2026-04-21

      【セミナーレポート】ストックオプションの設計&発行実務のリアルを解説 〜よくある「後悔パターン」のポイントと対策〜

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      本記事では、株式会社スマートラウンドとBAMBOO INCUBATORが共催したウェビナー「ストックオプションの設計&発行実務のリアルを解説」の模様をレポートします。

      ストックオプション(以下、SO)の設計、発行、運用において発生しがちな失敗事例(後悔パターン)とその対策について、実際に多くのスタートアップを支援している公認会計士の原 大介先生を講師にお招きし、解説いただきました。

      登壇者紹介

      講師:原 大介 氏(公認会計士 / BAMBOO INCUBATOR)
      慶應義塾大学経済学部卒。新日本有限責任監査法人にて金融機関・製造業監査を担当し、米国San Jose出向でIPO監査も経験。2016年にJEPLANのCFOとして参画し、エクイティ・デット・補助金など累計80億円の資金調達と2件のM&Aを実行。2019年よりデジタルガレージで50社超のスタートアップにファイナンス支援を提供。テンポラリーCFOとして複数社(計8社)の成長を支援し、資金調達・ガバナンス体制の構築に携わる。
      現在はステラ・システムズを率いるとともに、札幌イノベーションファンドを運営し20社以上へ投資、うち5社がEXITを実現。
      執筆者として参加している「税制適格SOの教科書」を2026年初夏に発売予定。

      BAMBOO INCUBATORとは
      BAMBOO INCUBATORは、「専門知識は力なり Expertise is Power.」を合言葉に集結した、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士などで構成されるプロフェッショナル集団です。

      SOの基礎知識

      そもそもSOとは

      株式報酬の一種であり、「将来において一定の価格で株式を取得できる権利」を指します。一般的には普通株式を取得する権利を指すのが通例です。

      主な種類

      税制適格SO:
      一定の要件を満たすことで、権利行使時の課税が繰り延べられ、株式売却時に譲渡所得(約20%)として課税される税制優遇措置です。まずはこの検討から始めるのが定石です。

      税制非適格SO:
      税制優遇の要件を満たさないもの。無償で発行されるケースなどが含まれます。

      有償SO:
      発行時に受領者が金銭を払い込んで取得するタイプ。

      その他:
      信託型SO(現在は実務上ほぼ見られない)、RSU(事後交付型)、ファントムストック(株式連動型現金報酬)など。

      SOプールとは

      将来の役職員や外部協力者に付与するために、あらかじめ株主と合意しておく「発行枠」のことです。一般的には発行済株式総数の10〜15%、最大でも20%程度に設定されます。

      注意点として、契約書の文言を精査する必要があります。「税制適格SOのみプールに含む」といった限定的な条件や、「社外への発行は含まない」といった制約が潜んでいることがあるため、慎重な確認が求められます。

      SOの種類やそれぞれの仕組みに関しては、スマートラウンドの記事「【知っておきたいストックオプションの基礎】スタートアップ経営者のための株価算定ガイド(https://jp.smartround.com/column/Basic_of_Stock_Valuation)」もあわせてご覧ください。

      なぜスタートアップのSOは難しいのか?

      SOの設計・運用が困難を極める背景には、専門家(士業)側とスタートアップ側の双方に要因があります。

      専門家側のハードル:求められる横断的な知識

      SOの実務には、極めて多岐にわたる専門知識が要求されます。

      計算・株価算定:会計士・税理士
      契約実務:弁護士
      登記:司法書士
      法定調書:税理士

      このように複数の領域が重なるため、全体を俯瞰してコントロールできる専門家が非常に少ないのが現状です。結果として、担当できる専門家がなかなか見つからなかったり、専門家間の連携調整に時間がかかりスケジュールが遅延したりするケースが生じます。年間で相談を受ける件数も限られており、経験値の偏りが激しい分野といえます。

