
2024-02-13
インタビュー
それでも日は昇る。僕がエンジェル投資を続ける理由。
エンジェル投資家 島田大介さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回はエンジェル投資家の島田大介さんにお話を聞きました。
島田大介
1998年に慶應義塾大学法学部卒業。大学卒業後に日商岩井(現双日)に入社。2000年に同社情報産業本部がSpinOffしたベンチャー投資会社に転籍。2000年にBitValleyの中心的な存在であったインキュベーターのネットエイジに出資して出向。その後、米国Promotions.com社の日本法人を100%買収して出向し、営業担当取締役に就任。2003年に店舗企業のDX支援をするエンターモーション(現インサイトコア)を創業。2004年にはマッチングアプリOmiaiや広告代理店事業を展開するネットマーケティングの創業に携わり、2018年に社外取締役就任。その後、東証一部上場。2022年、同社特別委員会委員としてベインキャピタルへのTOB交渉を担当。2023年、創業後20年代表を務めたインサイトコアをデジタルシフト(東証プライム上場デジタルホールディングスの中核事業会社)にM&Aでバイアウト。現在はスタートアップの支援やエンジェル投資活動を実施している。投資条件や投資実績がわかる!島田大介さんの投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)
まずは、島田さんについて教えてください。
エンジェル投資やスタートアップの共同創業をしております、島田と申します。
98年に大学を卒業したのですが、実は当時ベンチャーには全く興味がなく「できるだけ大きな会社に」と日商岩井(現双日)に入社しました。ところが入社して間もなく、日商岩井が大きな特損を出し経営危機となり、僕がいた情報産業本部がスピンオフ。日商岩井はその会社の株式を売却しサバイブしたのですが、僕はスピンオフしたベンチャー投資会社のITXに転籍することになります。
大きな会社でずっとやっていくつもりだったのに、2年目で退職届にハンコを押すことになり、社会人早々で人生の挫折を味わうことになります。「人生なかなか思うようにいかないな〜」と思いましたね(笑)
転籍後、2000年にBitValleyの中心的な存在だったインキュベーターのネットエイジに出資し、出向することになりました。当時のネットエイジのメンバーは、その後も各業界で活躍されている方が多いので「ネットエイジマフィア」と呼ばれたりもしています。
ネットエイジは当時、社員50人くらいの会社でしたが、本当に「世界を変えてやる!」みたいな熱気が渦巻いていて、直感的に「ベンチャー、やばい!!」と身体中を激震が走り、人生観が180度変わったのを今でも鮮明に覚えています。
その後、Promotions.comというアメリカで懸賞サイトを運営していた企業の日本法人を100%買収し、これまた出向することになり、営業担当取締役に就任しました。ただ、PromotionsではPCでのマーケティング事業が中心だったのですが、当時ガラケーが伸びてまして、24時間30cm以内にあるデバイスであるモバイルを活用した方が絶対効果的なマーケティングができると思ってたんです。
そこで、モバイルのマーケティング事業の会社をやってみようと、日商岩井の同期と2003年に文字通り4畳半のマンションの一室からエンターモーション(現インサイトコア)を創業しました。
ところが、これが本当になかなかうまく行かなくて、10回以上ピボットしたんです。いろんなビジネスを試して、ようやく軌道に乗ったのが店舗企業向けのDX支援事業です。20年代表を務めたのちに2023年にバイアウトしました。
並行して、2004年にネットマーケティングの創業にも携わっています。社長の宮本さんが日商岩井の同期ですね。経営基盤を強化したいと依頼を受け、創業からずっと一緒にやってきたこともあり、2018年に社外取締役に就任しました。ネットマーケティングは、その後に東証一部に上場を果たします。
2022年には、特別委員会委員としてベインキャピタルへのTOB交渉(上場企業のM&A)を担当しました。なので2022〜2023年は、ネットマーケティングのTOBを進めながら、自分の会社であるインサイトコアのM&Aも進めるというなかなかタフではありますが得難い経験をしまして、かなり自分の血や肉になったと感じています。
長くなりましたが、ビジネス人生の一つの区切りを迎え、今は、スタートアップの支援やエンジェル投資をしています。

(写真:インサイトコアのメンバーと昨年5月にM&Aの買い手となったデジタルシフトのWelcomeイベントにて写真に収まる島田さん)
島田さんがエンジェル投資を始めたきっかけは何ですか?
