2024-12-23

      スタートアップの支援に興味のある税理士必見!中小企業とスタートアップの違いについて解説

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      近年、今まで中小企業を支援してきた税理士がスタートアップの支援も手掛けるケースが増えています。

      オーナー企業である中小企業と、急成長を志向し、そのための資金調達を繰り返すスタートアップではビジネスモデルや株主構成が大きく異なるため、税理士にとっても今まで中小企業にしていた支援とは異なるやり方が求められます。

      そこで先日、多くのスタートアップを支援している税理士・公認会計士の大野先生をお招きし、中小企業支援との違いや、税理士に求められる役割などについて解説するセミナーを開催しました(詳細はこちら)。

      この記事では、セミナーの内容を再構成してお送りします。スタートアップの支援をしている士業の方や、支援を検討している士業のみなさまにとって、参考になれば幸いです。

      講師紹介

      大野 修平

      公認会計士・税理士/セブンセンス税理士法人(https://seventh-sense.co.jp/ ) ディレクター

      大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。

      トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援経験を持つ。

      また、スタートアップ企業の育成・支援にも力をいれており、各種アクセラレーションプログラムでのメンタリングや講義、ピッチイベントでの審査員および協賛などにも精力的に関わっている。

      さらに、セブンセンス税理士法人が運営する『セブンセンスビズマガジン(https://consulting.seventh-sense.co.jp )』では、ビジネスに関する様々な情報を発信し、中小企業やスタートアップのお悩み解決にも力を入れている。

      スタートアップ支援の基本的な考え方と実務

      スタートアップの魅力

      私がスタートアップ(当時はベンチャー企業と呼ばれていました)に関わり始めたのは、2008年に監査法人トーマツで働きはじめてからでした。当時のトーマツはスタートアップフレンドリーな監査法人で、先輩会計士がスタートアップを支援する姿を日常的に目にしていました。

      その後、創業間もないfreeeさんのパーティーに参加する機会があり、その後、オフィスにお邪魔したときに、その場で小さな金融機関と次々契約をしていく様子を目の当たりにしました。その熱気に触れ、「スタートアップはこうして成長して、世界を変えていくんだな」と感じた体験が非常に印象的で、現在の私のスタートアップ支援の原点となっています。

      スタートアップとは

      かつては「ベンチャー企業」という言葉が一般的でしたが、この定義が広がりすぎたため、現在では「スタートアップ」という表現が主流となっているようです。

      シリコンバレーの著名なアクセラレーターY Combinatorは、スタートアップを「小規模で、アーリーステージの企業で、1年で50〜100倍の急成長を志向する企業」と定義しています。

      また、経済産業省は「新しい企業であって、新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、急成長を目指す企業」としています。

      どちらの定義にも共通するキーワードは「急成長」です。

      「Jカーブ」で成長

      スタートアップの成長は「Jカーブ」と呼ばれる特徴的な曲線を描くと言われています。アルファベットのJのように、一旦は赤字を掘るものの、最後に急成長するパターンを示します。これが安定成長を目指す一般的な中小企業との大きな違いとなります。

      スタートアップは潜在的な大きな課題(ペイン)を見つけ出し、それを解決します。一度発見された課題は誰でも解決できるため、誰が解決するかはスピード勝負で決まります。
      シェアを獲得するために多額の資金を調達してマーケティングや人材確保、システム開発を行って急成長を目指します。

      スタートアップがこのような課題(ペイン)を発見できる理由は主に2つあります。

      ①社会や価値観の変化により、従来の商品・サービスでは対応できない部分が出てきている
      ②技術の発達で、今まで解決できなかったペインが解決できるようになっている

      スタートアップは、この変化にいち早く対応できる機動力と、既存の枠組みに囚われない柔軟性を持っているため、既存の大企業に比べて優位性があるとされています。

      資金調達の重要性

      スタートアップのビジネスモデルは、前例がなくハイリスク・ハイリターンな性質を持つことが多いため、ローリスク・ローリターンを志向する銀行融資ではなく、リスク許容度の高いベンチャーキャピタル(VC)などからの出資を中心とした資金調達を行います。

      ただし、理論的にはそうであっても、現実はそのようにきれいに区分けができるわけではありません。例えば、日本政策金融公庫は政府系の金融機関として、国の政策を反映してミドルリスクまでは許容し、スタートアップへの積極的な融資を行っています。

