
2024-05-13
インタビュー
マネタイズが得意なエンジェルとして、スタートアップとPMFの谷を超える
エンジェル投資家 川崎裕一さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はエンジェル投資家の川崎裕一さんにお話を聞きました。
川崎裕一
1976年12月20日生まれ。1999年、慶応義塾大学経済学部卒業、日本シスコシステムズ株式会社入社(現シスコシステムズ合同会社)、ネットイヤーグループ株式会社を経て、2004年8月、株式会社はてな入社。同年12月同社取締役副社長に就任。2010年2月、株式会社kamadoを設立し、代表取締役に就任。2012年12月、株式会社ミクシィが株式会社kamadoを買収。これに伴い2013年1月より株式会社ミクシィに入社。2013年1月24日同社執行役員クロスファンクション室室長。2013年6月25日同社取締役。2014年8月11日スマートニュース株式会社執行役員広告事業責任者、投資事業担当。2024年4月よりエンジェル投資家。 投資条件や投資実績がわかる!川崎裕一さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)
まずは、川崎さんについて教えてください!
マネタイズが得意なエンジェル投資家の川崎です。2024年3月末をもって10年勤めたスマートニュースを離れ、4月からフリーターをしています。「インターネットとスタートアップ」という世界でしか生きられない人間だと自負しています。
思えばこれまで、本当に運とタイミングと人に恵まれていました。
学生時代、慶應の経済学部にいたのですが、優秀な同期たちは皆「銀行や商社に就職する」と言い、僕も受けはしましたが「なんだか違うなぁ」と感じていました。そんな中、ネットエイジでのアルバイトを通して「自分はインターネットでいくんだろうな」と思ったのを覚えています。在学中からエディタを使ってHTMLを書いて、サイトを作っていました。
シスコに入社したのは、インターネットというものの全容が知りたかったからです。当時、マイクロソフトやインテルはすでに有名でしたが、シスコはまだ発展中で、そこも魅力的でした。従業員数は100人に満たなかったと思います。鶏口牛後を地でいってましたね(笑)
入社して1年後の2000年にネットバブルが崩壊しましたが、その頃にはもうインターネットの全容は大体理解できていたので、ネットイヤーに転職しました。投資事業部に配属になり、VCのアソシエイトのような業務を5年ほど担当していました。僕にもちゃんとサラリーマンしていた時期があるんですよ。
ネットイヤーを辞め、MBAを取ろうと英語を勉強し、TOEFLの点数が足りたタイミングで、以前から使っていたはてなが京都から東京に移転することを知りました。当時の代表である近藤さんがいらっしゃる集まりに参加し、マネタイズをどうしているのか伺ったところ「受託です」と。思わず「受託じゃダメでしょ」と言ってしまい、このまま放っておくのは無責任なのでは?と思ったので、1週間後にマネタイズの提案を持って行ったところ、「うちでやりなよ」と言っていただけて入社に至ります。
当時からマネタイズが強みだったのですね!
いえ、当時の自分は「頭でっかちなコンサルタントが絵に描いた餅を持ってきた状態」だったと思います。実際にやってみると、本当に大変でした…。自分の頭と手足を使ってマネタイズの実体験ができ、はてなには感謝してもしれません。
その後、前回と同じように先を決めないまま辞めました。どうしても0→1が好きなので、自分で起業してみたいという気持ちがあったんだと思います。
立ち上げたkamadoをミクシィに買収されてミクシィの社員になった時も、ミクシィの業績が大変厳しいタイミングでしたが、むしろ「絶対に立て直す」と燃えました。良いものをより良くすることよりも、ゼロやマイナスからのスタートが性に合ってるんだと思います。医者のような感覚ですね。
当然周りには本当に心配されたり止められたりしましたが、当時のミクシィの経営陣や社員と話して「いけるんじゃないか?」と思ったんですよね。会社の価値は人で決まるので。結果を出せば心配もされなくなると思い、黙々と結果を出すべく日々奮闘するのみでした。
ミクシィでは事業や人の取捨選択をしなければいけない立場だったので、本当にしんどかったです。今でも申し訳なかったと思っています。「それでも会社が死んでしまうよりは良い」と自分に言い聞かせていましたし、より一層マネタイズに執着するようになりました。
スマートニュースに出向に近い形で転籍し、10年という節目のタイミングでまた0→1が恋しくなってきたこともあり、退職して今に至ります。
川崎さんがエンジェル投資を始めたきっかけは何ですか?
