2025-07-07

      【スタートアップ経営者向け】J-KISSの発行から転換まで実務の要点まとめ

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      こんにちは、スマートラウンドです。

      弊社では2025年3月に、コーポレート代行サービス(BPaaS)をリリースいたしました。

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      おかげさまで多くの引き合いをいただいているのですが、中でも相談が多いのが「J-KISS」に関する事務手続きについてです。

      スタートアップの資金調達において、そのスピードと柔軟性から注目を集めるJ-KISSですが、その利用はテンプレートのダウンロードだけで完結するものではありません。

      発行から適格資金調達による株式への転換に至るまで、多岐にわたる実務と法的な手続きが求められます。

      そのため、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めるケースが多いのですが、スタートアップ自身も最低限の概要や活用メリット、実務の流れを知っておくことで、よりスムーズに手続きを進めることができます。

      そこで本記事では、J-KISSの利用を検討するスタートアップの皆様が、これらのプロセスを円滑に進めるための具体的なTODOをフェーズごとに解説します。

      こんな人に特におすすめの記事です▼
      ・J-KISSの概要やメリットをざっくり知りたい方
      ・J-KISSでの資金調達をお考えの方
      ・J-KISSの発行時と転換時の実務イメージが知りたい方

      注意事項

      本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約条件や最新の法改正等により適用できない場合があります。具体的な判断や手続きについては、必ず弁護士・公認会計士・司法書士などの専門家へご相談ください。

      はじめに——J-KISS が選ばれる理由

      J-KISSは、Coral Capitalがオープンソースとして無償公開する、コンバーティブル・エクイティを用いたシード投資のための投資契約書です。

      シリコンバレーの500 Startupsが公開したKISS(Keep It Simple Security)を専門家が設計・メンテナンスして日本向けに調整されています。

      J-KISSがスタートアップや投資家から選ばれる主なメリットは以下の通りです。

      投資実行の迅速性

      株式による資金調達と比較して、交渉から着金までのプロセスが圧倒的に速く完了するため、事業の成長に注力したいスタートアップにとって大きなメリットになります。

      詳細条件を繰り延べることができる

      J-KISSを用いた資金調達では、バリュエーション(企業価値評価)の決定を、次の大規模な資金調達まで繰り延べることができます。これにより、事業進捗に応じた適切な条件設定が可能になります。

      契約書作成コストがなく、透明性が高い

      シード期の資金調達においては、多くの場合、J-KISSのひな形条項を修正せずに利用できます。修正の有無が契約書冒頭に明記されるため、業界標準として透明性が高く、起業家と投資家双方の交渉コストを削減できます。

      エンジェル税制への対応

      令和6年度の税制改正により、2024年4月1日以降に取得したJ-KISSがエンジェル税制の対象となりました。ただし、控除の基準日が投資時ではなく行使時である点に注意が必要です。

      J-KISSは、事業会社やエンジェル投資家による投資にも利用できます。特に、シードステージ特有のバリュエーション説明の難しさを解消し、投資経験の浅いエンジェル投資家にとっても分かりやすい、標準化されたテンプレートである点が大きなメリットとなります。

      J-KISS発行時の実務

      J-KISS型新株予約権の発行手続きは、発行会社が取締役会設置会社か否かによって、手順が一部異なります。ここでは、一般的な募集新株予約権の発行手続きに沿って解説します。

      取締役会非設置会社の場合

      1.取締役の決定

      募集新株予約権(J-KISS)発行を決議する株主総会の招集日時・場所や目的事項などを決定します(会社法298条1項)。株主総会のみなし決議(会社法319条1項)を行う場合でも、同様に取締役の決定を行います。

      2.株主総会を開催し、既存株主の承認を得る

      1.の取締役決定を経て、株主総会を行います。

      決議事項は、募集新株予約権の募集事項の決定(会社法238条1項)と、割当てに関する事項(会社法243条1項)です。 

       J-KISSは将来的に種類株式に転換される可能性があるため、定款で定めている発行可能株式総数の変更も併せて決議することがあります。 

      総数引受契約方式を採用する場合は、割当てに関する決議の代わりに総数引受契約締結の承認決議(会社法244条)を行います。

      また、株主総会を開催する代わりに、株主全員の同意を得て「みなし決議」を行うケースも多く見られます。株主が少数でコミュニケーションがスムーズな場合に有効です。

      3.投資契約の締結

      株主総会決議後、割当日の前日までに投資契約を締結します。
      この投資契約書は、登記手続における新株予約権の引受けを証する書面として利用できます。

      4.引受人が払込期日までに払込みを完了する

      引受人は、払込期日までに募集新株予約権の払込金額全額を、発行会社の指定口座に払い込む必要があります(会社法246条1項)。

      払込が完了すると、定められた割当日に新株予約権者となります(会社法245条)。

      5.登記申請

      割当日から2週間以内に、新株予約権の発行に係る登記申請を行う必要があります(会社法915条1項)。

      必要書類の例(※場合によって異なるため一例を記載) 