      VCの仕組みーLPとGPー

      VCは機関投資家や企業などの出資者(LP:Limited Partner)から資金を集め、運用責任者(GP:General Partner)が投資先を決定する仕組みになっています。

      収益は①管理報酬と②成果報酬の2本立てで、一般的に「Two-Twenty」と呼ばれる方式を採用。つまり、GPは運用金額の2%を管理報酬として受け取り、LPへの元本返却後の利益の20%を成果報酬として受け取る形が一般的です。

      VCの運用期間

      VCファンドの運用期間は通常10年と定められており、最初の5年で投資を終え、残りの5年は運用に専念するパターンが一般的です。しかし、近年スタートアップのエグジットまでの期間が長期化しており、10年では不十分なケースも増えています。そのため、12年への期間延長や、後続ファンドへの引き継ぎなども行われるようになってきています。

      また、VCは決して無計画に投資を行うわけではありません。各VCは得意な領域やステージを持っており、出資者(LP)への説明責任を果たすため、どんなに魅力的な案件でも、投資対象としてマッチしていないスタートアップには投資できないという現実もあります。

      税理士に期待される役割と活躍の場

      スタートアップの成長段階

      スタートアップの成長過程は、通常いくつかのステージに分けられます。

      一般的に、創業初期から順にシード、アーリー、ミドル、レイターとなり、最近はプレシードというステージも加わることが増えています。

      プレシード期、シード期は、創業直後のアイデアや初期のプロトタイプ段階を開発している段階です。この時期は主にエンジェル投資家から資金調達を行うため、エンジェルラウンドとも呼ばれます。

      アーリー期は製品やサービスの開発がある程度進んだ段階で、市場展開に向けて著名なエンジェル投資家やVCからの資金調達が行われます。

      シリーズAラウンドと呼ばれることも多く、以降は発行する株式の違いによってB、C、D…と続いていきます。

      ミドル期になると、企業としての認知度が上がり、単体での黒字化を達成することも多くなります。シリーズBラウンドがこれにあたり、VCに加え、事業会社が運用するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)で資金調達をすることも増えます。

      上場直前に当たるレイター期は、安定成長期に入るなかで海外進出や上場準備のための資金調達を行います。近年、IPOまでの期間が長期化していることから、シリーズC、Dで終わらず、シリーズEまで進むスタートアップも増えています。

      法人設立前後における税理士の役割

      初期の段階で税理士が活躍できる場面は主に①資本政策の策定支援と②定款の作成です。

      資本政策とは、簡単に言ってしまえば、どのタイミングで、誰からいくら調達して株式をどれくらい放出するかという計画です。事業計画から必要な資金を算出し、資金調達の時期を計算していきます。

      以前はExcelでの作成が主流で、関数の設定などによるミスも多発していましたが、最近はsmartroundという無料のツール(https://jp.smartround.com/startup/capital-event )が計算のサポートもしてくれるので、活用をお勧めします。

      デッドロック・創業者間株主契約について

      特に多い相談事項はデッドロックに関するものです。共同創業の場合、創業者同士で50:50という持ち株比率にすることが多いですが、この比率では過半数の株式を保持する株主がいないため、株主総会での意思決定が行き詰まる(=デッドロック)リスクが生じます。

      特にスタートアップは状況が目まぐるしく変化するため、普通の会社以上に共同創業者間に意見の相違が生じやすいですし、そうした事例も数多く存在します。

      だから、現在の関係性が良好でも、意思決定権は一人に集約させるべきです。メインとなる創業者には可能であれば90%以上、最低でも特別決議が可能な3分の2以上(67%)の持分を確保することを推奨します。

      同じ理由で、創業者間株主契約においても、株式買取条項などを含む適切な契約を結んでおくことが重要です。共同創業者が取締役を退任した際、株式を保持したまま連絡が取れなくなる事例も多く、会社の経営にも影響が出かねません。こうしたリスクを回避するためにも、持ち株比率や株主契約での対策が重要となります。

      発行可能株式総数の設定

      発行可能株式総数の設定も慎重に行う必要があります。公証人役場が公開している雛形はスタートアップに特化したものではないため、かなり少ない数字が記載されています。

      スタートアップの場合、将来的に多くの株式を放出して資金調達を行うため、設立時の発行株式数は規定の100倍から1000倍程度、より多い株式数で設定することをお勧めします。