30代後半あたりから、いつかエンジェル投資をしようと考えていました。
僕自身が起業する際に川田尚吾さんや小澤隆生さん、中嶋淳さん、清水亮さん、松山太河という5人のエンジェルにご出資いただき、金銭面以外も本当に本当にお世話になったんです。
エンジェル投資家の方は事業経験があるので、学びがものすごく多い。「いつか自分がそうなった時には、それ以上のことができないとだめだ」と思っていました。
なので、リターンは二の次ですね。それよりも、自分が諸先輩方にしてもらったことを返していきたい。また、世の中にたくさんいる面白い人たちに関わっていきたいですし、面白い人と関わるためにはタダって訳にいかないでしょう、と思うので。
ちなみに先日、Boost capitalのオザーンさん(小澤隆生さん)から ”Booster” に任命いただきました。オザーンさんにとって僕は「年下の友達」感覚なのかなと思います。Boosterって何をやるのか僕もよくわかっていないですが、プロジェクトベースで関わっていけたら楽しそうなのでワクワクしています(笑)
現在はどのような企業に投資していますか?
今年4月からエンジェル投資家として本格的に活動し始め、60以上のアポイントを経て、5月初旬時点で3件出資しました。エンジェル投資家と名乗るからには最低月1件以上の投資をしよう、と決めているんです。ただ実はその前にもちょろちょろ出資しているので、全体の投資件数はもう少し多いです。
特に領域は決めておらず、フェーズとしてはエンジェルなのでシード・アーリーですね。判断できるモノがあると嬉しいですが、なくても構いません。チケットサイズは100〜150万、フォローは500万が上限です。
どのような基準で出資しているかですが、まず私はVCではないのであまり事業計画書は見ないですね。長年の経験から、プロダクトもまだなく売り上げも立っていない初期であれば、事業計画は意味がないと思っています。意味がないというか、元々の計画から絶対変わります。
では何を見て決めているかと言えば、「人」です。事業は変わるけど人は変わらないので、人に投資するスタイルだと話すことが多いです。具体的にどのような人かは後述しますね。また、「起業家の強みが生かされたプロダクトかどうか」もよく見ている気がします。
投資先とはどのような関わり方をしていますか?
原則「コーチ」のスタンスです。出資先からの要望が来たら適宜答え、こちらから何か求めることはしません。ちなみに、出資先から連絡が来るパターンって「うまくいっていて褒められたい」か「本当にやばい」のどちらかだなという気がしています(笑)
ただ、関わり方として一つ決めていることがあって、失敗したやつには絶対「もう1回やろうぜ」と言います。これは別にエモーショナルな話ではなく、単純に失敗したやつは次の成功確率が上がるんです。同じ失敗をしないから。「もう1回やれ、もう1回(資金を)出す」と伝えます。
連続起業家に出資するのと同じ話です。連続起業家は投資家に人気ですが、失敗と成功はベクトルが同じなので、1回目に成功した人の2回目に出資するのと、1回目で失敗した人の2回目に出資するのは、私の中では同じなんです。
なので「本当にやばい」と連絡が来た場合は、追加投資をするか、もうこれはダメそうだなと判断したら「この事業は諦めて、もう1回やろう」と伝えています。
魅力を感じる起業家はどのような人ですか?