2003年に初めて出資したのは友達の会社でした。その後も友達や元同僚の会社に出資することが多かったのですが、当時出資した会社はエンジェル投資というより共同創業に近い形でしたね。自分で創業した会社もプライベートカンパニーでしたので、自分の気持ちの向くままに自由に動いていました。
僕は昔からいわゆる「多動症」なので、たくさんの事業をやりたい!立ち上げたい!という欲求が常にあります。「最高の仲間で突き抜けた会社をいっぱい作ろうぜ〜!」みたいな(笑)
ですので、キャピタルゲインを目指していくというよりは「純粋にとにかく色々なビジネス・経営をやりたいから出資しよう」というモチベーションです。友達や元同僚と「こんな会社あったら面白くない!?一緒に立ち上げようぜ」といった話から共同で創業したり、「創業するので相談に乗って欲しい」と言われ「おー!全然手を貸すよ!」と始まり、出資しつつ経営の相談に乗ったり、僕も一営業マンとして一緒に営業したりしていました。僕の青春です!(笑)
2023年にご自身の会社をM&Aしてからわずか5ヶ月で11社にエンジェル投資されていますが、モチベーションは変わらずですか?
そうですね。おもしろくて熱い情熱がたっぷりの人と一緒にいろんなビジネスを創りたい!という気持ちは変わらずです。
ただ1つ変わったのは、初めて出資した20年前は単純に「おもしろそうだな!ワクワクするな!」だけでしたが、最近は「Pay it forward」のような恩返しの意味合いも乗っかるようになりました。
僕自身、心が折れそうになることなんて何回もありましたし、ハードシングスもめちゃくちゃたくさん経験しました。そして、そんな時にかなり周りの皆さんに助けられました。だから、情熱や覚悟を持った起業家が何か困っていて、少しでも僕自身が力になれて課題解決し、成功確度が上がるんだったら前のめりにやっていきたいなと思っています。
特にファイナンスに苦労してるスタートアップが多いですよね。僕は、周りの皆さんに支えられながら自分で創業した会社で増資を4回、事業売却やM&A、上場会社のTOBも経験することができ、ファイナンスで会社や事業やメンバーが大きく成長するのを数多く見てきました。また、昔からファイナンスという手法、学問が好きなので、これまでの投資家の皆さんとの繋がりや知見を活かして、微力ながらご支援できることもあるのではと思っています。

(写真:国内最大級のスタートアップイベントでMCとして会場を盛り上げる島田さん)
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
本当にオールジャンルです。強いて言えば、手触り感がある方が好きなのでDtoCが多いです。とはいえ、AIもBtoB SaaSもエンタメもメディアも人材領域もセキュリティも…とかなり幅広く出資してますね。投資先の領域としては、非ITもあります。昨年の9月に池尻大橋に仲間と居酒屋を立ち上げました。これも趣味の延長線上ではなく、店舗数含め伸ばしていきたいと思っています。ずっと店舗企業のDX支援を事業としてやってきたので、その答え合わせの意味でも、純粋に興味があります。
逆に、バイオベンチャーなど僕の事業に対する解像度が低い領域は、お話は勿論聞かせていただく様にしているのですが、出資の確度は低いかもしれません。自分が力になれるかというイメージがどうしても沸きづらく、他の方の方が良いのではという考えです。
投資先との関わり方ですが、バラバラです!ただ、起業家の時間ってめちゃくちゃ大事ですので、ハンズオンでガシガシやっていくというよりは、困ったことがあったらいつでも言ってね、というハンズイフのスタンスです。その中で、やはりファイナンス周りの相談が多いですね。
単に、一緒に飲みに行きましょうと言われることも多いです。起業家って孤独になりがちじゃないですか。そんな時に息抜きに付き合ったり、「ちょっと話聞いて欲しいです」「元気玉、注入してください!」ってな感じですね(笑)
経営やプロダクトの壁打ちも勿論やっていますし、資本政策を一緒に作ったり、どういった投資家を回るのが良いのかをアドバイスしたりもします。ファンドの設立時期、規模、償還期限、チケットサイズ、投資領域、exit事例などをVCごとに纒めたりもしているので、それを基に適切なファイナンス戦略を一緒に考えたりしてますね。
魅力を感じる事業や起業家はどのような人ですか?
