。

      ※株価がゼロまたはマイナスの場合は、記録に残すために1円とするケースが多いです。

      ここまでご説明すると、セーフハーバールールが適用される税制適格SOの発行時に債務超過であれば、株価算定はしなくて良いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、税制適格SOでも株価算定は必要です。

      なぜ債務超過のスタートアップでも株価算定が必要なのか

      セーフハーバールールはあくまで税制適格SOの権利行使価格を決定する「税務についてのルール」です。税務は日本国内の事情である程度変更が可能ですが、「会計上のルール」は世界基準となっており、そう簡単に変更できません。

      会計上、今まで非上場企業は、本源的価値(=株価と権利行使価格との差額)がゼロであれば、株式報酬費用を計上しなくてよいというルールになっていました。通常、権利行使価格は株価と同額で設定しますので、この場合には本源的価値はゼロとなります。

      ところが、セーフハーバールールで算定した株価は、本来の株価(例えば、直前の資金調達での適正な株価)を大きく下回る可能性があります。

      この場合の対応として、日本会計士協会(JICPA)は、会計上は本来の株価が、セーフハーバールールで算出した株価(=税制適格SOの権利行使価格)を上回っている場合には、差額について株式報酬費用として費用計上しなければならないと整理しました。

      会計上のルールを遵守するためには、株式報酬費用算出に必要な「本来の株価」を設定するために、株価算定が必要となります。

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      株価算定の基礎理解

      それでは、具体的に株価の算定はどのように行われるのでしょうか?

      企業の株価算定を理解するためのポイントとして、「金の卵を産むニワトリ」の例えを用いて考えてみましょう。

      現在価値と割引率

      現在価値

      毎年100万円の「金の卵」を産み続けるニワトリがいます。
      このニワトリには寿命はなく、永遠に生き続けるものとします。
      このニワトリを買うとしたら、あなたはニワトリにどのくらいの価値があると考え、いくらで買うでしょうか?

      通常、1個100万円の卵を産むのだから、その卵の合計が価値であると考えると思います。しかし、このニワトリは永遠に生きるので、毎年100万円の卵を永遠に産み続けることになります。そうすると、このニワトリの価値は無限大になるといえるでしょうか?

      ここで必要になってくるのが「現在価値」と「割引率」という考え方です。また別の例を使って説明していきます。

      「割引率」を用いた現在価値の計算

      次は、私があなたに100万円あげると言ったとします。
      さらに、今日あげるか、1年後にあげるか選んでと言います。
      あなたなら、どちらを選びますか?

      おそらく「今日欲しい」と言う方が多いと思います。
      私は来年も気は変わらないですし、来年になっても「100万円あげる」 と言ったことを忘れません。また、来年も間違いなく生きています。

      それでもあなたは「今日欲しい」というでしょう。それはなぜでしょうか?

      おそらくこう考えるのではないでしょうか。
      今日100万円もらって、それで利息を0.5%受け取れる国債を買うとします。
      そうすると、1年後には100万円の国債に加えて、5,000円の利息が手元に入ります。

      つまり、1年後に100万円もらうよりも、今日100万円をもらって国債で運用したほうが、1年後の財産は5,000円多くなるということです。

      したがって、今日100万円もらうか 、1年後に100万円もらうかという問いでは、圧倒的に前者が選ばれるということになります。


      この偏りを防ぐには、下記のように選択肢を同等にする必要があります。
      ①今日100万円もらう ② 1年後に100万5千円もらう

      こう考えると、今日の100万円と釣り合うのは、1年後の100万5千円ということになります。

      これを逆に未来からの視点で見ると、
      ① 今日99万5,025円もらうことは、 ②1年後に100万円もらうことと同じになります。

      つまり、1年後の100万円と釣り合うのは、今日の99万5,025円ということです。

      なお、99万5,025円は、『100万円÷(1+0.5%)=99万5,025円』 で求めることができます。

      このように、将来の価値(100万円)と釣り合う現在の価値(99万 5,025円)を計算(100万円÷(1+0.5%))することを「割引く」と言います。

      そして、割引計算に用いた0.5%のことを「割引率」と呼びます。

      金の卵を産むニワトリの価値の計算方法

      割引率についてご説明したので、改めて先ほどの「金の卵を産むニワトリの価値」の話に戻って、金の卵の「現在価値」を算出してみましょう。

      金の卵の現在価値を算出するために必要な割引率は、ニワトリに寿命はなく必ず100万円を産み落とすという点を考慮すると、安全資産である国債と同程度と考えることができます。 そのため国債の割引率が0.5%なら、割引率は0.5%を用いることができます。

      1年後の100万円の価値を割引率を使って現在価値に換算すると、99万5,025円となり、さらに2年後の100万円の価値を99万75円と計算していきます。こうして各年の収益の現在価値を合計することで、金の卵の価値が求められます。

      2年後の現在価値を算出する場合は、1年後に得た利息を再投資して2年後時点から1年後時点までで0.5%を割り引く形で計算します。

      しかし、永遠に各年ごとで足し上げるのなら、やはり無限大の価値になるのではないか?と思われた方もいるのではないでしょうか。
      そこで、実際に1年後から20年後の金の卵の価値を現在価値に直した表を見てみましょう。

      割引係数の計算式は「(1+割引率)^年数」となっています。
      この割引係数を金の卵の価値に掛け合わせると、現在価値(図の青文字の部分)が算定されます。

      これを見ると、現在価値は未来になればなるほど小さくなることがわかります。
      例えば、1年後の100万円の現在価値は995,025円ですが、20年後の100万円の現在価値は905,063円になっていますね。