      また、1株あたりの金額設定も重要です。
      一般的な雛形では1株100万円などの高額な設定になっていることが多いですが、スタートアップの場合、高額で株式が動かしにくくなるのはデメリットでしかありません。一方で、1株0.1円などとしてしまうと小数点の計算が生じて煩雑になるため、1株1円に設定することをお勧めします。

      エクイティファイナンスにおける実務

      企業価値の決まり方

      企業価値の決定方法は上場前後で大きく異なります。特にスタートアップのような未上場の会社では、資金調達や新株予約権発行などの特定のイベントが発生した時にのみ株価が決定され、階段状に変化していきます。これに対し、上場後は市場での取引を通じて日々株価が変動します。

      株価と持ち株数において意識すべきポイント

      資金調達の際に企業価値を低く見積もると、資金を提供する外部投資家側の持ち株比率が高まり、経営のコントロールが難しくなるため、創業者の持分が適正な値になるように企業価値を設定する必要があります。

      例えば、創業者が500万円で創業し、5万株を持分とするスタートアップが初めて資金調達を行うケースで考えてみましょう。

      VCから2,000万円の投資を受ける際、創業者とVCが協議し、VCの持分を20%と設定すると仮定します。2,000万円で20%の持分ということは、企業価値は1億円と設定されたことになります。

      この場合、投資前(プレ)の企業価値は8,000万円となり、投資後(ポスト)の企業価値が1億円という計算になります。

      元の5万株が80%分に当たるので、ということはVCの持分は12,500株になります。つまり、2,000万円が12,500株相当の価格に当たるため、株価は1,600円と計算できます。

      スタートアップのエグジット戦略

      スタートアップのエグジットには、主にIPO(株式上場)とM&A(企業売却)の2つの選択肢があります。M&Aの場合はDD(デューデリジェンス)と企業価値算定が主要な論点となります。上場を目指す場合は論点も多く、より複雑で長期的なプロセスが必要となります。

      市場区分について

      2022年の市場改革により、従来の東証一部、二部、マザーズという区分から、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場という3つの区分に再編されました。
      以前、ほとんどのスタートアップが目指していたマザーズでの上場は、現在では、グロース市場となりました。

      流通総額などの形式的な上場基準は比較的緩やかに設定されていますが、実質的な要件は非常に厳格で、外部の監査を受けて要件を満たすよう整えていく必要があります。

      上場準備の実務

      上場準備で重要なのが監査対応です。上場のためには2期分の監査証明が求められるため、上場申請期(N期と呼ばれます)の2期前(N-2期)から監査が必要となります。

      ただし、N-2期の期首残高を確認し、問題ない前提で監査を行う必要があるため、実質的にはN-3期の期末残高の段階に間に合うように監査法人に監査を依頼し、期末残高の監査を行なってもらわなければいけません。そのため、監査法人にはN-3期の早いタイミングでコンタクトを取り、監査に入ってもらう必要があります。

      通常、いきなり本格的な監査を受けると修正点が非常に多くなってしまうため、監査に先立ってショートレビューを受け、30から50項目ほどの指摘事項への対応が求められます。この指摘事項に適切に対応した上で、本格的な監査が開始されます。

      ショートレビューで指摘された不備項目は、整備するだけではなく、最低でも1年程度、その通りに運用する必要があります。

      ただ、監査法人の要求レベルは非常に高いため、指摘事項にどのタイミングで対応するかについてはよく考える必要があります。指摘事項への対応によって、スタートアップの強みであるスピード感が失われてしまっては本末転倒です。より適切な落とし所を提案するのが専門家の役割であり、求められる立ち回りです。

      決算月の変更における注意点

      実務上よく問題となるのが、決算月の変更です。監査法人へのコンタクトが遅れてしまったというような理由で、決算月を変更したいという話が出てくることも多いです。

      監査上の都合による安易な決算期変更は避けるべきで、変更する場合は合理的な理由が必要です。投資家は2期比較をして会社を評価しますが、決算月変更はそれを阻害する可能性もあります。

      細かい注意点などは東証が毎年出している「新規上場ガイドブック」が参考になるので、ぜひご覧になってみてください。

      よくある指摘事項

      ショートレビューの段階で特に指摘が多い項目として、未払残業代と業務委託の源泉徴収の問題があります。

      スタートアップ特有の問題として、モチベーション高く業務に向き合う人が多いため、勤怠をつけずに長時間労働していたり、休日出勤の割増賃金管理が適切になされていなかったりというケースが多く見られます。