      1.募集新株予約権の発行を決議した株主総会議事録
      2.株主リスト
      3.新株予約権の申込証(または投資契約書)など

      取締役会設置会社の場合

      上記の手続きのうち、次の点が異なります。

      1.取締役の決定が取締役会の決議に変わる

      株主総会の招集決定や株主への提案事項の決定は、取締役会の決議で行われます。

      取締役会のみなし決議(会社法370条)も利用されますが、定款にその旨の定めが必要です。

      2.割当ての決定が取締役会の決議事項となる

      募集新株予約権の割当て決定(会社法243条3項)または総数引受契約締結の承認(会社法244条2項)は、株主総会の決議事項ではなく、取締役会の決議事項となります。

      3.登記申請の添付書類

      上記の書類に加え、取締役会議事録が必要になります。

      転換条件の整理——バリュエーション/ディスカウントの確認ポイント

      J-KISSは、次の大きな資金調達(「適格資金調達」と呼ばれる、Coral Capitalの投資契約書では1億円以上の株式での資金調達)が行われることが決定した場合に、その条件に基づいて、主にA種優先株式などの種類株式に転換される仕組みです。

      この際、J-KISS投資契約書と資本政策を元に、転換価額が算出され、割当てる株式数を確認します。

      J-KISSの条件として、バリュエーションキャップ(Valuation Cap)とディスカウント(Discount)が設定されています。これらは転換時の株価を決定する重要な要素となりますが、J-KISS自体が「投資の詳細条件を繰り延べできる」という特徴を持つため、転換条件の具体的な算出は、適格資金調達時に改めて行うことになります。

      J-KISSは、1.0と2.0の2つのバージョンがあり、J-KISS2.0では、バリュエーションキャップがプレマネーからポストマネーに変更されています。

      なお、バリュエーションキャップやディスカウントによる希薄化率の違いは、smartroundの資本政策機能を使うことでシミュレーションが可能です。無料でご利用いただけますので、よろしければ登録の上ご活用ください。

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      J-KISS転換時の実務

      J-KISSの転換は、適格資金調達の決定によって引き起こされる重要なイベントです。

      転換には、①会社が新株予約権を取得して株式を交付する方式(取得条項型) と ②新株予約権者が自ら権利を行使して株式を受け取る方式(行使通知型)の2通りがあります。

      今回は、②行使通知型の主な実務と必要書類を時系列で解説します。

      1.投資者に割当てる株式数の確認 

      J-KISS投資契約書と資本政策に基づき、転換価額を算出し、割当てる株式数を確認します。

      2.取締役会の招集・開催

      募集株式発行(適格資金調達)や、定款一部変更を決議する、株主総会招集の決定を行います。

      3.株主総会の開催

      決議事項は、適格資金調達による募集株式の発行と定款の一部変更です。 

      行使通知型の場合、J-KISS転換による新株発行自体は決議不要ですが、適格資金調達としての新株発行は決議が必要です。 

      (取得条項型の場合は、取得に係る決議が必要です。)

      4.転換請求(行使通知書)の受領

      投資者から行使通知書が提出され、発行会社がこれを受け取ります。 

      行使通知書は、Coral Capitalの投資契約書に付属しています。

      5.行使価額の払込 

      投資契約書で定められた行使価額(1新株予約権あたり1円)の払込が行われます。

      6.払込証明書の作成 

      登記の際に必要な払込証明書を作成します。

      7.株主名簿の更新・株主名簿記載事項証明書 

      転換後の保有株式数を反映した株主名簿を作成し、株主名簿記載事項証明書を全投資者に送付します。

      8.株主間契約書もしくは財産分配契約書、参加同意書への署名

      J-KISS投資者が転換後に優先株式を取得する場合、株主間契約または財産分配契約書などへの署名が必要となる場合があります。

      9.登記手続き

      適格資金調達によって発行した新株の割当日(払込取扱機関が払い込みを受けた日)から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。 