      同様に100年後から10000年後まで計算すると、以下のようになります。

      このように、永遠に足し合わせても、ある程度になると100万円の現在価値は限りなくゼロに近づき、ある一定の数字に収束します。

      ある一定の数字については、以下のスライドの結論にもあるように「キャッシュ・フロー÷割引率」で求めることが可能です。

      金の卵を産むニワトリの現在価値の合計額は「2億円」と計算できることが分かりました。

      実際のスタートアップで使われる「割引率」

      ニワトリの例えでは割引率0.5%で計算しましたが、実際のスタートアップではどのように算出されるのでしょうか。

      ニワトリが100万円の卵を産むという仮定や、例で案内した国債と比べても、スタートアップの場は確実にキャッシュフローが出るとは限りません。こうしたリスクは「割引率」の算出に大きな影響を与えます。

      具体的に、スタートアップに対しては、投資家が期待する投資収益率が深く関係します。

      例えばシード期のスタートアップに期待される投資収益率は一般的に50〜100%と言われており、株主の期待する収益率が80%であれば、割引率も80%となります。

      また、金融機関から借入している場合、金融機関の期待する投資収益率=利息なので、利息の割合が割引率になります。

      ただし、企業が資金調達をする際、株主からだけとか、金融機関からだけとか、どちらか一方だけから資金調達をすることは稀で、1億円は株主から、2億円は金融機関からというように、ミックスしていると思います。

      その際には、それぞれを加重平均して、企業全体の割引率を算定します(WACC)。

      いずれにせよ、ニワトリと同じように、事業価値も「キャッシュ・フロー÷割引率」で計算されるということをわかっていればOKです。

      なお、毎年100万円ではなく、1年後は100万円、2年後は101万円、3年後は102万1千円というように、毎年1%ずつ成長していく場合には、

      卵の現在価値の合計額=ニワトリの価値現在価値=キャッシュ・フロー÷(割引率-成長率)

      という式で、現在価値を求めることができます。
      (式の導出の仕方は上記と同じです。気になる方はぜひチャレンジしてみてください。)

      株価算定ー企業価値評価の手法ー

      企業価値を評価するには、以下3つのアプローチがあります。

      ①マーケット・アプローチ
      株式市場などにおける株価や取引価額を基準に事業価値を算定する

      ②インカム・アプローチ
      将来または過去のキャッシュフローや損益を基準に事業価値を算定する

      ③コスト・アプローチ
      企業の純資産の時価評価額等を基準に株主資本価値を算定する

      3つのアプローチのなかで、代表的な評価手法は以下の通りです。

      特に、上記の中でも主に用いられることの多い方法を2つ、ご紹介します。

      DCF法

      毎年100万円の金の卵を産むニワトリの例えで説明した方法です。

      将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を評価する方法のことを「DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)」といいます。

      ここではニワトリを毎年100万円のキャッシュフローを生む事業と置き換えることができましたが、企業はニワトリや国債のように、確実に100万円のキャッシュフローを生み出すとは限らずリスクを含むため、そのリスクは割引率に織り込まれます。

      株価倍率(マルチプル・アプローチ)法

      「株価倍率法」とは、上場する類似企業の利益などの財務数値と株価の関係を使って倍率を算定し、これを評価対象企業の財務数値に当てはめて算出する方法です。

      DCF法と同様に、金の卵を産むニワトリの例を用いて説明します。

      ここに、毎年、1,000万円の金の卵を産むニワトリがいます。

      このニワトリは、市場で20億円と評価されていたとします。さて、株価倍率法で評価する場合、毎年100万円の金の卵を産むニワトリはいくらでしょうか。

      今回の例では、既に毎年1,000万円の金の卵を産むニワトリが、市場で20億円と評価されています。その場合、1,000万円=企業の財務数値、20億円=時価総額(株価×株式数)と置き換えられるので、倍率は200倍ということになります。

      この倍率を当てはめると、毎年100万円の金の卵を産むニワトリの値段は、200倍の2億円であると評価できます。

      また、実際の評価時には類似企業のEBITDA倍率(EV/EBITDA)やEBIT倍率(EV/EBIT)を用いることが一般的です(※)。

      ※EBITDA倍率:事業価値をその企業の営業利益+減価償却費+(のれんなどの)償却費で除した指標、EBIT倍率:事業価値をその企業の営業利益で除した指標

      DCF法と株価倍率法の比較

      DCF法と株価倍率法では、主に以下のようなメリット・デメリットがあります。

      実務では、双方のメリット・デメリットを補完し合うためどちらの方法でも評価を実施し、算定された価値の範囲が重なる部分を採用することが一般的です。

      まとめ

      前半では、ストックオプションの種類や、税制適格・非適格の違い、セーフハーバールールや株価算定の必要性などについてお話ししました。

      繰り返しになりますが、セーフハーバーを適用した税制SOの発行においても株価算定が必要です
      セーフハーバールールが適用される税制適格SOにおいても、株価算定が不要になるのはあくまで税制上の話に限られ、会計上の観点からは株価算定が求められるためです。

      また、後半では、株価算定のポイントにフォーカスしてお伝えしてまいりました。

      評価方法について、金の卵を産むニワトリの例で、以下2つの主な手法をご説明してまいりました。

      ①企業の成長可能性やリスクを考慮し、将来のキャッシュ・フローを現在の価値に割引いて事業価値を算定する「DCF法
      ②類似企業の事業価値と財務数値の倍率を用いて算出する「株価倍率法

      適切な株価算定を行い、正しく株式報酬費用を算定することで投資家からの信頼も得られやすくなるという効果も見込めます。

      イグジットを見据えるスタートアップにとって非常に重要なものとなりますので、ぜひ専門家の知見も活用しつつ、適切な株価算定を行なっていただければと思います。

      ありがとうございました。


      大野先生、ありがとうございました!

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      株価算定をお考えの方はぜひ活用をご検討ください!

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