      スタートアップ側のハードル:「重要だが緊急ではない」領域

      SOは、いわゆる「重要だが緊急ではない」業務(「7つの習慣」の「第2領域」にあたる部分)に分類されます。日々の支払い、契約締結、資金調達といった緊急性の高い業務に優先順位を奪われがちです。

      発行しなくとも直ちに会社が倒産することはありませんが、放置すれば採用やリテンションに確実に悪影響を及ぼします。経営者が「簡単だろう」と過小評価し、実務に必要な多大なエネルギーを見誤る点も、着手を遅らせる要因となっています。

      SOで「よくある後悔パターン」の具体例

      SOには多様な論点がありますが、まずは典型的な失敗事例から見ていきましょう。実のところ、後悔パターンの多くは「最初の一歩」で躓いているケースがほとんどです。

      ① 「SOを出す」と宣言したまま、着手できない

      従業員に付与を公約したものの、スタートアップの現場で「業務が落ち着く時」は永遠に訪れません。結局、手付かずのまま時間だけが過ぎてしまうパターンです。

      ② 入社前の条件提示によるトラブル

      特に深刻なのが、採用時の最終面接などで「〇〇株(あるいは〇〇%)付与する」と口頭で約束してしまうケースです。これを信じて給与を下げて入社したにもかかわらず、実際の発行が遅延・中止された場合、従業員の離職や、最悪の場合は訴訟へと発展しかねません。

      ③ 安易な「1円SO」の約束と株主の反発

      近年注目される「1円SO(税制非適格)」について、株主との関係性を過信し、事前に独断で約束してしまうケースです。いざ相談した際に株主に猛反対され、発行を断念せざるを得なくなることがあります。本来ポジティブな施策であるはずのSOが、期待値調整の失敗により「約束と違う」というネガティブな反応を招いてしまいます。

      ④ 発行直前に「減資手続」の必要性が判明

      発行準備の最終段階で、直近の資金調達スキームの関係などから、先に減資(資本準備金の取り崩し等)が必要だと判明するケースです。この手続きには一定の期間を要するため、SO発行のスケジュールが大幅に遅れる要因となります。

      ⑤ 他の資本取引(J-KISS等)との同時並行による混乱

      リソース不足から、J-KISSなどによる資金調達とSO発行を同時に進めようとし、実務手続きが煩雑化した結果、プロセスが滞ってしまうパターンです。

      ⑥ 登記漏れによる次回調達時の致命的な欠陥

      SOは資本取引であるため、発行後の登記が不可欠です。しかし、発行そのものに満足して登記を失念してしまうケースがあります。これは「重要な事項はすべて登記されている」という表明保証に違反することになり、次回以降の資金調達において投資家から厳しく指摘される致命的な欠陥となります。

      設計・発行・運用におけるミスと対策

      実務プロセスは「設計」「発行・割当」「運用(管理)」の3段階に分かれます。それぞれのフェーズにおけるよくあるミスと対策を見ていきましょう。

      「設計段階」の失敗と対策:ここが最大の急所

      ① 種類が多すぎて選べない
      「有償、税制適格...」と選択肢が多すぎて、自社のフェーズや状況に最適なスキームがどれなのか判断がつかなくなってしまうケースです。

      【対策】
      まずは「税制適格SO」が可能かどうかを最優先で検討してください。これが大原則です。適格要件を満たさない場合に初めて、有償SOなどの代替案を検討するといった順序で考えましょう。

      ② 意思決定すべきポイントが不明確
      制度の全体像が掴みづらく、法律上変えられないポイントと、経営判断として自社でこだわって決めるべきポイントの区別がつかないという悩みです。

      【対策】
      税制適格SOを選択する場合、法的に定められた「適格要件」を自社の都合で変更することはできません。経営者がこだわるべきポイントは、主に以下の4点に集約されます。

      在籍要件:退職後も権利行使を認めるか。
      IPO要件:IPO未達成でも行使できるか。
      M&A時の取り扱い:M&A発生時にどう扱うか。
      相続:相続人による行使を認めるか。