      監査で初めて明らかになるとリカバリーも大変なので、早期の段階から適切な労務管理を行うことが重要です。

      対策として、関連する助成金を活用する方法もあります。例えばキャリアアップに関する助成金を得るために就業規則を整えていけば、金銭的な助成を受けながら、より早い段階で適切な体制を整えていくことが可能です。

      また、業務委託で関わる人が多いのもスタートアップの特徴の一つですが、源泉徴収義務を知らずに、徴収を行っていないケースがよく見られます。

      過去の徴収漏れが発覚した場合、業務委託の方に「報酬分から源泉徴収税額を返納してほしい」と依頼すると反感も買いますし、煩雑な手続きが必要になります。
      そのため、実務的な対応としては、支払金額を源泉徴収後の金額として再計算し、会社側で源泉税相当額を負担するという方法を取ることが多いです。長期間に渡ると、納税する額面も膨大になるので、こちらも早めに対応しておく必要があります。

      このあたりも税理士の支援が必要となる場面かと思います。

      上場審査時に意識しておくべき登場人物

      IPOにあたっては、証券取引所や監査法人以外にも様々な関係各所と連携し、上場までのToDoをこなしていく必要があります。

      ・証券会社

      IPOを行うにあたり、一般投資家向けの営業を行う証券会社を幹事証券会社といい、特に審査などの中心的な役割を担い、証券取引所に推薦書を提出するのが主幹事証券会社となります。

      ・印刷会社

      上場時の申請書類や上場後の有価証券報告書などの開示書類、株主総会関連書類などの膨大な書類は、印刷のノウハウがある印刷会社に依頼する必要があります。
      現時点で国内で対応しているのは、実質的には株式会社プロネクサスと宝印刷株式会社の2社のみです。

      ・株式事務代行機関

      上場にあたっては、株式事務代行機関を選定して株式事務を委託していることが審査要件として義務付けられています。

      アウトソーシング

      比較的小規模な会社でIPOを目指す場合は、IPOの専門家に管理部門の機能をアウトソースするケースもあります。
      その場合は「上場後もその機能をアウトソーシングに頼り続けて問題ないか」という観点で体制を整える必要があります。

      アウトソースは上場審査や監査の場面でも問題視されやすいため、主幹事証券会社や監査法人とも協議しつつ、アウトソースできなくなった場合の対応なども含めて検討しておく必要があります。また、委託先の社員がインサイダー取引を行うリスクなど、想定外のリスクにも契約などでポイントを押さえて対応すべきです。

      smartroundの活用

      スタートアップ支援においては、効率的なツールの活用が非常に重要です。そこで、スタートアップにも士業にも活用できるツールとしてsmartroundを紹介します。

      smartroundは株主総会、資本政策、投資家・士業とのデータ共有が可能なSaaSです。スタートアップは株式事務の効率化ツールとして、士業はスタートアップが入力したデータを確認・修正するツールとして、活用できます。特に資本政策はJ-KISSにも対応しており、Excelで計算するより確実に算出できます。

      また、士業の方はスマートラウンドのパートナーになると、smartround上でつながった全スタートアップのスタンダートプランが無料でご利用いただけます。アカウント登録に限らず、パートナープログラムを申し込んで、顧問先・支援先のスタートアップに是非勧めてください。

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      smartroundは価格設定が非常に安く、スタートアップが初期段階から導入しやすい点が特徴です。税理士としては、smartroundの活用を積極的に推奨し、クライアントの業務効率化を支援していくことも重要だと考えています。

      終わりに

      以上が、スタートアップ支援に関する基本的な知識と実務のポイントとなります。この内容が、みなさまのスタートアップ支援の一助となれば幸いです。

      スタートアップ支援は従来の中小企業支援とは異なる知識や対応が必要となりますが、その分やりがいも大きく、税理士として成長できる機会も多いと言えます。ぜひ、この機会にスタートアップ支援への第一歩を踏み出していただければ幸いです。


      大野先生、ありがとうございました!

      今後もこのような勉強会をはじめ、スタートアップ支援に関する知見を共有し、お互いに理解を深められるような場を提供していければと思っております。ご興味をお持ちの方はぜひこちらからご連絡ください!

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