情熱と覚悟を持って取り組んでいる人はやっぱり素敵ですよね。僕がそうだった様に一発目のビジネスでうまくいかないことも全然あると思うので、何度ピボットしたとしても最後まで諦めない覚悟を持った人に惹かれます。有限なリソースの中でサポートするので、熱過ぎるぐらいの情熱と覚悟のある起業家のお手伝いが出来ればと思っています。
スキルに近いところでいうと、採用力とファイナンス力は大事だと思っています。「ヒトモノカネ」と言われますが、結局、最高の仲間である「ヒト」と軍資金である「カネ」がプロダクトである「モノ」を作りますので、それを惹きつける力ですよね。そこってスタートアップが成功するポイントとしてかなり重要な気がしています。
ファイナンス力や採用力って何かというと、要は起業家や経営メンバーの人間的な魅力かなって思ってます。その人間力を要素分解すると、誠実さ、周りの人たちへの感謝、謙虚さ、強烈な原体験から滲み出る情熱とその情熱の炎を周りに延撚させられるかといったところでしょうか。そういう人は投資家にも魅力が伝わりますし、採用も強いなぁと感じます。
今後の展望とスタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
エンジェル投資はリソースがある限り続けていきます!時間が許す限りですが、僕は基本的に連絡が来たら全部対応するようにしていて、1回は会うと決めています。結果として、出資しなくても継続的に相談に乗ることもあります。声をかけるハードルを低くしていきたいです。
誰かの一言で奮起するとかあるじゃないですか。それが僕からの言葉かどうかは分かりませんが、出資の如何に関わらず、少しでも背中を押す機会になる可能性があるのであれば、意義はあるかなと。勿論、まだ起業準備中であってもウェルカムです。

起業家の皆さんへのメッセージですが、まずは「辛いことや苦しいことも多いと思いますが楽しんでください!」と伝えたいです。ハードシングスはめちゃめちゃあるけど、それを共に乗り越えたメンバーは一生ものですし、諦めない限り、失敗はあっても負けはないですからね。何より、自分の創った価値が世の中に滲み出し、それによって喜んでくれる人がいるのって楽しいですよ。
とはいえ、ピンと来ないかもしれないので、最後に、僕が一番しんどかった事の話をしますね。
15年前、モバイルサイト構築システムとして管理していた顧客の個人情報18万件が不正アクセスによって漏洩し、出会い系サイトに売り渡された事件についてです。
当時、個人情報の取り扱いが厳しくなっていたタイミングだったこともあり、メディアの注目度やユーザーの意識もかなり高くなっている状況でした。ある日、お客さんと会食をしていたら突然電話が鳴り「めちゃくちゃクレームが来ています。どうやら個人情報が漏れてるみたいで」という連絡が入ったんです。調査の結果、18万件のデータが抜かれていることがわかりました。すぐに取引先に1社1社謝罪し、並行して警察に届け出まして、社内で調査委員会を立ち上げました。警察の調査が進み、とある漫画喫茶チェーンの店舗から不正アクセスがあり漏れたという所までは突き止められたんですが、当時、その店舗では会員カードや監視カメラがなかったので、「社長、残念ながら、これ以上の捜査は無理です」と担当の警察官に言われました。
それで終われるはずもなく、今度は、あらゆる手段を使って個人情報を買った出会い系サイトの社長に辿り着き、「こちらは徹底的にやるつもりだから、今すぐ迷惑メールを止めて、個人情報を売った人を明らかにして欲しい」と話しました。そうして、一週間経った時「本人が自首すると言ってます」と連絡があり、僕のもとに来たのがなんと元社員でした。
その後、取引先からの民事訴訟もあり、何度も東京地方裁判所に出廷しました。今でも本当にお詫びしかありません。また、漏洩した当人にも刑事訴訟、民事訴訟をしましたが、半年以上かかりました。
また、事件発生直後に「もうこれは誠心誠意、直接お詫びをお伝えし続けるしかない」と、外注するお金もなかったので社内でコールセンターを立ち上げたのですが、社員にやらせるわけにはいかないと、役員だけで朝から晩まで電話に張り付いていました。
朝の8時から夜中の2時まで毎日、土日も含め怒鳴られ続ける日々でした。プライベートなんて皆無ですし、夜中にご迷惑をおかけしてしまった会社さんで緊急開催された役員会に行ってご説明をしたことも度々ありました。この時期が一番しんどかったですね。
これが現実だと思うと心が折れそうになったので、「これはゲームで本当の自分はどこかでリモコン握ってるんだ」と現実逃避したり、先を考えると気が遠くなるので、朝起きて「今日1日だけは全力でやり切るぞ」と思って1日1日を過ごしたり、「死ななければいつかは乗り越えられる」「これを乗り越えたら必ずデカくなれるぞ!」と自分を鼓舞していました。
唯一の救いは、僕がファイティングポーズをとり続けていたのを見て、社員たちが「自分達も頑張りますので、島田さんも負けないでくださいね」と言ってくれたことです。みんな、本当によく頑張ってくれました。頑張ってる社員を見て僕も頑張れましたしね。当然、事件を受けて取引先からの解約はたくさんありましたが、翌期は売上が昨対比でプラスで着地しました。
諦めなければ、負けはありません。
こんなことがあっても折れずに元気にやってますし、今を思う存分生きています。なんならこの事件レベルのハードシングスがあと2つほどあります。それでも僕は相変わらず事業が大好きです。
起業家の皆さん、起業をそして人生を、是非「楽しんで」ください!諦めなければ負けません!
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