圧倒的な強みがあり、弱みがはっきりしている人ですね。凸凹が激しい人。
ものを作るっていうのは、何かしら狂気じみたところがないとできないと思ってるんです。発明家なので。ずば抜けた要素があるといいですね。一方で、他のことが全くできないほうが、むしろ経営陣が作りやすいので、結果として良いチームになります。
例えば、「プロダクトはめちゃくちゃ上手に作れる。でもお金儲けも知らないしマーケもファイナンスも人の気持ちもわからない」という人がいたら、メンバーは「あ、じゃあ自分はお金儲けを手伝えるな。本人はお金儲けには興味がないだろうから、のびのびやれるな」と上手く分担してチームとして機能していくんです。
良いところがあるなら悪いところはたくさんあった方がいいと思っています。創業者がそういう人間かどうかはよく見てますね。
逆に、なんでもよくできる人に出すつもりはないです。よくできる人が作るよくできてるものはVCにもウケがいいだろうし、そのままやっていけば大丈夫そうだから、僕が投資しなくてもいいなと思うんですよね。お話しした起業家の中でよくできてる方には、出資しないので「なんでですか!?」と言われるのですが、事業の可能性とは関係なく、僕が出資しなくても大丈夫だと判断しただけの話です。
圧倒的な強みとあからさまな弱みがある人は、ユニークですごく面白いです。ものを作り始めたらずっとそれしかやらない人や、「100年後の未来から考えたらこの事業は〜」などと永遠に一人でずっと語ってる人なんかは最高です。
本や漫画を「面白いな」と思って買いますよね。エンジェル投資もそれと同じ感覚です。さらには、エンジェル投資を通じてその過程に入っていけるので、「介入できる面白い本」みたいな感覚でしょうか。
今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
エンジェル投資も引き続きやっていきますし、スタートアップ関連のイベントに登壇してはてな・ミクシィ・スマートニュースでの経験をどんどん話していきたいです。また、「スタートアップ人材を組織でどう育み、M&A先の組織でどう活躍してもらうか」という観点に関心があるので、そこに本腰を入れる企業にはアドバイザーや社外取締役などで関わりたいとも思っています。
スタートアップはPMFまで当たり前に色々実験するんだから、個人でも何でもやってみるのが必要だと思っているので、50歳手前にして個人でPMFしようとしています(笑)
エンジェル投資家としてで言うと、「圧倒的楽観性をもってPMFの谷を一緒に飛ぶこと」が使命だと考えています。
落とし穴を想像して欲しいのですが、穴の幅と脚力が分かれば飛べそうかがわかりますよね。あとは「飛ぶ」という意思があれば飛べます。でも実際は、例えば幅30センチなら余裕で飛べるだろうに「深さが1キロありそうだから」と怖くなって飛べない。
今、本当に多いのは、永遠に穴の体積の調査をしているパターンだと感じます。穴の幅と深さを調査して、深そう…飛べなさそう…怖い…と思い、飛ばない。でも、穴の体積がわかることと、穴を超えられるかは別の話なんですよ。
ただ、その恐怖もとてもよくわかります。だからこそ、恐怖やその先を経験してきたエンジェルとして、「いやいけるよ!絶対飛べるよ!」と強引にでも飛ばせるのが役割だと思います。エンジェルの仕事は、PMFの谷の体積を計算することじゃない。「飛べそうな気がする」「飛んでみよう」と意思を熱して勇気づけることだと、僕は思います。
合理的じゃないと思いますよね。でも、そもそもスタートアップって合理的じゃないんですよ。
スタートアップ起業家へのメッセージですが、「起業家として挑戦している時点でイケてるので、そのまま頑張ってください」と伝えたいです。起業していることに対して、もっと自信を持って欲しい。
価格って、需要と供給で決まるじゃないですか。今、国をあげて「起業家を増やすぞー!起業家になってくれー!」と叫ばれているのに、起業家は少ない。つまり、起業している時点で需要がめちゃくちゃあるんです。仮に失敗したとしても市場価値が下がるどころか、むしろ引く手数多でしょう。
ハードシングスは数えきれないほどあると思いますが、失敗も成功です。迷わず、そのまま頑張ってください。
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