      ③ 他社事例の安易な模倣
      「シリコンバレーのスタンダードだから」「有名企業が導入しているから」という理由で、自社のカルチャーに合わない制度を導入し、失敗するケースです。

      【対策】
      会社独自のカラー(協調性重視か、完全成果主義か等)に合わせて設計すべきです。他社の模倣が自社にとっての正解とは限りません。

      ④ 相談先のミスマッチ
      顧問税理士や弁護士であっても、SO実務の経験が浅い場合は的確な回答が得られないことがあります。

      【対策】
      必ず「発行経験が豊富な専門家」に相談しましょう。単発の発行実務だけでなく、IPOまでの資本政策全体のストーリーを議論できるパートナーが理想的です。

      ⑤ 特定個人への大量発行
      特定の人物に過大なSO(例:全体の20%など)を付与してしまい、後のプールが枯渇するケースです。

      【対策】
      「小さく始める」のが鉄則です。初回は控えめな比率から開始し、貢献度を見ながら追加発行する運用をお勧めします。SOは何度も発行することで、中長期的なモチベーション維持に寄与します。

      ⑥ 過度な複雑化と停滞
      完璧を求めすぎて進まなかったり、従業員ごとにベスティング期間を変えるなど、個別条件を複雑化しすぎて管理不能になるケースです。

      【対策】
      管理コストの最小化を意識しましょう。評価の差は、条件の変更ではなく「付与数」で調整するのが現実的な最適解です。

      「発行・割当段階」の失敗と対策

      ① 前提となる手続き(減資等)の見落とし
      いざ発行しようとした段階で、資本準備金の取り崩し(減資)といった法務的な前提手続きが必要だと判明し、スケジュールを大幅に変更せざるを得ないケースです。

      【対策】
      設計が固まった段階で、司法書士等の専門家に「最短でいつ発行可能か」を確認し、逆算したスケジュールを引きましょう。

      ② 他の資本取引(資金調達等)との重複
      J-KISS等の資金調達とSOの発行を並行して進めた結果、実務リソースが枯渇し、契約書の不備や手続きの混乱を招くケースです。

      【対策】
      資金調達とSOなど、資本政策に関わるアクションは可能な限り時期をずらすか、専門家にプロジェクト管理を一任して整合性を担保しましょう。

      ③ 登記手続きの失念
      発行・割当の完了に安堵し、法務局への登記申請を忘れてしまうケースです。いわゆる表明保証違反になるため、後々の資金調達の度に投資家から厳しく指摘される要因となり、IPOやM&Aといったアクションにも悪影響を及ぼします。

      【対策】
      SOの発行は「登記」まで完了して初めて有効な資本取引となります。次回の資金調達時に表明保証違反を指摘されないよう、司法書士と連携して確実に完了させましょう。

      「運用段階」の失敗と対策

      ① 失効手続きの放置
      従業員の退職に伴うSOの消却や権利放棄の手続きを忘れてしまうミスです。

      【対策】
      契約書のひな形にあらかじめ、退職時に会社が無償取得できる条項を組み込んでおきましょう。

      ② 表計算ソフトによる管理の限界
      発行回数が増え、条件が多様化すると、Excel管理のままではミスを誘発しがちです。

      【対策】
      smartround等の管理ツールを早期に導入し、システム化を図りましょう。


      ▼smartroundではSOの契約締結から発行後の管理まで可能です。
      SO管理機能の詳細はこちら


      まとめ

      基本は税制適格SO:
      まずはこの検討からスタートしましょう。

      こだわりポイントの峻別:
      法的要件と、自社で決めるべき要件(在籍・M&A等)を分ける。

      小さく始める:
      大量発行を避け、追加発行を前提とした運用を。

      コミュニケーションの重視:
      制度そのものより、発行の「意図」を伝える説明に力を入れる。

      管理コストは最小限に:
      複雑な条件設定は避け、シンプルかつツールを活用した管理を目指す。

      【スマートラウンドのコーポレート代行サービスならSO発行時の社内実務を代行可能!】
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