      必要書類の例(※場合によって異なるため一例を記載)

      1.株主総会議事録払込証明書
      2.資本金計上に関する証明書
      3.株主リスト
      4.最新の定款の写し など

      これらの手続きは多岐にわたり、専門知識と緻密なスケジュール管理が求められます。

      よくある落とし穴と対策

      J-KISSの発行から転換のプロセスでは、いくつかの「落とし穴」が存在します。
      契約内容などの確認を徹底し、不備のないように進めることが重要です。

      払込期日と入金ズレ・名義違いの振込

      払込期日までに払込金額の全額が発行会社の口座に着金している必要があります。

      振込手数料が差し引かれたり、名義が異なる振込が行われたりすると、払込が完了していないと見なされ、新株予約権を行使できなくなる可能性があります。

      払込の案内を正確に行い、入金状況をこまめに確認することが重要です。

      登記期間の遵守及び投資家への登記簿謄本の期限内提出の難しさ

      割当日から2週間以内に登記申請を行う必要があります。

      また、投資契約で登記後の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の提出を30日以内に求められることがありますが、法務局の審査期間が約1ヶ月程度かかる場合があり、対応が難しいケースがあります。余裕を持ったスケジュール設定と、司法書士など専門家への早期相談が不可欠です。

      取締役会設置会社の複雑性

      Coral CapitalのJ-KISS投資契約書は、取締役会非設置会社向けパッケージが提供されているため、取締役会設置会社では手続きが異なりますので、自社の機関設計を確認し、適切な手続きと専門家のサポートを得ることが必要です。

      J-KISS型新株予約権者の「拒否権」に近い権限

      J-KISSが特定の優先株式(A1種、A2種など)に転換された場合、会社法第322条1項の規定により、該当株主が該当の種類株式を保有する唯一の株主となった場合、種類株主総会において拒否権に近い権限(例えば、シリーズB以降の種類株式の追加に係る定款変更への承認)を有することがあります。

      投資額が小さくても、唯一の優先株主となることで、将来の資金調達に影響を及ぼす可能性があります。J-KISS転換後の株主構成と、それに伴う権限構造を事前に理解し、必要に応じて弁護士などの専門家と相談することが必要です。

      J-KISS転換前のM&A

      J-KISSが転換される前に会社が買収された場合、投資額の2倍で金銭償還されるか、バリュエーションキャップで普通株に転換された後に買収されることになります。

      これは、プロダクトマーケットフィット前にM&Aされるケースを想定しており、起業家のモラルハザードを防ぐ意味合いが大きいです。

      契約内容を十分に理解し、M&Aが行われる場合のシナリオも想定しておくことが必要です。

      税務上の取り扱い

      令和6年度の税制改正により、J-KISSはエンジェル税制の対象となりましたが、控除の基準日は投資時ではなく行使時となる点に注意が必要です。

      投資家から質問がある場合に備え、顧問税理士に相談し、具体的な税務上の取り扱いを確認することをおすすめします。

      スマートラウンド「コーポレート代行サービス」ができること

      J-KISSの円滑な発行と転換プロセスは、多岐にわたる専門知識と厳密なスケジュール管理を要します。書類作成から投資家、士業との調整、さらには法務局への登記に至るまで、その実務負担は決して小さくありません。

      スマートラウンドで提供しているBPaaSは、これらの複雑な手続きを一貫してサポートすることで、起業家の皆様が本業である事業成長に集中できる環境を提供します。

      具体的なサービス範囲としては、J-KISS発行・転換の実務サポートはもちろん、資金調達イベントと密接に関連するsmartroundを使った株主総会・取締役会などの機関決議の代行や、標準的な契約書テンプレートの紹介、株主への通知支援、登記情報整理と司法書士への連携、士業とのやり取りのサポートなど、バックオフィスの中でも専門性を要する「コーポレートセクレタリー業務」を支援します。

      資金調達などのイベントに係る複雑な手続きのすべてをスタートアップが担うことは大きな負担となり、時には事業の成長機会を逸するリスクにも繋がりかねません。

      これらのプロセスに伴走し、スタートアップの皆様が安心して事業に邁進できる環境を提供します。

      サービスの詳細が気になる方は、以下から資料のダウンロードができますので、合わせてご参照ください。

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      ここまでお読みくださりありがとうございました。

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